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翻訳:英『エコノミスト』誌による安倍政権評:"Abe’s master plan", The Economist, May 18th-24th 2013, p.11

○翻訳:英『エコノミスト』誌による安倍政権評:"Abe’s master plan", The Economist, May 18th-24th 2013, p.11

 

安倍晋三内閣総理大臣がイギリスの The Economist の表紙になったことで話題になっているようだ。


The Economist, May 18th-24th 2013, p.11
「鳥だ、飛行機だ、いや、ニッポンだ!」
で、なんでジャケット着てんの?
  

同誌掲載の安倍政権に関する記事 "Abe's master plan" を訳してみた。

一部メディアでは、"Yet if his plans are even half successful, he will surely be counted as a great prime minister." の部分を強調して、「アベノミクスが高く評価されている」と紹介しているようだけれど、全体を読むとそこがポイントじゃないことが解る。その会社には英語ができる人はいないのかい?

そもそそも、表紙見たら解るし。

記事は "The way to restore Japan is to focus on reinvigorating the economy, not to end up in a needless war with China." で締められている。前段の "half successful" が指しているのは、そういうことなのでは。

要約すると、「経済は自由化しろ、余計な野心は抱くな」と釘を刺す記事です。

安倍のマスタープラン

安倍晋三は、繁栄と愛国の日本というヴィジョンをもっている。経済のほうがナショナリズムよりもマシのように見える。

安倍晋三がわずか1年で総理大臣を辞職した直後の2007年9月には、彼は有権者の嘲笑の的になり、持病の餌食となり、 近年の日本のリーダーの多くの命取りとなった愚かな行いを批判された。今日では、第2次安倍政権に入ってまだ5か月にすぎないが、安倍氏は別人になったように見える。彼は日本を「アベノミクス」体制に乗せた。日本経済にショックを与え、20年にわたって日本経済の足かせとなってきた不活状態から脱却させる、リフレと財政出動と成長戦略の混合物である。安倍氏は、再び政府を強靭にするために、かつて恐れられた日本の官僚制を強化した。そして、自身の健康が回復すると、地政学的な再ブランディングと憲法改正のプログラムの素案を発表した。日本のあるべき姿であると安倍氏が考える世界的な大国としての地位に日本を戻すことを意図したものだ。

安倍氏は、政治家たちへの忠誠心を失った国の電子化に取り組んでいる。就任以来、株価は55%の上昇率だ。第1四半期の一般消費は、年率換算で3.5%の伸びに達した。安倍氏の支持率は70%を超えている(他方、第1次安倍政権末期は約30%だった)。安倍自民党は7月の参院選での勝利を目指す構えだ。両院で過半数を得れば、法案の通過は自由自在だ。

日本を不況から脱却させるのは大仕事だ。失われた20年の後の今、日本の名目GDPは1991年と同じ値で、日経平均は、最近の急上昇の後でさえも、かろうじてピーク時の3分の1に過ぎない。日本の労働力弱体化の原因は、高齢者人口の増加によるコストが重荷になっていることにある。日本社会は内向き傾向にあり、日本企業は革新的先端性を失った。

安倍氏は、日本再生を公約にした最初の政治家ではなく——日出づる国はこれまで、偽りの夜明けを見せられるだけでは済まなかった——そのニューモデルである安倍も、ひとつひとつ証明しなければならないことばかりである。にもかかわらず、もし彼の計画が半分でも成功すれば、名宰相に列せられることは間違いないだろう。

我に策あり

今回がこれまでとは違うと考える理由は、中国にある。経済の衰退が新しい現実味を帯びたのは、2010年に中国が日本を押しのけて世界第2位の経済大国に躍り出た時だ。中国は自信を強め、沿岸水域に、対日本については、問題となっている尖閣諸島/釣魚島に重きを置き始めた。今月初めの中国共産党機関紙『人民日報』は、日本の沖縄に対する主権にさえ異議を唱えた。

中国の挑戦を迎え撃つことで、日本を永年にわたって囚えてきた無関心と消極性に揺さぶりをかけて取り除くことができるというのが安倍氏の信条だ。彼の計画の真の野望を説明するならば、彼の国民が明治時代のスローガン「富国強兵」を唱えることだ。富んでいてばこそ初めて、日本は自国を防衛しうる。自国を防衛することが出来て初めて、日本は中国に対して立ち上がることが出来る——そして同じく、盟主アメリカへの従属を免れることが出来る。アベノミクスは、財政出動と金融緩和を伴うゆえに、あたかも経済学説であるかのように聞こえるが、実際には、少なくとも同時に国家防衛に関するものである。

おそらく、それゆえに、安倍氏がかかる緊急時に政権に就いたのであろう。最初の数週間のうちに、安倍氏は10.3兆円(約1000億ドル)規模の補正予算を発表した。安倍氏は、金融市場にさらなる資金を注入すると公約した日銀の新総裁を任命した。これが円安につながる限りにおいては、輸出を加速させるだろう。もしこれがデフレの亡霊を追い祓えば、消費をも加速させるかもしれない。しかし、紙幣を刷ることによって実現できるのはそこまでで、GDPの240%に該る負債により、日本がまかなうことの出来る新規の財政支出には制限がかかる。したがって、経済の長期ポテンシャルを変化させるためには、安倍氏は、計画の第三の部分、構造的な部分を続行しなければならない。目下安倍氏は、根本的なサプライサイド改革を煽動する5つの諮問機関を立ち上げている。2月には、安倍氏は、農業などの保護産業の強制的開放を約束する地域通商協定であるTPPへの日本の交渉参加を表明し、支持者をも驚かせた。

悪しき血

グローバル需要の源泉となるかもしれない日本のさらなる繁栄に異を唱えることの出来る者はいない。「自衛隊」を他国のような常備軍に転換させた愛国的な日本は、北東アジアの安全を増強するだろう。にもかかわらず、安倍氏の破滅的な第1次政権を憶えている人たちには、2つの懸念が残されている。

経済に関する危険は、彼が以前同様のソフト路線であることだ。すでに次のようなささやきが聞かれている。第2四半期の成長がお粗末なものであれば、景気回復への圧迫を恐れて、2014〜15年に予定されている2段階の消費増税のうちの第1段階を延期するだろう。懸念されるのは、彼が抵抗勢力であるロビー団体に屈することだ。農業、製薬、電力は、競争に晒される必要のある産業の一部に過ぎない。安倍氏は、自民党の一部に弓を引くことになったとしても、それらの業界に対峙することに尻込みしてはならない。

対外的な危険は、彼が強硬路線を張り、破壊的で後ろ向きなナショナリズムで国民のプライドを混乱させているることだ。安倍氏は、日本が戦後にアメリカの監督下にあったことを屈辱とみなすようにようになっているマイノリティーに属している。彼の支持者は次のように主張している。安倍氏は、日本が戦時中に犯した罪を最小化することは受け入れ難いことであると学んできた、と。しかしながら彼は、大日本帝国(彼の祖父は占領下の満州経営の協力者である)が本当に侵略者であったかどうかを問い、A級戦犯が戦没者と合祀されている靖国神社への参拝を閣僚に許すことで、既に中国と韓国の反感を煽っている。これに加えて、安倍氏は、今の日本に必要十分な常備軍では飽き足らないようだ。話題に上るのは、1947年にアメリカから引き継いで以来変更されていない、憲法のリベラルな部分の全面検討だ。安倍氏は、敢えて地域対立の火に油を注いでおり、これが貿易に脅威を与えることで経済成長を低下させるおそれがある。

安倍氏が日本を覚醒させたいというのは当然のことだ。参院選後、彼は実際にそのチャンスをつかむだろう。日本再生の道は、経済を再活性化させることであり、中国との不要な争いに陥ることではない。

"Once more with feeling"

同じ号には、上に訳した記事の他に、長めの記事がもう1本ある(pp.21-23)。そのタイトルは "Once more with feeling"(ノリでアンコール)。『エコノミスト』誌はおそらく、アベノミクスの理論的整合性を全く信用しておらず、フィーリングでやってると思っているようだ。

この記事のイントロが良かったので、ついでにご紹介:

東京の売春地帯「ソープランド」で最近、「マッサージ」30分の基本料金が、1990年以来初めて値上がりしている。セックス産業を扱う雑誌『俺の旅』の編集長・生駒明によると、60,000円以上の最高級「ハイテク」マッサージの需要がうなぎ上りだ。彼によれば、全て株式市場の高騰のおかげだという。

ソープランドでは、この再活性化は、言いも言ったり、「泡ノミクス」と呼ばれている。日本の別の場所では、2012年12月に首相に就任した安倍晋三を讃えて「アベノミクス」と呼ばれている。

"Once more with feeling", The Economist, May 18th-24th, 2013, p.21

バブルだってさ。

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