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大森一樹[監督]『トットチャンネル』(1987年)をフィルムセンターで観た。

○大森一樹[監督]『トットチャンネル』(1987年)をフィルムセンターで観た。

 

フィルムセンターで大森一樹特集


 

たまたま東京・京橋周辺を移動中、東京国立近代美術館フィルムセンターで大森一樹特集をやっていることを知った。当「ラジオ批評ブログ」としては、『トットチャンネル』(1987年)『オレンジロード急行』(1978年)がスクリーンで観られるまたとない好機。

会期は2014年3月18日(火)〜3月30日(日)。『ヒポクラテスたち』(1980年)『ゴジラ vs キングギドラ』(1991年)など、珠玉の大森作品が1本500円で連日公開中。

上映会情報 自選シリーズ 現代日本の映画監督2 大森一樹

ということで、3月23日(日)に『トットチャンネル』を観に行った。

上映30分前に開場らしいので40分前ぐらいに行ってみると既に長蛇の列。開場待ちの列がロビーの中をぐるりと回り、階段を降り、突き当たりで折り返して、さらにロビーまで戻って来るという盛況ぶり。

会場に着くまで知らなかったのだけれど、上映後、大森一樹×斉藤由貴のトーク・ショーがあるのだとか。ラッキーでした。

東京っていい街だなぁ。

以下、映画とトーク・ショーのレポート。

『トットチャンネル』(1987年)を観た


 

DVDは持っているけれど、スクリーンで観るのは初めて。

NHK放送劇団第5期生の新人女優・俳優たちの成長をテレビの黎明期を重ね合わせて描くテレビの青春映画、いや、「テレビジョンの青春映画」と言うべきかな。やがて戦後8年目に入ろうとする、新生日本の青春時代でもある。

黒柳徹子の自伝的エッセイ『トットチャンネル』(1984年)が原作。ナレイションも黒柳本人が担当。

とは言え、黒柳徹子が「柴柳徹子」に、七尾伶子が「中野瑛子」になるなど登場人物の名前は変更されていて、エッセイに出てくるエピソードも内容や設定が再構成された劇映画である。例えば、このブログで以前話題にしたラジオ・ドラマのオーディションの話がテレビ・ドラマのオーディションになっていたり、「細面(ほそおもて)」のエピソードは、原作と映画では逆のロジックになっている(映画のほうが可笑しかったなぁ)。

テレビ黎明期の話ではあるもののラジオの収録現場も度たび登場し、往年のラジオ・テレビの各種放送機材が堪能できる。動く放送博物館状態。当「ラジオ批評ブログ」的にはそこも見所。また、「ラジオを聴くためにラーメン食べに来た人に悪いじゃないか」という台詞に私は過剰反応してしまいました。

でも、なんと言っても、斉藤由貴の魅力が全開であります。基本的には、天然のドジっ子を斉藤由貴がベタなコメディーっぽく演じて行くのだけれど、もう、これがカワイイのなんのって。

冒頭、NHK放送劇団の試験会場を間違えてしまい、会場まで走るシーンから始まるのだけれど、ヒロインが全力疾走するという青春映画らしいオープニングで、観ているコッチの心も一緒に走り出し、一瞬で感情移入してしまう。

テレビ・ディレクター役の故・三浦洋一や、ラジオ・ディレクター役の苅谷俊介(『大都会』の「弁慶」の人ね)も良かった。この作品が映画デヴュー作となる高嶋政宏は、映画デヴューっぽさを存分に発揮していた(笑)。

今となっては信じられないけれど、当時のテレビは海のものとも山のものとも判らない存在で、旧来的な価値観の人たちからは軽視すらされていた。劇団の新人女優・俳優たちをはじめとするテレビ関係者たち自身も、テレビへの期待と不安が相半ばし、映画の世界へ移るもの、テレビの世界から離れる者などそれぞれの道を歩んで行く。

徹子自身も、自分のこれからに対する不安で揺れ動くものの、ある光景を公園で目撃し決意を新たにして終劇。

このブログは「ラジオ批評ブログ」ではあるものの、テレビずきな人、テレビ業界を目指している人、テレビ業界で働いている人にも観てもらいたい作品。

単なるアイドル映画ではなく、とても良い作品だと思う。

3月26日(水)19:00からもう1回上映されるので、時間のある方はぜひ。強くお勧めします。

大森一樹×斉藤由貴のトーク・ショー


 

上映後、大森監督、斉藤由貴の順で登壇し、トーク・ショーがスタート。

この日が特集の1クール目最終日で、大森監督によると『トットチャンネル』が一番の客入りで、満席の盛況でした。フィルムセンターは立ち見なしとのことで、入れなかった人もいたとか。ちなみに、いちばん客が少なかったのは『ゴジラ vs キングギドラ』だったとのこと。いかにもフィルムセンターらしい(笑)。

大森監督との「三部作」の前に、斉藤由貴は相米慎二作品に主演して映画デヴューしている。大森監督と相米監督の演出法の違いの話が面白かった。

斉藤由貴曰く、相米監督は、とにかく女優を追い込んで追い込んで何度もテイクを重ねる演出で、名前を呼んでくれずに「ゴミ」とか「クズ」とか言われたり、角材で殴られたりもしたとのこと(ヒデぇ野郎だ!)。これに対し、大森監督は、「大きい波が来たよ。ほら、乗ってごらん」という感じのやさしい演出で、だいたい2〜3テイクでOKが出るとのこと。斉藤由貴はこのギャプに戸惑って、見ていた大森監督もキョトンとしているのが判ったのだとか。

また、大森×斉藤の黄金のタッグが成立したきっかけが、当時大森が準備していた『ゴジラ』の話が行き詰まって流れたからというのが可笑しかった。人の縁って不思議だなぁ。ちなみに、『トットチャンネル』劇中にはあちこちにゴジラが出てくる。

斉藤由貴によると、『トットチャンネル』を観た黒柳徹子は、涙を流して感動し、作品をとても気に入っていた様子だったらしい。黒柳からもらった小指用の象牙の指輪をいまでも大事に取ってあるとのこと。

斉藤由貴というと、私が小学生の頃のトップ・アイドルで、額面500円のテレホン・カードにモノ凄いプレミアが付いて、30万だか40万だかになったりしておりました。私もヨーヨーをぶん回して遊んだ記憶があります。


明星 青春という名のラーメンのCM(1985年)
 

壇上の斉藤由貴は、さっき観た映画の頃よりはかなりほっそりとした大人の美貌で、ビックリするぐらいキレイでした。もっと前の席に座ればよかったなぁ。今年が芸能生活30周年とのこと。現在、3児の母だそうです。でも、声は昔のままでした。知的で品のある語り口の中に時どきアイドル時代のチャーミングさが垣間見え、ハッキリ言って、完全にハートを射抜かれてしまいました。

ラジオやってくんねぇかなぁ。


斉藤由貴『KIZUNA』(2011年)
※NHK-BSアニメ『へうげもの』エンディング・テーマ
 

お客さんもすばらしい

フィルムセンターのお客さんは高齢者のかたが7割ぐらいで、職員のかたと挨拶している人もいて、常連のかたも多いようだった。近くの席では、昔は忙しくて映画を見る暇もなかったけれど、今は毎日来ていると話しているおばあさんもいた。

映画の途中で度たび笑い声や歓声が上がり、上映後は拍手が起こった。映画の愉しみ方をよくご存知のかたたちに囲まれて、とても良い雰囲気で作品を堪能できた。

映画、トーク・ショー、劇場の雰囲気、すべてをひっくるめて、最高の映画体験でありました。

※関連リンク:

大森一樹監督、斉藤由貴は「幸運を運んでくれた女神様」 | ニコニコニュース

問題:日本で初めて男の子を演じた大人の女性声優は誰でしょう?(当ブログ内)


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