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山下達郎による解説:「リマスターとは何か?」

○山下達郎による解説:「リマスターとは何か?」

 

※別のエントリーの一部を独立させて加筆しました。

「山下達郎 サンデー・ソングブック」(TOKYO FM、日14:00-14:55)で放送する曲は、山下達郎自身が音源をリマスターしてからかけていると度たび語っている。「オールディーズのレコードの音源は音圧が低いから」みたいなことを言っていた記憶がある。

確かに、古い音源の再発モノのCDと新譜のCDとでは、かけたときのEQの目盛りの上がり方が全然違うなぁと思うことがある。

このあいだ出たベスト盤『OPUS ALL TIME BEST 1975-2012』(2012年)に関するインタヴューのなかで、山下達郎がリマスターとは何かを解説していた:

---[……] 根本的な質問で恐縮なのですが「リマスターって何ですか?」[……]

録音された音楽1曲1曲が完璧に同じレべル、同じ聴感でミックスダウンされているとは限らないんです。Aという曲よりBという曲が甘かったりすると、A・B・Cと並んだときにBが地味に聴こえてしまう。そうならないようにAとCに合わせるとか。要するに“ならし”ですよね。例えばページレイアウトが1ページ目と2ページ目で全然違ったら、資料としては読みにくいから、きちっと枠を作って読みやすくしますよね?音楽的にそれと同じような作業をする事を基本的にリマスターと言うんです。

リマスターって本当に叫ばれ出したのはデジタルになってからの時代なんですよ。我々がロックンロールのグルーヴと呼ぶモノって基本的に“歪み”で、レコードの溝を針が引っかくエネルギーこそが“歪み”になるんですよね。デジタルっていうのはダイナミックレンジが全然違うので、歪まないんですよ。簡単に言っちゃうと情報量が全然違う。

例えるならアナログレコードって言うのはコップなんです。バケツでこのコップに水を入れようとすると溢れるじゃないですか?その溢れたモノが所謂グルーヴとか音圧なんですけど、デジタルってそれが風呂桶サイズなんですよね。風呂桶にバケツで水入れたって少ししかたまらないでしょ?つまり風呂桶を溢れさせるためにはとてつもないエネルギーが必要なんです。それが中々作れない。

そこで考えられたのが、デジタル・コンプレッサーってやつ。アナログ・コンプレッサーっていうのはピークを叩いて圧縮するんです。ではデジタル・コンプレッサーっていうのが何かと言うと下を上げる。なぜならデジタルって上が決まっているから。CDって44.1kHzの16bitでしょ?127dBまでしか入らない。127dB以上はクリッピングと言って潰れちゃうんですよ。それ以上いくらやっても上がらない。そこで何を考えるかというと下を上げる。今のヒット曲や海外のR&Bを聴くと、音が前に貼り付いてるんですよ。上の8bitくらいしか振ってないようなね。つまり下が無いんですよ。下があると、聴感的に弱く聴こえるから。だからデジコンかけまくって、どんどんどんどん前に出すんですよね。それが今のレヴェル戦争と言われるもので。

--- そういう事なんですね。

じゃあ何でそういうことをやるのか?アナログ時代でもシングルは「いかにレべルを切るか」を重要視したんですけど、それは何のためか?それはラジオプレイのためなんですよね。僕のサンデーソングブックも自分でプレスしてWAVデータにして直接サーバーにぶっこんでオンエアしてるから、いい音するんですよ。[……]

すごく解りやすい解説。

まとめると:

  • リマスターとはレヴェルの「ならし」。
  • リマスターと叫ばれ出したのはデジタル時代になってから。
  • ロックンロールのグルーヴとは「歪み」のことで、レコードの溝を針が引っかくエネルギーが歪みになる(だから「グルーヴ」って言うのかぁ!)。デジタルは情報量が多いので歪まない。
  • アナログ・コンプレッサーはピークを叩いて圧縮、デジタル・コンプレッサーは下を持ち上げる。
  • そのようにしてレヴェルを切る理由はラジオ・プレイのため。

これを踏まえると、「サンデー・ソングブック」でやっているリマスタリングの目的は、

  • 番組内でかかる曲同士のレヴェルを合せる。
  • 他の番組でかかる曲とレヴェルを合せる。

ってことでいいのかな?

ところで最後に、前にも書いたかもしれないけれど、山下達郎の曲の中では、『OPUS ALL TIME BEST 1975-2012』(2012年)にも入ってるコレがいちばん好き。詞が素晴らしい:


山下達郎「I LOVE YOU ... Part I」(1984年)
 

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