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高田渡「ブラザー軒」(1997年)

○高田渡「ブラザー軒」(1997年)

 

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先の戦争および東日本大震災で亡くなられた方がたの御霊が安らかでありますように。


高田渡「ブラザー軒」(1997年) 

高田渡「ブラザー軒」(1997年)
詩・菅原克己

東一番丁、
ブラザー軒。
硝子簾がキラキラ波うち、
あたりいちめん氷を噛む音。
死んだおやじが入って来る。
死んだ妹をつれて
氷水喰べに、
ぼくのわきへ。
色あせたメリンスの着物。
おできいっぱいつけた妹。
ミルクセーキの音に、
びっくりしながら
細い脛だして
椅子にずり上がる。
外は濃藍色のたなばたの夜。
肥ったおやじは
小さい妹をながめ、
満足気に氷を噛み、
ひげを拭く。
妹は匙ですくう
白い氷のかけら。
ぼくも噛む
白い氷のかけら。
ふたりには声がない。
ふたりにはぼくが見えない。
おやじはひげを拭く。
妹は氷をこぼす。
簾はキラキラ、
風鈴の音、
あたりいちめん氷を噛む音。
死者ふたり、
つれだって帰る、
ぼくの前を。
小さい妹がさきに立ち、
おやじはゆったりと。
東一番丁、
ブラザー軒。
たなばたの夜。
キラキラ波うつ
硝子簾の向うの闇に。

※関連リンク

仙台市 青葉区 ブラザー軒です。心を込めたおもてなしで皆様をお待ちしております。 (ブラザー軒公式サイト)

※当ブログ内の関連エントリー:

今年も東日本大震災発生の瞬間のラジオを改めて聴く

東日本大震災と『惑星ソラリス』 (1972)

いとうせいこう「想像ラジオ」、『文藝』2013年春号(河出書房新社)

高田渡「自衛隊に入ろう」(1969年)


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