翻訳:オリンピック招致で猪瀬直樹都知事がイスタンブールを中傷。:"In Promoting His City for 2020 Games, Tokyo’s Bid Chairman Tweaks Others", New York Times, April 26, 2013
○翻訳:オリンピック招致で猪瀬直樹都知事がイスタンブールを中傷:"In Promoting His City for 2020 Games, Tokyo’s Bid Chairman Tweaks Others", New York Times, April 26, 2013
さっき、「荻上チキ Session-22」(TBSラジオ、2013年4月29日(月)22:00-24:55)によると、猪瀬直樹都知事が、イスタンブールを中傷する発言をしたとニューヨーク・タイムズが報じたとのこと。2020年夏季オリンピック招致の話。
オリンピック行動規範第14条によると、ライバル都市の評判を損ねたり偏見を与える行為や発言、比較は禁止されているそうだ。
気になったので、当該記事を読んで、翻訳してみた。
急いで訳したので、間違いがあったら忌憚なくご指摘を。
2020年オリンピック誘致 東京招致委員長、ライバルを揶揄
国際オリンピック委員会による2020年夏季オリンピック開催都市決定まで5か月を切り、最終候補の3都市——イスタンブール、マドリッド、東京——は、選考委員と世論の支持を勝ち取るべく努力を加速している。
オリンピック委員会の規約では、誘致委員会メンバーが、他の候補を直接批判することを禁じている。その代わり、候補都市はしばしば、自らの強みと思われる点に焦点を当てることで、遠回しにライバル都市の欠点と思われる点を指摘する。マスコミ業界で言うところの反ポジショニング(counter-positioning)だ。
東京都知事で2020年オリンピック招致委員会会長の猪瀬直樹は、しばしばこの手法を取ってきた。東京の広範囲で効率的な交通体系と、第一級のスポーツ施設と選手村を建設できる財政的技術的手段に焦点を当ててきた。彼はまた、パリやロンドンのように、東京は過去に夏季五輪を開催した経験があると打出した。これはイスタンブールやマドリッドにはできないアピールだ。
しかし猪瀬は、東京と競争相手、とりわけイスタンブールとの比較に関して、時に歯に衣着せぬあからさまな発言で、言葉の境界線をルールすれすれに押し広げてきた。その際彼は、イスタンブールは大会が開催できるほど発展しておらず、施設も不足していることを示唆してきた。
猪瀬は、ニューヨークでの最近のインタヴューで、通訳を介し、「アスリートにとって、最高の開催地はどこになるでしょうか? まぁ、インフラ整備もまだまだで、それほど洗練された施設もない2つの国を比べてみて下さい。まぁ、ブラジルみたいに、初開催ってのはたまにはいいかもしれない。でも、イスラム諸国は、アラーを共有しているだけで、お互いケンカばかりで、階級制度がある」と語った。
イスタンブールの特徴に関する猪瀬の表現について改めて説明するよう求められたスポークスマンは、猪瀬は、イスラム諸国で最初だからといってオリンピック開催地に選ばれるのは理由として不十分だと言ったに過ぎず、最初の仏教国、キリスト教国だというのでは不十分だというのと同じだ、と答えた。
スポークスマンによると、猪瀬は「階級」に言及したつもりはないという。
イスタンブールは、イスラム諸国で発展の最も目覚ましい国の国際都市であることから最終候補地となった。NATOの加盟国でもあるトルコは、ヨーロッパとアジアにまたがり、キリスト教とイスラム教の架け橋でもある。中間層の台頭で、トルコは、政治的にも経済的にもイスラム諸国の牽引役となっている。
イスタンブールのオリンピック開催誘致は今回で5回目だ。声明で、イスタンブールの招致委員会は、ライバル候補地からのコメントへの応答を固辞した。
「2020イスタンブール招致委員会はIOCの誘致ガイドラインを完全に尊重しており、この件にこれ以上コメントすることは適切ではない」と声明には記されている。
過去の候補者によると、国際オリンピック委員会は、候補都市によるあからさまに不快な攻撃を寛容視しておらず、規約違反した候補都市に警告の通知を送付することもある。
候補都市に対するオリンピック広報規範第14条によると、「候補都市は、ライバル都市の評判を損ね偏見を与えるおそれのあるいかなる行為や発言を控えなければならない。他の都市とのいかなる比較も禁止されている」。
不穏当発言での失格はめったにないものの、そうした発言は、IOC委員の心象において、候補都市の信頼性に疑いを引き起こしかねない。
1978年から2002年まで合衆国オリンピック委員会の主席スポークスマンを務め、2012年ニューヨーク誘致の上席情報顧問であるマイク・モラン(Mike Moran)は「このルールが存在する理由は、誰かがルールを逸脱すれば、連鎖反応を引き起こすからだ。IOCは、規約に非常に厳しい」と語った。
モランはつけ加えて、「発言がどの程度IOC委員に影響を与えるかは知る由もない」が、候補者の否定的なコメントは誘致に悪影響を与えないだろう、とも語った。
猪瀬はインタヴュー中に度たび、日本文化は独自であると語り、日本は他より優れていて、それが日本における一般的な見解であるとほのめかした。政治学者のサミュエル P. ハンチントンが『文明の衝突』で日本は他のどの文化とも異なると書いたことを指摘した。
猪瀬はまた、夏季五輪開催に賛成する都民が昨年の47%から70%に上がったという調査結果を示した。好評を博したロンドン大会のおかげで、都民の支持と、東京も同様に成功裏に開催できるという自信につながった、と彼は語った。
周囲は騒がしいが、住民や訪問者が立ち入ることのできない皇居が東京の中心にあるので東京は例外だ、とつけ加え、「東京の中心には何もない。社会の近代化の方法としては独特だ」と彼は語った。
トルコは日本より遥かに若年人口が多く、次世代のオリンピック支持者を開拓する肥沃な素地があるため、オリピック委員会がトルコを支持するかもしれないという意見を、猪瀬はねのけた。日本の人口増加は頭打ちだが、東京の人口は若年層の流入で増えてきた、と彼は語った。さらに、日本は高齢化しているが、高齢者はかなり健康であるとつけ加えた。
「貧乏子だくさんって言われてきたけど、増加する人口に見合ったインフラを建設しないといけない。重要なのは、シニアも元気である必要があるってこと。健康なら、歳を取っても医療費を抑えられる。平均寿命は女性が85歳、男性が80歳。日本社会がいかにストレス・フリーかってのが判るよね」と彼は語った。
「きっとトルコの人たちは長生きしたいんだと思うけど、もし長生きしたいんだったら、日本のような文化を創るべきだよ。若い人たちがいっぱいいるかもしれないけど、早死にしたらあんまり意味ないよね」とつけ加えた。
猪瀬は、他の条件でも日本とそれ以外の都市とを区別した。1月にロンドンを訪れて東京への誘致活動を行った際に、東京とロンドンは洗練されていると語り、イスタンブールがそうでないことを示唆した。
「うぬぼれるつもりはないけど、ロンドンは先進国の都市だし、ホスピタリティーのセンスもすばらしい。東京も同様にすばらしい。でも、他の都市はそれほどでもない」と猪瀬は記者に語った。
取材協力:Hiroko Tabuchi
サミュエル・ハンチントンが『文明の衝突』で日本を褒めていると誤解しているバカが多いのは知っていたけれど、われらが都知事閣下もそのおひとりとはね。
また、「猪瀬はハメられた」「裏で中国が糸を引いている」「表現をねじ曲げられたおそれがあるのでインタヴュー音源を出せ」みたいなことを盛んに喧伝している人がいるようだけれど、通訳が使った英語表現を原則そのまま記事にしているはず。記事内の "Inose said through an interpreter in a recent interview in New York." とはそのことをわざわざ明示しているのだよ。疑うのは結構だけれど、一見メディア・リテラシーがある人たちのようでいて、まともに記事を読んでいない/読めていない。
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コメント
私は我欲に満ちた国の我欲に満ちた民族の我欲に満ちた一国民です。
真面目な意見
我欲五輪はもういらない
五輪招致する資金とか資材とかあるならば東北の被災者の為に少しでも役立てていただきたいです。
私自身は、アスリートの育成とかサポートの為に国の予算を使うこと自体は一向に構わないし賛成はしますが、五輪招致とは関係無いでしょう。
投稿: 我欲都民 | 2013年8月18日 (日) 22時45分