「事実上の長距離弾道ミサイル」の意味
○「事実上の長距離弾道ミサイル」の意味
ラジオを聴いていると、北朝鮮による人工衛星搭載ロケット打上を、しきりに「事実上の長距離弾道ミサイル」と言い直していて、聴いていてイチイチまどろっこしい。どうやらどの局も、新聞も同じのようだ。テレビでもそう言っているらしい。
日本だけなのかと疑問に思ったので、アメリカのニュース・サイトを検索してみた。あくまでも、サッと検索しただけの半ば恣意的なチョイスだけれど、こんな言い方をしているようだ。
CBCはこんな感じ:
北朝鮮は、初めて人工衛星を軌道に乗せて世界を騒がせた。アメリカに到達可能なミサイルを開発できることを実演していると見られる技術が用いられている。
North Korea rattled the world by putting a satellite into orbit for the first time, using the kind of technology that appears to demonstrate it can develop a missile capable of hitting the United States.○Watch: North Korea launches long-range missle - CBS News Video
FOXニュースは、もっと決め打ち:
北朝鮮、ロケット発射成功も、さほど買い手はつかない見込み
North Korea unlikely to find many buyers despite successful rocket launch○North Korea unlikely to find many buyers despite successful rocket launch | Fox News
ついでに、イギリスのBBCをチェックしてみると:
韓国、アメリカ、日本は、ロケット発射を長距離弾道ミサイル技術のテストを偽装するものであると非難した。
South Korea, the US and Japan have condemned the launch as a disguised test of long-range missile technology.○BBC News - North Korea defies warnings in rocket launch success
なんか、見えてきた気がする。「長距離弾道ミサイル」という言葉は、韓国、アメリカ、日本の3か国によるスピン・コントロールということなのだろうか?
再びアメリカ。CNNの記事。「長距離弾道ミサイル」には言及しているものの、書きぶりは中立的。今回のロケットのミサイル転用の可能性については仮定法で書いている。
ロケット発射成功は、弾道ミサイルに利用可能な北朝鮮のロケット・エンジン、制御、ステージング技術を助けることにはなりうる。この発射台の上段は軽量の衛星を支える設計になっているため、核弾頭を運ぶことはできないであろう。核弾頭は数十倍の重量に達しうる。もしそれが可能だとしても、この技術による三段弾道ミサイルは、理論上1トンの弾頭を10,000から11,000km運ぶことができる。この射程距離は、ミサイルをアメリカ西海岸に到達させることができるかもしれない。このロケットの下2段からなるミサイルに1tの弾頭を搭載すれば、8,000km飛行し、アラスカおよびハワイに到達しうる。
しかしながら、北朝鮮は、そのようなミサイル開発の確信をほぼ、あるいは全く得ていないだろう。そして、ミサイルの軍事利用を厳しく制限するだろう。さらに、平壌はミサイルに搭載可能な核弾頭をまだ開発していないと思われており、そして、大気圏再突入中の弾頭を保護できる長距離弾道ミサイル用断熱材の実証も行っていない。
A successful launch would help North Korea test rocket engines, guidance, and staging technology that could also be used in a ballistic missile. Because the upper stage of this launcher is designed to hold a lightweight satellite, it may not be able to carry a nuclear warhead, which would be some ten times heavier. If it could, a three-stage ballistic missile based on this technology could theoretically carry a one-ton warhead 10,000 kilometers to 11,000 kilometers. Such a range would allow it to reach the West Coast of the United States. A one-ton warhead launched on a missile consisting of the first two stages of this rocket might travel a distance of 8,000 kilometers, which could reach Alaska and Hawaii.
However, North Korea would have little or no confidence in such a missile, which would severely limit its military uses. Moreover, Pyongyang is not yet believed to have developed a nuclear warhead that could be carried by a missile, and has not demonstrated a heat shield for a long-range missile to protect a warhead during reentry.
○What does North Korea's planned rocket launch mean? – Global Public Square - CNN.com Blogs
同じ記事の前段に、こういう記述もあった:
11月にアメリカは、前回合意による射程制限300kmに代って、韓国による射程距離800kmの弾道ミサイル製造に最終合意し、これで北朝鮮全土をミサイルの標的にすることができる。
[...] in November, the United States finally agreed to allow South Korea to build ballistic missiles with ranges up to 800 kilometers, instead of the previous limit of 300 kilometers, which allows it to target all of North Korean territory.○What does North Korea's planned rocket launch mean? – Global Public Square - CNN.com Blogs
なるほど、そういうことか。
利害の布置連関を解きほぐしてみる。
北朝鮮は、もちろん、巷間言われるように、金正日の命日に合せた国威発揚、ロケット技術の宣伝などの動機付けもあっただろうし、韓国のミサイル強化への牽制もあったかもしれない。
アメリカと韓国にしてみれば、北朝鮮による弾道ミサイルの脅威を喧伝すれば、韓国のミサイル強化の正当性を再度補強することができる。
さて、日本は?
「事実上の長距離弾道ミサイル」への右へならえは、これとセットで考える必要がありそうだ。
岡林信康「アメリカちゃん」(1969年)
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