「サイボーグ009」第16話 太平洋の亡霊(NET、1968年)
○「サイボーグ009」第16話 太平洋の亡霊(NET、1968年)
荷宮和子『バリバリのハト派——女子供カルチャー反戦論』(晶文社、2004年)という本を書店で見かけた。
タイトルと、帯の背表紙部分に書いてあった「気分はもう改憲?」という言葉に引かれて購入。
なかでも面白かったのは下の2本:
- 「反戦」を主張するアニメ脚本『(旧)サイボーグ009/太平洋の亡霊』を書いた辻真先は今なら「非国民」扱いされるはずである
- 「『ミナミの帝王』よりも『ナニワ金融道』の方が偉い」とされる今の日本の漫画評論にはうんざりである
前者の論考でTVアニメ「サイボーグ009」第16話太平洋の亡霊(NET、1968年)が紹介されていた。
「サイボーグ009」第16話 太平洋の亡霊(NET、1968年)
反戦のメッセージは愚直なほどストレートだが、注意すべきは、作中に登場する平博士は軍国主義者ではないという点だ。それどころか、平和の名の下に進む軍拡に呪詛する反戦論者である。護憲派と言っても良い。
つまり、軍国主義の亡霊が息を吹き返しているわけではなく、戦没者への鎮魂が、平和主義の挫折をきっかけに、アメリカへの復讐戦へと反転しているのだ。
どちらかと言えば、平博士の心情は、「対米追従からの脱却」を謳う反米左翼や、戦争の混乱に乗じた武力革命を通じて帝国主義打倒をめざすマルクス-レーニン主義と地続きとすら言えるかもしれない。
軍国主義は、歴史修正主義の顕在化からだけでなく、平和主義の形骸化から生まれるおそれもある。
ともあれ、軍拡を終らせるための戦争という平博士のロジックは、戦争を終わらせるための原爆投下と同じぐらいねじれている。
特攻隊員として戦死した、平博士の息子・祐太郎の「僕たちの魂をこれ以上いじらないでくれないか」という言葉が印象的だ。
※当ブログ内の関連エントリー:
○5分でわかる!集団的自衛権行使が違憲である理由 by憲法学者・木村草太:「荻上チキ・Session-22」(TBSラジオ、2014年6月16日(月)22:00-24:55)
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