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高橋竹山生誕100年記念番組 ラジオドキュメンタリー「故郷の空に」(RABラジオ、2010年)

○高橋竹山生誕100年記念番組 ラジオドキュメンタリー「故郷の空に」(RABラジオ、2010年)

 

新藤兼人[監督]『竹山ひとり旅』(1977年)

ご存知のことではありましょうが、2012年5月29日に映画監督の新藤兼人が亡くなった。享年100歳。

株式会社 近代映画協会

川崎市市民ミュージアムで新藤監督の業績を回顧する追悼企画が行われている。この情報、たぶん月本夏海さんのTwitterで知った。元もとは、生誕100年記念として企画されていたらしい。

2012年6月 | 映画上映 | 展示・上映・イベント | 川崎市市民ミュージアム

同監督の『竹山ひとり旅』(1977年)を大画面で観たいと思っていたので、行ってみた。


新藤兼人[監督]『竹山ひとり旅』(1977年)予告編
 

あわてて電車を下りたら、武蔵小杉じゃなくて武蔵小山だった。そのせいで上映開始に遅れそうになったけれど、なんとか間に合った。

公営ということもあり、大人600円と料金は安いけれど、シアターそのものは非常に立派。あの青いライトがカッコいいんだよなぁ。ちなみに、6月30日にこのブログが公開されているであろう頃には、『裸の島』(1960年)を観るために再び川崎にいると思う。


川崎市市民ミュージアム
左半分は水門がモチーフ?
 

前庭にはトーマス転炉(経済産業省近代化産業遺産
心臓みたいだ。
 

 

映像ホール入口
270人収容で、テアトル新宿池袋のシネマ・ロサより広い。
 

『竹山ひとり旅』は、津軽三味線奏者・初代高橋竹山の半生を林隆三が演ずる伝記映画。制作時現在の竹山も登場し演奏シーンもあるのだけれど、スクリーンに映し出されるのは、音楽家というよりも、人間・高橋竹山。よって、竹山を脱神格化する筆致なのだけれど、それがかえって竹山を崇高な存在に感じさせるから不思議だ。ときにユーモラスで、ときに荘厳。このバランスが絶妙。

観賞しながら、宮本常一網野義彦の著作、そして、山本おさむの漫画『Hey!!ブルースマン』(2003〜2004年)などを思い出した。

ちなみに、劇中で竹山は2回結婚するのだけれど、ひとり目の妻を演ずるのは島村佳江、ふたり目が倍賞美津子。「ズルいぞ!」と思った。

他にも、乙羽信子は言うに及ばず、殿山泰司・川谷拓三・絵沢萠子・小松方正・大泉滉・浦辺粂子など、豪華キャスト。

高橋竹山生誕100年記念番組 ラジオドキュメンタリー「故郷の空に」(RABラジオ、2010年)


高橋竹山生誕100年記念番組
ラジオドキュメンタリー「故郷の空に」
(RABラジオ、2010年)

 

高橋竹山生誕100年記念番組 ラジオドキュメンタリー「故郷の空に」(RABラジオ、2010年)は、第37回放送文化基金賞ラジオ部門本賞、平成22年度文化庁芸術祭大賞を受賞。CDが出ているので購入。購入当時 Amazon.co.jpでは売り切れていたので(現在は買えるようです)、『邦楽ジャーナル』の通販で購入。

純邦楽CDショップHOW

しばらく買ったままになっていたのだけれど、映画を観たこの機会にようやく聴取。

先に『竹山ひとり旅』を観ておいて彼の半生をある程度知っていたおかげで、『故郷の空に』が倍たのしめたと思う。

存命中の人物の半生を描く『竹山ひとり旅』と、没後に故人を偲ぶ『故郷の空に』とではトーンが違う。

また、『竹山ひとり旅』が新藤兼人による竹山とするならば、竹山自身の語りがふんだんに収録されている『故郷の空に』では一人称の竹山も感じることができる点も異なる。

番組の前半で流れる地元の民謡会の音源が素晴らしい。

竹山の語りと演奏、客席の和やかな熱気・歓声・笑い声。津軽三味線・津軽民謡は、究極的には津軽のものなのだと思い知った。

体調を崩し全ての公演をキャンセルしていた時期も続けていた地元の民謡会。竹山は生前、地元の民謡会では木戸銭を取るなと弟子たちに言付けていたとのこと。

最近は日本の伝統音楽を今風にアレンジしている奏者たちもいる。意欲は買うけれど、正直言って、フュージョンのいちリード楽器になってしまっている例が多いような気がする。

ローカルな芸の個別性が突き抜けたその先に、個別・普遍を止揚し得る演奏があるのだろうなぁと得心した。

公演スケジュールをカセット・テープに自身の肉声で吹き込んで記録していた話や、愛宕神社の話などは、今回初めて知った。

このドキュメンタリーのCDジャケット写真が、どうして太竿を構えた竹山でなく、横笛を吹く竹山なのだろうかと不思議に思っていたけれど、作品を聴き終ったらその意味が解ったような気がする。

私が高橋竹山を初めて知ったのは高校の頃。何かのきっかけで演奏の音源を聴いた。前の音を次の音が弾いてグイグイ押し出すような力強さが、理屈抜きでカッコよかった。

これは、津軽のハード・バップだ。


 

上野公園で見かけた津軽三味線奏者
輝&輝のおふたり。
 
Google

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コメント

こんにちは。
NHK第一若しくはラジオ日経で再放送を希望いたします。

投稿: 石崎亮史朗 | 2012年7月 8日 (日) 16時41分

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