『グッドモーニング、ベトナム』超え!ラジオ映画 No.1 は Talk to Me (2007) で決まりだぜ、y'all, meeen! ※ドン・チードル、キウェテル・イジョフォー主演
○『グッドモーニング、ベトナム』超え!ラジオ映画 No.1 は Talk to Me (2007) で決まりだぜ、y'all, meeen! ※ドン・チードル、キウェテル・イジョフォー主演
『グッドモーニング、ベトナム』超えのラジオ映画!
ラジオを題材にした映画は数多くあります。
おそらく、『グッドモーニング、ベトナム』Good Morning, Vietnam(1987年)をNo.1に挙げる人が多いと思います。
でも、私のラジオ映画No.1は、Talk to Me (2007) です。
日本では劇場公開されておらず、日本版DVDも出ていません。
でも、ハッキリ言って、『グッドモーニング、ベトナム』超えの傑作です。
キャストも豪華。主演は、
- ドン・チードル(Don Cheadle)
※『ホテル・ルワンダ』Hotel Rwanda(2004年)主演 - キウェテル・イジョフォー(または、チュイテル・エジオフォー: Chiwetel Ejiofor)
※2014年アカデミー賞作品賞『それでも夜は明ける』12 Years a Slave(2013年)主演
この他に、ラジオ局の局長役で、マーティン・シーン(Martin Sheen)も出ています(森喜朗化が進行中)。
Kasi Lemmons, Talk to Me (2007) 予告編
ストーリー
実在のラジオDJでコメディアンのピーティー・グリーン(Petey Greene)の半生を描いた作品で、刑務所内のラジオDJとして人気だったピーティーが出所し、ラジオ局に押し掛け、プロデューサーとともに成功してゆく過程とその後を描いた映画。
名台詞集
口八丁のピーティーからは名言が連発。いくつかご紹介。
"It's a minor challenge."(「たいした問題じゃない。」)
Petey [Milo (Dewy's brother)]said y'all need a new DJ at that radio station. Hey, I'm your man.
Dewy My brother wouldn't know. And in case you forgot, you're in prison.
Petey It's a minor challenge.
ピーティー あんたたち、ラジオ局に新しいDJが要るんだってな。ほら、オレがいるじゃないか。
デューイー 兄には関係ない話だ。それに、お忘れかもしれないが、君は刑務所の中だ。
ピーティー たいした問題じゃない。
刑務所の館内放送で人気のDJ・ピーティーと、服役中の兄に面会に来たデューイーとの出会いのシーン。ピーティーはある奇策を用いてまんまと出所を勝ち取り、デューイーのラジオ局に勝手に押し掛けます。
ピーティーに対して良い印象を持っていなかったデューイーですが、その後、ふたりはタッグを組んで成功への道を歩みます。
"P-Town."(「Pタウン」)
Petey But I guess that don't make me no different than Berry Gordy. And hell, that brother own a label! I'm in pretty good company. Maybe I'll own a label one day, y'all. "P-Town."
ピーティー でも、そうだとしたら、オレとペリー・ゴーディーになんの違いもないんじゃないか。あのブラザーはレーベルをもっている。オレもいい仲間に恵まれている。たぶんオレもレーベルをもつ日が来るだろう。「Pタウン」だな。
ラジオ局としては御法度のモータウン批判。モータウンからも苦情の電話が入ります。謝罪を求められたピーティーは、さらに悪口雑言を続け、DJになるチャンスを一旦失います。しかし、この放送は、黒人リスナーたちの心をつかんでいました。
自分のイニシャルと「モータウン」と引っ掛けてつくった言葉「Pタウン」は、この後、ピーティーの世界観を表すキー・ワードになります。
You, ready to shake up the world, radio man?(世界を揺り起こす準備はできてるか、ラジオ・マン?)
Dewy You ready to shake up the world, radio man?
デューイー 世界を揺り起こす準備はできてるか、ラジオ・マン?
一度WOLでDJをつとめたピーティーでしたが、採用されませんでした。しかし、酒場でデューイーが見かけた黒人たちは、ピーティーのラジオの話で盛り上がっていました。
ピーティーがリスナーの心を掴んでいたことを知ったデューイーは、ピーティーのもとを訪れて声をかけます。
一計を案じたふたりは、翌日、奇策に打って出ます。
Because WOL is a station of the people, for the people, by the people."(「WOLは人民の人民のための人民によるラジオ局だからです。」)
Dewy Morning music and a talk show, with a man of the people. Because WOL is a station of the people, for the people, by the people.
Petey I'm the people.
デューイー 人びとの代弁者が送る朝の音楽とトーク・ショー。WOLは人民の人民のための人民によるラジオ局だからです。
ピーティー オレが人民だ。
出番のDJを事務所に閉じ込め、スタジオを不法占拠して放送するピーティーとデューイー。局長は、ふたりを追い出し、秘書に警察への通報を命じます。しかし、リスナーからの反響で回線がパンクして通報できません。そのときふたりが局長に向かって発した言葉。
"That's your city. Our city."(「それはお前の街だ。オレたちの街だ。」)
Petey Just take a look outside and tell me what you see. You see a city on fire. Now, that's your city. Our city. And that's not what Dr. King would have wanted.
ピーティー 外を見てみろ、何が見えるか言ってみろ。街が燃えてるだろ。なぁ、それはお前の街だ。オレたちの街だ。それに、こんなことキング牧師は決して望んでなんかいなかっただろう。
キング牧師が暗殺され、ワシントンDCでも暴動が起きます。黒人たちは道行く白人を襲い、白人の店を次つぎと破壊し火を放ちます。街の惨状を目にしたピーティーとデューイーはスタジオに戻り、冷静さを保つようラジオを通じて夜通し呼びかけ、リスナーたちからの電話に応え続けます。
"I kind of miss that little old radio station"(「オレは何だか、あのちっぽけなラジオ局がなつかしいんだ。」)
Petey I know it sounds crazy, man, but I...I kind of miss that little old radio station back at Lorton, man.
ピーティー 馬鹿げた話に聞こえるかもしれないけどさ、オレは何だか、ロートンのあのちっぽけなラジオ局がなつかしいんだ。
人気DJとなったピーティー。デューイーがマネージャーとして辣腕を発揮し、活動の幅を広げてテレビにも進出。ピーティーは、みるみるうちにスターダムにのし上がってゆきます。そんななかで、ピーティーがふと漏らした言葉。
"When they out there laughing, I know they laughing with me, not at me."(「あいつらがラジオの向こうで笑っているとき、オレを笑ってるんじゃなくて、オレと一緒に笑ってくれてるのが解るんだ。」)
Petey Well, the truth is I'm just an ex-con, y'all. And the people that live in the world that I come from, well, most of them can't even afford TVs.
They listen to me on the radio, and they do that because I keeps it real. When they out there laughing, I know they laughing with me, not at me.
But I look out here at y'all, and all I see is a room full of white folk waiting to hear some nigger jokes.
I ain't got nothing to say to you people. Y'all ain't ready for P-Town.
ピーティー まぁ実際、オレはただの前科者だ。そして、オレが育った世界にいる連中のほとんどは、テレビを買う金もない。
あいつらはオレのラジオを聴いてくれている。オレがいつも本当のことを話すからだ。あいつらがラジオの向こうで笑っているとき、オレを笑ってるんじゃなくて、オレと一緒に笑ってくれてることが解るんだ。
でも、ここにいるあんたらを見ると、見えるのは黒んぼのジョークを聴こうとお待ちかねの部屋いっぱいの白人だ。
あんたらに言うことなんか何もない。あんたらは、Pタウンにはまだ早すぎる。
人気物になったピーティーは、ついに、CBSテレビの大人気番組「ジョニー・カーソン・ショー」The Tonight Show Starring Johnny Carson に出演することに。その収録でピーティーが発した言葉。これで、オンエアーは取りやめとなります。
他方、白人の社会で成り上がってきた黒人であるデューイーにとっては、「カーソン・ショー」は夢の番組でした。これをきっかけに、ピーティーとデューイーは別々の道を歩き始めます。
"Don't want no laughing. Don't want no crying. And most of all, no signifying"(「笑うな、泣くな、そして何より、もったいぶるな。」)
Petey I tell it to the hot; I tell it to the cold. I tell it to the young; I tell it to the old.
Don't want no laughing. Don't want no crying. And most of all, no signifying.
ピーティー 熱いヤツら、冷めたヤツら、若いヤツら、年食ったヤツら、お前らに言っておきたいことがある。
笑うな、泣くな。そして何より、もったいぶるな。
ピーティーの決め台詞。どんな話題についても、誰に対しても、言いたいことを率直に話す彼の姿勢が表れています。"signifying" は、ここでは、物事を直接語らずに様ざまな含みをもたせる、黒人文化における婉曲話法のこと(『文化系のためのヒップホップ入門』参照)。
傑作なのに人知れず埋もれてしまっているのが勿体ない。
キウェテル・イジョフォーの快進撃を機に、Talk to Me が日本でも手軽に観られるようになることを望みます。
※当ブログ内の関連エントリー:
○決定版 映画の中のラジオDJベスト10:Classic Ten - Radio DJs in the Movies(AMC Blog, November 18, 2009)
○オリヴァー・ストーン[監督]『トーク・レディオ』Talk Radio(1989年)
○フィリップ・シーモア・ホフマン、死去。(2014年2月2日)※『パイレーツ・ロック』(2009年)主演
○ラジオ局を舞台にしたイギリスのTVコメディー「FM」:FM (ITV2, 25th February 2009 – 1st April 2009)
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