竹島および尖閣諸島の領有権の国際法的根拠:「荒川強啓 デイ・キャッチ!」(TBSラジオ、2012年8月17日(金)15:30-17:50)
○竹島および尖閣諸島の領有権の国際法的根拠:「荒川強啓 デイ・キャッチ!」(TBSラジオ、2012年8月17日(金)15:30-17:50)
「荒川強啓 デイ・キャッチ!」(TBSラジオ、2012年8月17日(金)15:30-17:50)の「ニュースランキング」で、社会学者の宮台真司が、竹島および尖閣諸島の領有権の国際法的根拠について解説していたと知り、チェックしてみた。
「荒川強啓 デイ・キャッチ!」(TBSラジオ、2012年8月17日(金)15:30-17:50)
最近、専ら国粋的情緒を自ら慰める目的で、一見法律っぽい話を仕立て上げることにご執心な人たちが多い。現状が如何にあるかという現実主義的な認識と、現状に納得いかない人たちのロマン主義的な願望は区別しなければならない。そして、ロマン主義的な政治家や外交官も、交渉の場では現実主義的な前提から出発せざるを得ない。
以下、事実確認のためのメモ。
要は、
竹島(Google Maps)
- 関連する条約など:ポツダム宣言(1945年)・サンフランシスコ講和条約(1951年)
- 交渉相手:アメリカ合衆国
- 領有権の現状:大韓民国(アメリカ地名委員会による決定)
尖閣諸島(Google Maps)
- 関連する条約など:日中共同声明(1972年)・鄧小平発言(大平正芳・鄧小平協定 1978年)・日中漁業協定(2000年発効)
- 交渉相手:中華人民共和国
- 領有権の現状:主権問題は棚上げ・日本による実効支配・共同開発
そして、竹島問題については町村信孝に、尖閣問題については前原誠司に、それぞれ外務大臣として問題があったということらしい。
まぁ、宮台が言っていることに間違いがないとも限らないので、そういう場合はぜひご教示を。
以下、肝の部分の文字起こし:
国際司法裁判所について
宮台真司 期待できる場合には条件が必要なんです。
それはねぇ、簡単に言えば、当事国両方がある種の合意をして手打をしたいと思っていることなんです。手打をしたいと思っているってことは、つまりね、当事者のどちらかが手打を言いだすと、譲ったと思われるとかね、あるいは自国民がそれで憤激するとかって言って、まぁ、要するに両手両足縛られちゃった状態になっている。それが第三者から言ってくれたら、その手打飲めるということがあるんですね。
というのは、今日の外交は「パブリック・ディプロマシー」(public diplomacy)って言いますけど、国民が政府を縛っちゃってるわけですよね。だから、例えばどちらかの国の政府が譲ると国民が憤激するなんてことが起こっちゃうので、そういう様な場合にはね、このICJ[International Court of Justice:国際司法裁判所]って言うんですけど、これはとてもですね効果があるし、今までもそのような紛争解決の仕方、たくさんあるんです。
竹島について
宮台真司 ところが、竹島については、このあいだ申し上げましたように、これ、ポツダム宣言問題で、この5年ぐらいはですね、実はアメリカが正式に——つまりアメリカの地名委員会がね——ここは韓国の領土であるっていうふうに決めたんですね。
宮台真司 問題はポツダム宣言の中身。このあいだも申し上げたように、結局、竹島はどこに帰属するかはアメリカが決める、まぁ、連合国側が決める、アメリカが中心になって決めるっていうふうになっちゃっていて、そのアメリカの意向が、従ってものすごく重要なことになっちゃってる。
とにかく韓国は、過去5年ぐらいだと、外交に勝利して——つまり、日本は、逆に言えば町村[信孝]さんが全く外交をやらなかったんですが——韓国は外交をやって[ジョージ W.]ブッシュと[コンドリーザ・]ライス、大統領と当時の国務長官に、地名委員会の上の方から地名委員会に「こう決定しろ」っていうふうに事実上の命令を下して、これを韓国のものだっていうふうにしちゃったんですね。この問題、このあいだ言いましたよね。
だから韓国はもう自信満々。手打をする必要がないって考えちゃってるわけ。だから、日本がこんなことを言っても全く無駄でしょうね。日本のやり方は全く無駄で、アメリカと交渉するしかないんですよ。
アメリカ国家地球空間情報局(NGA)サイト
"Liancourt Rocks"(竹島の英語名) の検索結果(2012年8月26日)
画像をクリックで拡大。"Country" の項目に "South Korea" と明記。日本語名・朝鮮語名で検索しても当然同じ結果。ちなみに、魚釣島は "Japan" と明記。
尖閣問題について
宮台真司 この尖閣の問題は、このあいだ申し上げましたように、日中共同声明と鄧小平宣言と日中漁業協定でもう扱いが決まってたんですね、"Agreements" っていうヤツですけど。解りやすく言えば、停船命令は……停船命令・停船要求をしないで退去を要求をして、それでも駄目な場合には停船させるけれどもその場合にも逮捕・起訴は使わないで拿捕・強制送還の図式を使うと。
えぇ、それを日本が一方的に破っちゃったんですね。
荒川強啓 前原[誠司]さんがね。
宮台真司 前原さんが破っちゃった。これは日本にとってものすごい不利益なのね、ものすごい不利益。だから、実は日本に対する、国民に対する説明責任が前原さんにあるんですよ。それを全然やってないわけ。
で、まぁ、それを日本人、国民はねぇ、歴史知らないからデタラメな反応をしちゃったんだけれど、今回はね、強制送還をすることによって「前回のような失敗はしません」っていうね、さすがに僕らが言ってたような、やっぱり長年の協定の図式っていうのにさすがに現政府も気が付いているらしく、これは中国政府に対して「事を荒立てないので、そちらさんも荒立てないでくださいね」。
つまりこれはね、実は一見不幸な事件が起こったんだけど、日本がここで強制送還図式っていうふうなカードを切って意思を示したことによってね、「元もとの協定のラインに戻りませんか?」っていうふうに、また日本から呼び掛けてる——まぁ、日本で自分で破ったから日本が呼びかけんのは当たり前なんだけど——「日本に有利な協定に戻りませんか?」と。
つまり、どういう協定か。主権問題は棚上げ、実効支配は日本、そして共同開発図式というやつですね。「これに戻りましょう」という、こういうシグナルになりました。はい。
※関連リンク
<国際司法裁判所>
○Accueil | Cour internationale de Justice(国際司法裁判所ウェブサイト、フランス語および英語(各国連公用語による概説あり))
○国際司法裁判所 国際連合の主要司法機関に関する質問と解答(国際連合広報センターウェブサイト)
<竹島問題>
○外務省: 竹島問題
※日本国外務省の公式見解。○ポツダム宣言(憲法条文・重要文書 | 日本国憲法の誕生)(国立国会図書館ウェブサイト内)
※ポツダム宣言全文。
竹島への言及はないが、「八、「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」とある。○中野文庫 - 対日講和条約 日本国との平和条約
※サンフランシスコ講和条約全文。
第二条(a)に「日本国は、朝鮮の独立を承認して、済洲島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」とある。竹島への言及はない。○U.S. Board on Geographic Names (BGN)(アメリカ地名委員会公式サイト、英語)
※"Foreign Names" の検索はアメリカ国家地球空間情報局(National Geospatial-Intelligence Agency: NGA)ウェブサイトで。竹島を検索すると "Country" の項目に "South Korea" と明記されている。<尖閣問題>
○外務省: 尖閣諸島の領有権についての基本見解
※日本国外務省の公式見解○日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明(外務省ウェブサイト)
※日中共同声明全文。
尖閣諸島への言及はない。主権・領土に関しては、「六 日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。」とある。○日本記者クラブ記者会見 未来に目を向けた友好関係を鄧小平中国副首相1978年10月25日(日本記者クラブウェブサイト、PDFファイル)
※鄧小平中華人民共和国副総理(当時)が「中日国交正常化の際も、双方はこの問題[尖閣諸島の帰属]に触れないということを約束しました。今回、中日平和友好条約を交渉した際もやはり同じく、この問題に触れないということで一致しました。」と発言(p.7)。○漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定(農林水産省ウェブサイト、PDFファイル)
※日中漁業協定(2000年発効)全文。
第七条に、日中漁業共同委員会決定に基づく「暫定措置水域」の規定と運用に関する記述。「暫定措置水域」における両国漁船の操業を認め、操業規制違反を発見した場合は「当該国民及び漁船の注意を喚起するとともに、当該他方の締約国に対し、その事実及び関連する状況を通報することができる。当該他方の締約国は、その通報を尊重して必要な措置を取った後、その結果を当該一方の締約国に通報する。」(第七条-3)とある。
ここからは、国際法門外漢の戯言。有益な情報は一切含まれていませんので、お急ぎの方は無視して下さい。自主トレみたいなもんです。
国際なんちゃら裁判所に領有権問題が持ち込まれた場合、現在有効な条約・協定・合意など(国際法的正当性)が重視されるのではないかと思うのだけれど、「歴史的に日本の領有権は明らか」みたいな話(歴史的正当性)は、どの程度取り合ってもらえるのだろうか?
国際法廷で国際法よりも国際法以外のものが重視されるとはとても思えない。国際司法裁判所が「既存の国際法の原則にとらわれることなく判決を言い渡すことができ」るのは「当事者の合意があるとき」という条件付きのようだ。
●裁判所が適用する法源は何ですか。
裁判所が適用する法源は裁判所規程第38条に次のように定められています。
- 一般又は特別の国際条約
- 国際慣習
- 文明国が認めた法の一般原則
- 過去の判決、およびもっとも優秀な国際法学者の学説また、当事者の合意があるときは、裁判所は「衡平および善」に基づいて、既存の国際法の原則にとらわれることなく判決を言い渡すことができます。
もし日本が勝負の場として国際司法裁判所を使うつもりで、現在有効な条約・協定・合意に照らして領有権を確認するのが目的ならば、「歴史的に日本の領有権は明らか」みたいな話はそもそも不要。国際法的正当性を立証すれば充分で、法廷で歴史的正当性を云々する必要はない。
それに、法廷に持ち込めば必ず勝てるとは限らない。この危険性を考慮していない人が驚くほど多い。例えば竹島の場合、「主権問題は棚上げ・韓国による実行支配・共同開発」みたいなオチにすらなりかねない(現状を鑑みると、これですらまだマシなほう)。韓国の挑発にシビレを切らせて今提訴するのは得策ではない。法廷で負けが確定したら、ひっくり返すのは至難の業。
「国際慣習」に照らしても、実効支配している側が有利と思われる。日本は、1954年以来約60年の実効支配をひっくり返すには、それ相応のネタを準備して事を構えないといけない。藪蛇に終ることもありうる。
ただ、歴史的正当性に照らして有効な条約・協定・合意の内容が有効か無効かを云々することはできるかもしれないけれど、それは、当事国同士の外交を通じて条約・協定・合意の内容を更新すればいい話。
そもそも、国際司法裁判所は、紛争の両当事者の合意があって初めて動き出す仕組だそうなので、平場で勝負を決める場としては使い勝手が悪そう。要は事前協議で合意点を決めておいて形式的に法廷に持ち込んで、その内容の国際法的正当性を法廷が担保するかたちで手打というのが現実的っぽい。この場合、訴訟というよりは調停みたいな感じ?
尖閣諸島は日本の実行支配下にあることが確認されているし、アメリカ地名委員会も日本の領土と決定しているのだから、とりあえずはガタガタ騒がなくていい。
竹島を取り返したければ、アメリカにロビイングするか、韓国と戦争して勝つしかない。それとも、ポツダム宣言受諾を破棄してアメリカともう1回戦争するとか。どれが現実的な手段かは明らか。
そもそも、実行支配されたら基本アウト。どかすのは大変。
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