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大森一樹監督・斉藤由貴主演・乙羽信子原作・新藤兼人脚本のテレビドラマ『女優時代』(近代映画協会/よみうりテレビ、1988年)をフィルムセンターで観た。

○大森一樹監督・斉藤由貴主演・乙羽信子原作・新藤兼人脚本のテレビドラマ『女優時代』(近代映画協会/よみうりテレビ、1988年)をフィルムセンターで観た。

 

三部作の他にもあった!第4の大森一樹×斉藤由貴作品


 

たまたま知った、東京国立近代美術館フィルムセンターの大森一樹特集『トットチャンネル』(1987年)を観た後、大森一樹×斉藤由貴のトーク・ショーを堪能し、すっかり斉藤由貴にハートを射抜かれた私。

上映会情報自選シリーズ 現代日本の映画監督2 大森一樹 (東京国立美術館フィルムセンター公式サイト)

その次の『女優時代』(1988年)上映について、会場で初めて知った。

大森一樹×斉藤由貴の三部作(『恋する女たち』(1986年)『トットチャンネル』(1987年)『「さよなら」の女たち』(1987年))はよく知られているけれど、同じコンビの作品がもう1本あったのだ。

『女優時代』は、よみうりテレビ開局30年記念番組として「木曜ゴールデンドラマ」枠で1988年10月13日(木)21:03-22:52に放送されたテレビ・ドラマ。公開されたのはテレビ放送のこの1回だけ。横浜の放送ライブラリーにも所蔵されていない。25年半ぶりに日の目を見る。

大森一樹監督、斉藤由貴主演のほか、原作は乙羽信子、脚本は新藤兼人、制作は近代映画協会と言うから驚き。大森監督によると、フィルムの所在を確認したら、現像所に良い状態でそのまま保管されていたそうだ。今回の企画の目玉として、フィルムセンターによるニュー・プリントで上映とのこと。

トーク・ショーで斉藤由貴が、あまり怒らない大森監督から、この作品では「台詞を憶えて来い」と怒られたと言っていた。新藤脚本で気合いが入っていたらしい。

斉藤由貴にまた会いたくて、開場待ちの列に並んだのでありました。

快楽亭ブラック師匠も観に来ていた。

『女優時代』(1988年)

『女優時代』は、乙羽信子/江守陽江『乙羽信子——どろんこ半生記』(朝日新聞社、1981年)が原作のテレビ・ドラマで、乙羽信子の神戸での戦中・戦後体験から新藤兼人監督との結婚直前までを描いた半生記。

女優時代 - ドラマ詳細データ - ◇テレビドラマデータベース

主なキャストは、

  • 乙羽信子:斉藤由貴
  • 近藤吉八(新藤兼人):根津甚八
  • 宇野重吉:森本レオ
  • 乙羽の養父:川谷拓三
  • 乙羽の養母:室井滋
  • 河野美保子(のちの越路吹雪):相楽ハル子
  • 永田雅一:大地康夫
  • その他、峰岸徹、上田耕一、浜田光夫、真実一路、山本陽子、小林桂樹など。

冒頭で、乙羽信子と斉藤由貴が待ち合わせて宝塚を観劇するシーンから始まるのだけれど、一瞬「?」と戸惑った。でもこれは、エンディングの印象的な演出で見事に回収され、「なるほど!」と膝を打った。

また、この仕掛けは、近藤(新藤兼人)が劇中で語る演出法とも共鳴している。劇中で近藤が亡き妻との日々を描いた『愛妻物語』(1951年)について、同作は事実に基づいたつくりごとであると語り、○○は事実、××は事実、△△は事実、でもあとはすべてつくりごとと強調するシーンがある。新藤兼人演出を知る意味でも興味深い作品だった。

この作品では、乙羽信子が、宝塚の娘役トップを経て、「百万弗のエクボ」のキャッチ・フレーズで大映のスター女優として売り出されたのち、新藤兼人監督との出会いを通じて本格女優として開眼して行く様子が、新藤兼人初監督作品『愛妻物語』の撮影過程を中心に描かれる。

でも、これはまさに、第1回東宝「シンデレラ」オーディション準グランプリで芸能界入りし、第3回ミスマガジンでグランプリでトップ・アイドルとなった斉藤由貴が、大森監督との三部作でアイドル女優としての地位を確立したあと、本格女優として開眼して行く過程とシンクロしている。

大森監督によると、宇野重吉役は最初は寺尾聡に依頼したものの、「さすがに、それはちょっと……」と断られてしまったとのこと。でも、劇中劇としてモノクロで再現されている『愛妻物語』で孝子が洗面器に血を吐くシーンで、洗面器越しに下から見上げるカットの森本レオの呆然とした表情は、宇野重吉そのものだった。

また、越路吹雪役の相楽ハル子がとても良かったのだけれど、現在はハワイ在住で女優活動はしていないらしい。もったいない。

さらに、大映社長の永田雅一役の大地康夫もすばらしく、彼のシーンでは、会場から例外なく笑いが起きていた。大森監督曰く、永田社長を直接知る人たちからは、口を揃えて「そっくりだ」と好評だったとのこと。

ひとつ不満があるとすれば、乙羽が近藤に惹かれて行く過程が、『愛妻物語』の脚本との出会い、『原爆の子』(1952年)出演のために大映を退社して近代映画協会の同人となる過程など、専ら監督と女優としての関係として描かれていて、男と女としてのふたりの心の機微の描き込みがやや希薄に思えた。そこがもっと掘り下げてあれば、「今夜は帰らないつもりで来ました」という台詞の重みがもっと増したのではないか。

まぁ、新藤兼人としては、乙羽信子が新藤監督のどこに惚れたかを自分で書くことになるわけだから、難しかったのかなぁ。

214年3月28日(金)15:00からもう一度上映される。観づらい時間ではあるけれど、映画ずきなら絶対愉しめる作品。

※関連リンク:

大森一樹[監督]・斉藤由貴[主演]『トットチャンネル』(1987年)をフィルムセンターで観た。(当ブログ内)

大森一樹監督、斉藤由貴は「幸運を運んでくれた女神様」 | ニコニコニュース

新藤兼人監督に関して、小林信彦のほうが正しいことが判りました:「ニュース探求ラジオ Dig」(TBSラジオ、2012年1月29日(木)22:00-23:50)


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