かんべむさし『こちら、FM遊々です!』(光文社、2001年)
○かんべむさし『こちら、FM遊々です!』(光文社、2001年)
かんべむさし『こちら、FM遊々です!』(光文社、2001年)
時節柄、今回はラジオと選挙に関する小説のご紹介。かんべむさし『こちら、FM遊々です!』(光文社、2001年)であります。
かんべむさしについて
かんべむさしというと、阪急ブレーブスと阪神タイガースがもし日本シリーズを戦わばというデヴュー短編「決戦・日本シリーズ」(1974年)や(エンディングが面白いんだよね)、遊園地のお猿の電車の車掌の悲哀と夢を軽妙に描き、中学の教科書にも採用された短編「車掌の本分」(1979年)などが真っ先に思い浮かぶ。
ついでに、ラジオに関して言えば、ラジオ大阪で早朝ワイド番組「むさし・ふみ子の朝はミラクル!」(ラジオ大阪、2005年4月2日〜2008年6月30日、月〜金6:15-8:52)を担当していたことがある。
この経験を基にした小説『ミラクル三年、柿八年』(小学館、2010年)も上梓している。ラジオ番組の内幕が解る興味深い小説なので、これもいずれレヴューする予定。
ちなみに、かんべのウェブサイトによると、
大学入学〜広告マン時代が、ちょうど若者向けの深夜放送全盛期。
あれこれ聞きまくり、ラジオCMも大量に作ってきたので、
いまもスタジオに入ると血が騒ぐ、ラジオ大好き人間。
作家になってのち、番組をやらせてもらったときには、
「おれは、幸せな男だなあ!」と、つくづく思ったものである。○原稿以外の仕事(「かんべむさしのホームページです」内)
と、相当ラジオがお好きなご様子。
コミュニティーFMと選挙の話です
さて、本題。
かんべむさし『こちら、FM遊々です!』(光文社、2001年)はFM遊々を舞台にしたドタバタ喜劇。FM遊々は、大阪北域に位置する「いずかた市」のコミュニティーFM。
よくある第三セクターのコミュニティーFM局で、「さわやかウィークデイ」「午後も元気で」「夕焼けステーション」など、いかにも第三セクターのコミュニティーFM局っぽい番組を放送している。
しかし、市長選が近づき、現職市長が持病の心臓病で倒れると、だんだんキナくさい臭いが漂い始め、FM遊々もこれに巻き込まれてゆく。
スポンサーである専門学校の押しの強い理事長が放送を使って事前運動を始めたり、外部から選挙参謀が乗り込んできたり、10年以上凍結中の駅前再開発をめぐって、凍結維持の市長派の助役と凍結解除派の押し引きが展開。他に、UFOを信仰する泡沫候補の老人、宗教団体をバックに付けた候補者、FM遊々のリスナーも巻き込んで、大騒ぎ。
FM遊々はどこだ?
FM遊々の地元「いずかた市」というのは、もちろん、どこにあるか判らない何方かの街の謂であるが、音の響きからは「枚方市」を連想させる。また、FM遊々という名は、FMわぃわぃ(神戸市長田区周辺 77.8MHz)を彷彿とさせるところもある。
しかし、作中から市のプロフィールをいくつか拾ってみると、
- 爪先を上にしたビーチサンダルの右の足跡の形
- 高速道路・関西急行・国道が大阪市から北上するように走り、左2本は兵庫県へ、右1本は京都府方面へ抜ける。
- 面積:35万km2
人口:38万数千人
世帯数:14万何千戸 - 住宅文教都市
- 北東部に大規模な団地がある
- その大規模団地に丘陵地を背にした大規模霊園が隣接している
以上から、豊中市をモデルとし、これに改変を加えたものと思われる。
しかし、作品に登場するFM遊々の外観や周辺の様子は、FM千里(大阪府豊中市周辺 83.7MHz)のそれとは異なるような気もするけれど、東京在住の私には直接確認する手だてがないのが残念。
コミュニティーFMあるあるも満載
この本では、コミュニティーFMの営業、スタジオ業務、市議会議員や行政との関係なども比較的細かく描かれていて、その点も興味深い。
営業のシーンでは:
「いかがでしょう。とにかく、御社の営業エリアを過不足なくカバーしつつ、格安の料金でコマーシャルが流せますので、費用対効果も抜群であろうと思われますが」
[……]
「しかし、聞こえるのと聞かれとるのとは、また別やわな」
「は、はあ」
「けど、この資料には、肝心のその数字が載ってないやないか」
市の担当者との会話では:
「ちょっと聞いた話ですけど、ある市会議員が、お宅の赤字問題を追及するとかせんとか、そういうことを言うてるらしいですよ」
「えっ」
「災害緊急時に必要かつ有効であるという、それだけのメリットのために連続赤字を認めるなんて、理屈に合わん。抜本的な構造改革をするべきやとかいうてね」
など、コミュニティーFMあるあるが随所にちりばめられており、そういう話が好きな人には二度美味しい。
私がこの本を買った時には古書でしか手に入らない状態だったけれど、最近kindle版が出た模様。
※関連リンク:
○かんべむさしのホームページです (公式サイト)
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コメント
☆秋葉原、内田ラジオでございます。 [単行本]
秋葉原ラジオセンター2階「内田ラジオ・アマチュアショールーム」店主の内田久子さん。86歳の現在も週に4日はお店に通い、昔なじみのお客さんたちのマニアックな注文に応対。メディアにもたびたび登場している名物おばあちゃん。
本書は、ちょこなんとたたずむ内田さんからは想像もつかない、「二・二六事件」「東京裁判」「ダッカ事件」の実体験、ナムジュン・パイクら文化人との交流、そして「オーラメーター」「イオンクラフト円盤」研究といった、バラエティとバイタリティに富んだ体験の語りおろし。
☆SWITCH Vol.31 No.1 特集:ラジオピープル(福山雅治)
内容紹介
テレビやインターネットと比べたらやや地味な存在ながら、いついかなる時代においてもラジオを愛する人々は数多く存在する。では、そんなラジオの魅力とはなんなのか? ラジオの「いま」を伝えるべく、ラジオ愛に溢れる「ラジオピープル」とともにおくる決定版ラジオ特集
CONTENTS
◆福山雅治と、ラジオ
◆ニッポン放送「福山雅治のオールナイトニッポン サタデースペシャル 魂のラジオ」
特別対談:福山雅治 × 小島慶子
◆TOKYO FM「福山雅治のSUZUKI Talking F.M.」
特別対談:福山雅治 × やまだひさし
◆TBSラジオ「Weekend Shuffle」
ライムスター宇多丸
◆J-WAVE「RADIO SAKAMOTO」
坂本龍一
◆NHK-FM「みんなのクリスマスセッション」
やくしまるえつこ
◆TBSラジオ「粋な夜電波」
菊地成孔
◆InterFM「Barakan Beat」
ピーター・バラカン
◆TOKYO FM
androp × SCHOOL OF LOCK!|" End roll " of 2012
◆J-WAVE「ミッドナイト・エクスプレス 天涯へ」
沢木耕太郎
◆震災とラジオ
◆樺沢正人|ラジオは人と企業もパーソナルにつなぐ
◆J-WAVE ANA WORLD AIR CURRENT
◆本田直之|ANAサンノゼ便で行く、シリコンバレーの魅力
投稿: | 2012年12月18日 (火) 06時46分
ライター 北尾トロさんが出している季刊レポで
ラジオ特集をしています
通販が基本のようですが神保町三省堂の3Fで
販売しています
http://www.repo-zine.com/archives/2664
季刊レポ10号:ラジオはナマ臭い
ラジオのおもしろさって、何?
それは、ナマ感のやり取りだろう、とレポは考えたんですよ。
言葉を扱うのだから、媒体として活字と似ていなくもないが、
決定的な違いは、生放送という形態でしょう。
では、生放送のおもしろさとは奈辺にありや。
そんなわけで、取り揃えましたる執筆者。
番組をつくり送り出してきた放送局社員、番組を構成する放送作家、
リスナーに語りかけるパーソナリティ、そして出演者。
生放送の現場はどうなっておるのかをお伝えしましょう。
いやはや、ラジオはナマ臭い。
イラスト:後藤グミ
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入社以来ずっと生放送の現場に携わってきた村沢青子。何を考え、誰を思い、現場を仕切ってきたのか。そして、彼女が遭遇したナマならではの数々のエピソードとは。
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投稿: | 2012年12月19日 (水) 07時14分
ラジオのこちら側で (岩波新書)
ピーター・バラカン (著)
内容紹介
1974年、テレビやラジオ、ロックやジャズへの未知なる期待が渦巻いていたアジアの国・日本に降り立ったロンドン青年。文化の壁にぶつかりながら、素晴らしい音楽を電波にのせるべく今も奮闘中の著者が、音楽シーンとメディアの激変を振り返り、愛してやまないラジオと音楽の可能性を、今あらためて発信する。
新書: 240ページ
出版社: 岩波書店 (2013/1/31)
投稿: | 2012年12月28日 (金) 17時25分
文化系トークラジオ Life のやり方 [単行本(ソフトカバー)]
鈴木謙介 (著), 長谷川裕 (著), Life Crew (その他)
TBSラジオの名物深夜番組「文化系トークラジオ Life」が待望の書籍化!
津田大介、速水健朗、國分功一郎、古市憲寿など、注目の若手論客を続々と輩出する番組プロデュース術から名パーソナリティー鈴木謙介が語る「Lifeの思想」まで、「聴く教養」が生み出されるプロセスを大公開。
リスナーに「神回」と呼ばれたコンテンツも厳選収録し、ハイブリッドな「知」の最前線をお届けします。
投稿: | 2012年12月31日 (月) 07時12分