タナダユキ[監督]『ふがいない僕は空を見た』(2012年)を観た。
○タナダユキ[監督]『ふがいない僕は空を見た』(2012年)を観た。
タナダユキ[監督]『ふがいない僕は空を見た』(2012年)を観た。
他の映画を観に行った時に予告編は見ていた。「田畑智子、そこまでやるか?」とは思ったものの、あんまりピンと来なくて食指が延びなかった。ライムスター宇多丸がラジオで絶賛していたので、放送の翌日(2012年12月9日)に観に行った。テアトル新宿で観賞。
○TBS RADIO 映画博徒の生き様が一目瞭然!ハスリングの記録・2012年 (ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル)
タナダユキ[監督]『ふがいない僕は空を見た』(2012年)予告編
タナダユキ作品は、ドキュメンタリーの『タカダワタル的』(2003年)しか観たことがなく、彼女の劇映画は初めて。
タナダユキ[監督]『タカダワタル的』(2003年)より
『ふがいない僕は空を見た』に話を戻すと、この映画の白眉は、予告編などで印象的にフィーチャーされている前半のコスプレとセックスの部分ではなく、やはり団地の高校生ふたりを描いた後半だと思う。
とりわけ印象的だったのは、団地のふたりが校庭で戯れるシーン。あの瞬間こそが、あのふたりの人生でまぎれもなく最も美しい瞬間で、最も美しい瞬間が最も美しく描かれているのだと思う。それほど、日常が過酷で荒んでいるのだ。
人格形成期の貧困経験は、人の心をねじ曲げる。思春期の少年少女は、自分に責任のない苦境が心を蚕食する日々にそうそう堪えられるものではない。そういう日々のどす黒い沈殿物が外に向う場合は他人や世の中を恨み続け、自分に向う場合はすべてを諦めて希望ある人生から早々に降りる。
ライムスター宇多丸 団地、ね。アメリカで言う、要は「プロジェクト」、公団住宅。これ、アメリカのヒップホップとかラップに通じてる人だったら、まぁ、よくご存知の話だと思いますけども、要は、「オレの生まれ育ったプロジェクト」、ラッパー、ハードコア・ラッパーがよく出てくる、要は貧困の象徴なわけですよね。
[……]。
「そういうヒップホップ的な貧困の現実なんてのは日本にないから、日本語ラップをやるリアリティーはない」だなどと、80年代後半から90年代頭にかけて、訳知り顔の論者がよく言ってましたけど、どの口さげて言ってたんだ。まさに現代日本にもそういう現実はあったし、あり続けてきたし、今もあるっていうことですよね。
助産院の子・卓巳(永山絢斗)に焦点を合わせれば、今回の経験を経て成長するイニシエイションの話だ。再度登校したときの教室のであの表情は絶妙だった。
でも、最後の、生まれたての赤ん坊を前にした時の台詞は、やや老成しすぎているように思えた。彼のような高校生が、あんな言い方するかなぁ?
すべての生の肯定、すべての性の肯定、すべての業の肯定。
『タカダワタル的』と底流でつながるところがある。
Sharon Jones & The Dap-Kings,
"Ain't No Chimneys In The Projects" (2010)
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コメント
タナダユキ監督の新たな才能
原作も映画も、衝撃的作品でしたね。
原作本の本質をどう映像表現するかで、もしかしたら
相当悩まれたのかも。
結果は表現できてて良かったと思います。
タナダユキさん、最近小説「復讐」も発表されて
今後は作家もされるようですね。
マルチな才能というか、すごいなぁ。
一体どんな才能をお持ちなのか、いろいろググってたら
http://www.birthday-energy.co.jp/
で、タナダユキさんを解説してる記事を見つけました。
このまま更に活躍頂きたいですね!
投稿: 友行 | 2013年5月 9日 (木) 23時46分