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ラジオ・ドラマ『羆嵐』(TBSラジオ、1980年3月23日(日)20:00-22:00)

○ラジオ・ドラマ『羆嵐』(TBSラジオ、1980年3月23日(日)20:00-22:00)

 

「QIC」第808回(ウェブラジオFMC、2012年4月22日放送分)で、2012年4月20日に秋田八幡平クマ牧場で起きた事故を受けて、ラジオ・ドラマ『羆嵐』(TBSラジオ、1980年3月23日(日)20:00-22:00)が話題になっていた。

FMC/QIC
※上記サイトから「▼2012年4月22日放送分(第808回)」B枠をお聴きください。公開後3週間聴取可能。

久びさに『羆嵐』を聴き直してみた。

私はTBSラジオの50周年特番で再放送された時に初めて聴いた(2001年12月23日(日)24:00-26:00)。当時、家に録音機材がラジカセしかなかったのでカセット・テープに録って、今も大事に保存してある。


 

このラジオ・ドラマは、北海道・三毛別の開拓民がヒグマに襲われ7名の死者・3名の重傷者を出した三毛別羆事件(1915年/大正4年)に材を取った吉村昭の小説『羆嵐』(1977年)をドラマ化したもの。

時系列上現在に該る部分では笠智衆演ずる語り部が登場するものの、ナレイションがなく、俳優たちの演技と効果音だけで全てが表現されている。ナレイションがないことで醸成される臨場感と俳優による迫真の演技が凄まじい。

それもそのはず、制作陣は、脚本:倉本聰、音楽:山本直純、出演:高倉健・倍賞千恵子・笠智衆・寺田農・浜村純・北林谷栄などなど、映画並みのオール・スター・キャスト。

印象に残ったのは、ヒグマに連れ去られた阿部マユの遺体が発見され、区長と村人がそれを遠くから見ているシーン:

-何か包んでる。

-遺体だろうか?

-遺体だったらもっとでっけえ。遺品だろう。

この直後、運ばれて来た遺体を見た区長はこうつぶやく:

これだけか……。

原作の小説には、この区長と村人のやりとりはない。その代わり、「これだけか」という台詞の前に、遺体のどの部分がどれだけが残っているのかが具体的に説明されている。ラジオ・ドラマでは、原作にないやりとりを挿入することで、この部分をリスナーの想像に委ねる脚色になっている。

また、明景家で斉藤タケが襲われるシーンの迫力と、ある台詞から滲む無念さに、聴き続けることがためらわれて、思わず音量をちょっと下げたりしてしまう。序盤の一聴するとお色気にも取れる斉藤家のシーンが、ここで効いてくる。

Wikipediaで事件のあらましを割と詳しく知ることが出来るけれど、事前にストーリーを全て知っていても、聴取経験の価値が全く減ずることのない、ラジオ・ドラマの名作。


ラジオ・ドラマ『羆嵐』(TBSラジオ、1980年)
 

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