ピーター・バラカン『ラジオのこちら側で』(岩波新書、2013年)
○ピーター・バラカン『ラジオのこちら側で』(岩波新書、2013年)
ピーター・バラカン『ラジオのこちら側で』
(岩波新書、2013年)
帯は「Barakan Beat」ネット・ラジオ期の写真
ピーター・バラカン『ラジオのこちら側で』(岩波新書、2013年)は、来日してから今日に至るまでのラジオDJとしての半生を語り下した著書。
日本で活動する外国人DJから見た、日本の放送業界・音楽シーンに関する証言として貴重で興味深い。
この本の前史にあたるロンドン時代について語った、ピーター・バラカン/若月眞人『ピーター・バラカンのわが青春のサウンドトラック』(ミュージックマガジン、2009年)と併せて読むと、彼の音楽人生を概観できる。
『増殖』(1980年)以前のYMOの音楽は好きじゃなかったとか、日本に来てからもロンドンのお母上に頼んでチャーリー・ギレットの番組をエア・チェックしてもらっていたとか、NHKにおける公共放送と営業広告の話とか、面白いエピソードも満載。
しかし、一番の読みどころは、ピーター・バラカンが考える音楽メディアとしてのラジオの問題点と、ラジオDJの役割についての話。
全編のうち、いちばん印象に残ると同時に得心したのは次の箇所:
ぼくたちの世代は子どものころから、自分が生まれる前の過去のいい音楽がラジオから流れてくるのを聞いて、ごく自然に自分たちの文化として受け止めてきました。しかし今、その環境がないことに危機感を持ちます。たしかに様々なものがデータ化され、ネットから検索することができるようになったけれど、そもそもどんなものがあるのかを知らなければ探し出すこともできない。何を観ればいいのか、聴けばよいのか、その手がかりになる名画座のような存在。そういうメディアが必要です。(p.204)
ラジオの音楽メディアとしての機能を名画座に喩えているのだけれど、見方を変えて屋上屋を架すならば、「館主」の紹介する音楽を通じて「館主」の人となりを知り、そのことがさらに「館主」の紹介する音楽への興味や愛着につながるという有機的なサイクルが重要だったりもする。
ちなみに、私にとっての「名画座の館主」は、SING LIKE TALKING の佐藤竹善だったなぁ。
あとがきに衝撃の事実!
ひと通り読み終え、あとがきにさしかかると、衝撃の記述を発見:
二〇一一年夏、本の取材の部分がほぼ終わったタイミングで、全く予想外の出来事が突然起きました。
ぼくが一九九六年の開局のときから、三年の空白を除いてずっとDJとして関わってきたインターFMが、二〇一二年の五月にテレビ東京の傘下から木下グループの子会社となりました。そして八月上旬に、新しく代表となった木下直哉さんから突然、社長になってほしいと頼まれました。あまりにも意外な話で、最初は冗談かと思いましたが、真剣なので更にびっくりしました。(p.212)※強調は引用者による。
InterFMの執行役員就任のニュースでも充分うれしい驚きだったけれど、もともとは社長就任を打診されていたなんて!
しかし、日本の電波法では「日本の国籍を有しない人」は放送局の取締役や執行役に就任することができないので、結果的に執行役員に就任したとのこと。
「執行役」と「執行役員」は会社法上異なる。執行役は役員だが、執行役員は役員ではない。執行役員は、取締役会が選任する「支配人その他の重要な使用人」(会社法第362条第4項三号)に該る。ややこしい。
声が聴こえてくる
最後に、ひと言。
声を知っている人の語り下しの「ですます」調の本は、読んでいるうちに著者の声が頭の中に聴こえてくるので、なんだかラジオっぽい愉しさがある。
※関連リンク:
○新しい本『ラジオのこちら側で』が30日に発売されます!: ピーター・バラカン公式ブログ
○騒動摘出 忌野清志郎「反原発ソング」放送禁止騒動でピーター・バラカンに聞く「放送局の役割と風評被害」、『SAPIO』2011年5月4日・11日号(小学館)(当ブログ内)
※参考:
○[ 2012年9月14日 ]重要な使用人の人事に関するお知らせ (PDF)(76.1 InterFM : インターFM)
※ピーター・バラカンの執行役員(放送事業担当)就任についてのプレス・リリース
電波法(昭和二十五年五月二日法律第百三十一号)
第五条 次の各号のいずれかに該当する者には、無線局の免許を与えない。
一 日本の国籍を有しない人
二 外国政府又はその代表者
三 外国の法人又は団体
四 法人又は団体であつて、前三号に掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員の三分の一以上若しくは議決権の三分の一以上を占めるもの。[……]
4 [……]次の各号のいずれかに該当する者には、無線局の免許を与えない
[……]
二 法人又は団体であつて、第一項第一号から第三号までに掲げる者が業務を執行する役員であるもの又はこれらの者がその議決権の五分の一以上を占めるもの
会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)
第三百六十二条 取締役会は、すべての取締役で組織する。
[……]
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
[……]
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
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コメント
BARAKAN BEAT@BARAKANBEAT
4月1日から復活する「Barakan Morning」(月曜~木曜 朝7時-10時 生放送)。DJはピーター・バラカン、そして、InterFM初登場の今村知子さん。朝の習慣としてお聴き頂けたら幸いです #barakanbeat #barakanmoring #interfm
投稿: 次号のラジオ中毒はいつ | 2013年3月10日 (日) 22時28分
3月24日、午後3時から
「爆笑問題の日曜サンデー」は、赤坂サカスから、
久々の公開生放送をします!
何をするかと言うと...
10周年突破記念!JUNK大集合~!!
爆笑問題も火曜日を担当している、
TBSラジオの深夜番組「JUNK」が
10周年を突破!ということで、
月曜日から土曜日までのパーソナリティー全員を
迎えて、ワイワイガヤガヤとお送りします!
まず、月曜日、「深夜の馬鹿力」の伊集院光!
火曜日、「カーボーイ」からは我々、爆笑問題。
水曜日、「不毛な議論」の、南海キャンディーズ山里亮太!
木曜日、「メガネびいき」の、おぎやはぎ!
金曜日、「バナナムーンGOLD」の、バナナマン!
そして土曜日、
「コント太郎」のエレキコミックとラーメンズ片桐仁!
以上、JUNKの全メンバー、総勢11名が一堂に会する
公開生放送です!
抽選で700名をご招待します。
*前回、ありがたいことにお客様が来すぎてしまい、
安全のための措置です。何卒ご理解くださいますよう
お願いいたします。
観覧希望の方は、こちら↓でエントリーしてください。
http://www.tbs.co.jp/kanran/#n-sunday
締め切りは、3月18日(月)の予定です。
投稿: 次号のラジオ中毒はいつ | 2013年3月10日 (日) 22時31分