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ラジオにおける男女の不平等:"Women make up only 20% of solo radio broadcasters, research reveals"(The Guardian, Friday 12 July 2013)

○ラジオにおける男女の不平等:"Women make up only 20% of solo radio broadcasters, research reveals"(The Guardian, Friday 12 July 2013)

 

下記ツイートで興味深い記事が紹介されていた。イギリス『ガーディアン』紙(the Guardian)から:

訳してみた:

単独ラジオ・パーソナリティー、女性はわずか20%の調査結果

性別による不均衡は、高聴取率時間帯の複数パーソナリティー番組でさらに低下(ロビー団体サウンド・ウィミン調べ)

リサ・オカロル(Lisa O'Carroll)
『ガーディアン』2013年7月12日(金)

Annie Nightingale
BBC Radio1初の女性パーソナリティー、アニー・ナイチンゲール。彼女の後12年間、女性の抜擢はなかった。
Photograph: BBC/David Venni

 

イギリスのラジオにおける性的不均衡の新たな証拠が調査により明らかになった。調査によると、単独パーソナリティー番組のうち、女性パーソナリティーの出演はわずか20%であった。

男性に対する女性の割合は、複数パーソナリティー番組ではさらに低下し、例えば、BBC Radio4 の "Today" では、5人のレギュラー司会者のうち、サラ・モンタギュー(Sarah Montague)が唯一の女性で、ジョン・ハンフリーズ(John Humphrys)、ジェイムズ・ノーティー(James Naughtie)、エヴァン・デイヴィス(Evan Davis)、ジャスティン・ウェッブ(Justin Webb)と共演している。

ラジオにおける性別均衡を求めるロビー団体、サウンド・ウィミン(Sound Women)によれば、2人以上の司会による番組では、女性の10倍の男性の声をリスナーは聴くことになる。

同団体は、ジョー・ワイリー(Jo Whiley)クレア・ボールディング(Clare Balding)アニー・ナイチンゲール(Annie Nightingale)ら、イギリスで最も成功している女性パーソナリティー20人についても調査したが、そのうち誰ひとりとして、共演者に男女どちらを希望するか聞かれたことがないことを明らかにした。

共演したい女性司会者は誰かという質問に、モンタギューは、BBCの経済部デスク、ステファニー・フランダース(Stephanie Flanders)、Radio 4 "Woman's Hour" の司会者ジェーン・ガーヴェイ(Jane Garvey)、BBCテレビ "Breakfast" 前司会者シャーン・ウィリアムズ(Sian Williams)を選んだ。

Radio 1 で最も長くDJを務めているナイチンゲールは、理想の共演者にフィー・グラヴァー(Fi Glover)を選んだ。ナイチンゲールは、ラジオにもっと女性が出演すべきだと主張しつつも、こう答えた:「単なる数合わせのために出演したい人はいない。人は適材適所の出演を希望している」。

ナイチンゲールが Radio 1 初の女性DJの職を得るのに、最初の応募から4年もかかった。2番目の女性DJ、ジャニス・ロング(Janice Long)が起用されるまでに、さらに12年を要した。

ナイチンゲールはガーディアン紙にこう語った。「いったん私がドアを開いたら、すぐにみんなが後に続くと思ってた——でも違った。長い間、私はお飾り女みたいな気分だった。未だにその理由は判らない。今では女性のチャンスも増えてはいるものの、やり手の男たちで上はつっかえている。ラジオ界に入るには、かなりの実力をつけなければならない。そして、たくましく、逆境にへこたれず、テクノロジーについていく意欲ももたなければならない」。

『オブザーバー』紙(the Observer)の音楽評論家でテレビやラジオにも出演しているミランダ・ソーヤー(Miranda Sawyer)は、こう語っている。ラジオに進出してくるのはニュース出身の年長の男性と比較的ソフトな経歴の女性という、お決まりのパターンが極めて多い。女性がラジオ[の報道]番組に進出するなら、少し強面なスタイルで半分男のように振る舞わなければならないというパターンも、このところ徐々に復活しつつある。

「人口の半分以上が女性なら、もっと女性をラジオに出演させましょうよ。それは彼女たちの性の問題というだけではなく、経験の問題、即ち、人生においてくぐり抜けて来たことと物の見方の問題でもある」。

サウンド・ウィミンは、主要な全国放送局を含む全英30のラジオ局を検証したが、集計の対象は司会者・共演司会者の放送時間のみで、レポーター、ニュースキャスター、ゲスト・コメンテーターは含まれていない。

高聴取率時間帯——朝食時と通勤時——には、女性司会者は全体の8分の1しかいないことが明らかになった。

この調査結果は、『ガーディアン』が昨年行った調査とも合致している。『ガーディアン』の調査では、"Today" 内で放送された司会者、ゲスト・コメンテーター両方の発言を集計した結果、女性の発言は全体の16%にとどまっている。

BBCの報道部長に着任予定のジェイムズ・ハーディング(James Harding)は今週初め、女性ジャーナリスト懇談会(Women in Journalism)主催のセミナーで、テレビ・ラジオにおける50歳以上の女性の人材不足を懸念しており、来月に入社した際には、この問題に取り組むことを約束すると発言した。「このようなことが起こる理由が知りたいし、何らかの手を打たなければならないと考えている」。

BBCは次のようにコメントしている:「BBCは、多くの抜きん出た才能を持つ女性のために雇用における機会均等を実践し、ラジオ放送網のいたるところで役割を提供しています。依然としてまだまだ可能な取り組みはあり、トレーニングの実施の他にも、ネットワークづくり、業界全体に関わるこの問題に対する指導的なイニシアティヴなど、サウンド・ウィメンとの協力を続けて参ります。」

放送時間の内訳

単独司会者による総放送時間

男性 - 80%
女性 - 20%

複数司会者による総放送時間

男女共演 - 57%
男性のみ - 39%
女性のみ - 4%

ウィークデイの単独司会時間

男性 - 81.6%
女性 - 18.4%

週末の単独司会時間

男性 -  76.7%
女性 - 23.3%

ウィークデイの複数司会時間

男女共演 - 62%
男性のみ - 32.7%
女性のみ - 5.2%

週末の複数司会時間

男女共演 - 35.7%
男性のみ - 62.9%
女性のみ - 1.4%

朝食および通勤時間帯

女性の単独司会は、通勤時間帯全体の12%、朝食時間帯全体の13%どまり
複数司会者時間のうち、通勤時間帯の89%は男女共演
複数司会者時間のうち、朝食時間帯の66% は男女共演
いずれの時間帯でも、女性2人による司会の例はない

※元記事:Women make up only 20% of solo radio broadcasters, research reveals | Media | The Guardian

雑感

サウンド・ウィメンによる調査は、放送時間に着目した数理的な統計をメインにし、女性DJへの聞き取りでこれを補足しているという感じだろうか。

日本のラジオについては、数理的に比較する材料はないけれど(だれか卒論でやれば?)、印象としてはそう違わないのではないだろうか。「ラジオに進出してくるのはニュース出身の年長の男性ともっとソフトな経歴の女性という、お決まりのパターン」"cliches about the older men who come from news backgrounds and women from a softer background to get to radio" なんて、ほとんど同じ。

放送時間を量的に見るだけでなく、放送内容を質的に見る必要もありそうだけれど、これは客観的な分析というよりは、言説分析っぽくなりそうだけれど。

印象に過ぎないけれど、日本のAMラジオにおける女性出演者の役割は高度にジェンダー化されていて、有り体に言えば、小料理屋の女将的な役割や、会社の女性部下的な役割が与えられているケースが多いように思う。そもそも日本においては、女性アナウンサーすらも、"from news backgrounds" というよりは、"from a softer background" という扱いを受けている。あまつさえ、性的欲望の対象として消費されることも多い。

AMラジオで自己主張する女性パーソナリティーは、賛否がまっぷたつに分かれる傾向もあり、反対派による人格攻撃の対象になることも少なくない。そういえば、40〜50代男性自営業者向けのトークをしろという要請に反発して、辞めていった人もいたよなぁ。

むしろFM局のほうが、女性パーソナリティーの割合が高いかもしれない。たぶんこれも、 "from news backgrounds" か "from a softer background" かということに関係しているのだと思う。

※関連リンク:

Research | Sound Women(英語)
※記事で言及されている調査は、同ページ内の "Sound Women on Air – 2013"。

Fewer than one in five Today guests or reporters are women | Media | The Guardian(英語)
※『ガーディアン』紙による2012年の同種の調査。

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コメント

続けてコメントいたします。
興味深い記事を拝読いたしました。

投稿: 石﨑亮史朗 | 2013年7月28日 (日) 22時46分

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