イギリスの新聞各紙の特徴に関するイギリス版ハフィントンポストの記事を訳してみた。
◯イギリスの新聞各紙の特徴に関するイギリス版ハフィントンポストの記事を訳してみた。
イギリスの新聞各紙の特徴に関するイギリス版ハフィントンポストの記事を訳してみた。
元記事:Ben Mirza, "Who Reads The Papers?", huffingtonpost.co.uk, 30/12/2013 21:12 GMT
イギリスの新聞各紙が、どのような読者に読まれ、どのような傾向の内容なのか解るかもしれません。と言いつつ、かなりジョークが入っている記事ですが。
誤訳がありましたら、忌憚なくご教示下さい。
註はすべて訳註です。
誰が新聞を読むのか?
アントニー・ジェイとジョナサン・リン作の面白すぎるシチュエイション・コメディー Yes, Prime Minister で、首相役のジム・ハッカー、横柄な秘書官のハンフリー・アップルビー卿、おっちょこちょいの補佐官バーナード・ウーリーが、誰が新聞を読むのかについて議論するシーンがあった。
※上の動画の後半部分:
Secretary Daily Mirror is read by the people who think they run the country. Guardian is read by the people who think they ought to run the country. Times is read by the people who actually do run the country. Daily Mail is read by the wives of the people who run the country. Financial Times is read by the people who own the country. Morning Star is read by the people who think the country ought to be run by another country. Daily Telegraph is read by the people who think it is.
Assistant Prime Minister, what about the people who read the Sun?
Prime Minister Sun readers don't care who runs the country as long as she's got big tits.
秘書官 デイリー・ミラーを読んでいるのは、自分たちがこの国を動かしていると思っている人たち。ガーディアンを読んでいるのは、自分たちがこの国を動かすべきだと思っている人たち。タイムズを読んでいるのは、実際にこの国を動かしている人たち。デイリー・メールを読んでいるのは、この国を動かしている人たちの奥方たち。フィナンシャル・タイムズを読んでいるのは、この国を所有している人たち。モーニング・スターを読んでいるのは、よその国がこの国を動かすべきだと思っている人たち。デイリー・テレグラフを読んでいるのは、世の中こんなもんだと思っている人たち。
補佐官 総理、サンの読者はいかがでしょう?
首相 サンの読者は誰が国を動かしてるかなんて気にしない。巨乳なら誰でもいい。
この非常に的を射た社会観察から30年近く経ち、世の中は多少変わってしまったかもしれないが、言われていることの多くはいまだに当てはまり、新聞とは常に読者の偏見につけ込むものである。
社会的政治的偏りは、誰が何を読むかを左右する。以下は、どの新聞がどの人びとにアピールするかの概要である。
デイリー・メールおよびデイリー・メール日曜版
デイリー・メールがアピールするのは、かつてはマーガレット・サッチャー※をイエスの再来だと思い、現在はイギリス帝国の喪失を嘆き、子どもたちがゲイになるのはリベラルな教師のせいであると考え、肌の黒い人たちがロンドン近郊の州を植民地化していると思っている下層中流階級と高齢の上層中流階級の人たちである。
※マーガレット・サッチャー(Margaret Thatcher) 第71代イギリス首相。保守党。1979-1990在任。「鉄の女」。
社会階級は異なるが、彼らはみな、悲しいかなEUのアングロ-サクソン衛星国家であるイギリスは20年後には武装したイスラム教徒とスリのブルガリア人※と身の毛もよだつフェミニストに支配されるであろうという共通の恐怖を抱いている。
※スリのブルガリア人 スリではないが、ダニー・ボイル『T2 トレインスポッティング』(2017)参照。
デイリー・エクスプレスおよびサンデー・エクスプレス
上に同じ。ただ、デイリー・エクスプレスの読者は天気に対する奇妙な先入観をもっていて、ブリュッセルのニンニクかじりのフランス人に天気がコントロールされているに違いないと思い込んでいる。
サン
デイリー・メール同様、サンがアピールするのは、デイリー・メールの言うことに何でも同意する小イングランド主義であが、非常に低い収入で暮らしており、教育のレベルも低い。デイリー・メールの読者と異なりフラワー・アレンジメントやジョーン・コリンズ※は彼らにアピールしない。
※ジョーン・コリンズ(Joan Collins) イギリスのベテラン女優。政治的には保守的。サッチャー支持者だった。
サンの読者の傾向として、男性で、建設労働者で、サッカーずきでない男がいれば間違いなくゲイであると考え、巨乳の女の子を視姦するのが好きで、オアシスを史上最高のバンドだと讃える。
デイリー・テレグラフおよびサンデー・テレグラフ
デイリー・テレグラフの読者は、リベラル保守と頑なサッチャー支持者のどちらかで、かたや30代後半の裕福で形だけのクリスチャンであるのに対し、他方は変化が起きると固まってしまう隠居した元法廷弁護士や元公務員である。
デイリー・テレグラフの読者の傾向として、EU(ソ連による成り済まし)、気候変動(左翼のたわごと)、移民(イギリスを吸い尽くす強欲な外人)に懐疑的である。あ、トニー・ブレア※(嘘つきの卑劣な間抜け)を忘れてた。
※トニー・ブレア(Tony Blair) 第73代イギリス首相。労働党。1997-2007在任。「第三の道」。
ガーディアンおよびオブザーバー
ガーディアンの読者層の大多数を構成するのは、白人の中流階級で、いかに奴隷制や植民地主義や家父長制が悪であるかを誰かれ構わず講釈したがる。西洋文化に対して負い目を感じており、パレスチナ風のスカーフを持っていて(パレスチナについて実際には何の知識も持っていない)、大都市の再開発エリアに住み、通常はメディアや法曹界や公務員といった稼ぎの良い仕事をしているにもかかわらず社会主義者を自称している。
ガーディアニスタとして知られる彼らは、平等主義や言論の自由を説くにもかかわらず、彼らに反対すると自動的に民族差別、性差別、同性愛ぎらい、イスラムぎらいのバカ野郎ということになる。
インディペンデントおよびインディペンデント日曜版
上に同じ。ただ、インディペンデントの読者は天気に対する別の奇妙な先入観をもった社会集団で、右翼やBP※に天気がコントロールされているに違いないと思い込んでいる。
※BP イギリスの石油・エネルギー会社。British Petroleum。
デイリー・ミラー
デイリー・メールとサンとの関係同様、デイリー・ミラーがアピールするのは、例えばほぼ社会主義者であったり労働党支持者のようなガーディアンと同じ思考傾向だが、低所得の人たちである。デイリー・ミラーの読者は、ITVの熱心なファンで、日曜日には信心深くサンデー・ロースト※の夕食を取り、マーガレット・サッチャーが未来のすべての世代にとっていかにこの国を台無しにしたかをいつも嘆いている。
※サンデー・ロースト ローストした肉をメインとする、日曜日に食べられるイギリスの伝統料理。
また、気取った話し方の人はみな悪の影であり、労働者階級は地の塩※であると考えている。
※地の塩 マタイによる福音書 5:13
タイムズおよびサンデー・タイムズ
ルパード・マードックがオーナーだからと言って、実際はタイムズはオピニオンにおいてはかなり多様で、「あぁ、ジョージ・ギャロウェイ※みたいなヤツやゲイ叩きも同じ物を読んでるのか」等と考えずに安心して読むことができる。
※ジョージ・ギャロウェイ(George Galloway) 元イギリス庶民院議員。労働党→リスペクト。強硬な左派で労働党を追われた。
タイムズ読者は概ね理性的なリベラルで、泣き言を言うラディカル・フェミストやピーター・ヒッチェンズ※のご同類や政治的に極端に偏った人の意見を読んでもイライラしたりしない。
※ピーター・ヒッチェンズ(Peter Hitchens) イギリスのジャーナリスト。イギリス国教会の信者で、その影響を強く受けている。保守派だが、保守党に対しても批判的。
彼らの傾向としては、充分な富があるので庶民的な問題に煩わされることがなく、様々な資産運用をおこなっており、地中海の港に巨大なヨットをもっている知り合いが少なくともひとりはいて、トスカーナに様ざまな別荘を所収している。
さて、ここまで読んできたからといって、バス停や空港や駅で上の新聞のどれかを読んでる人を見かけても、くれぐれも厳しいジャッジはしないように。
以上。
この記事を翻訳した理由
国際政治学者で東京大学政策ビジョン研究センター講師の三浦瑠麗が、「ワイドナショー」(フジテレビ、2018年2月11日(日)10:00-11:15)で、北朝鮮の「スリーパー・セル」が世界各地に潜んでおり、アメリカからの核攻撃後を受けた場合に活動を開始し、大阪が標的になる可能性と危険性が高いことを強調する発言をおこないました。その発言の根拠や意図などについて物議を醸しています。
同氏は、2月12日(月)付けのブログで、批判に対して自説を擁護する内容の記事を公開し、自説の根拠としてイギリスのタブロイド紙デイリー・メール(The Daily Mail) の記事を挙げ、そのことがさらに物議を醸しています。
◯朝鮮半島をめぐるグレートゲーム - 山猫日記(三浦瑠麗のブログ)
◯North Korea broadcasts 'coded message to sleeper agents' on radio | Daily Mail Online(デイリー・メールの記事、英語)
※当ブログ内の関連エントリー:
| 固定リンク
コメント
突然の申し訳ございません。
折り入ってご相談が御座います。テレビ番組を制作しております橋本と申します。写真使用のご相談になります。
投稿: 橋本 | 2018年2月23日 (金) 18時09分
管理人様
はじめまして
三才ブックスという出版社でラジオライフという月刊雑誌を編集している菅原と申します。
ミニFMについてお詳しい方を探しておりまして、お話をお聞かせ頂けないかと書き込ませて頂きました。
突然で申し訳ありません。
大変お手数ですがご返信頂けましたら幸いです。
何卒よろしくお願い致します。
投稿: 三才ブックス菅原 | 2018年2月27日 (火) 12時45分