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備忘録:2011年(平成23年)日本民間放送連盟賞(ラジオ関連のみ抜粋)

○備忘録:2011年(平成23年)日本民間放送連盟賞(ラジオ関連のみ抜粋)

 

日本民間放送連盟賞/2011年(平成23年)入選・事績 - NAB LOCAL

日本民間放送連盟賞について

 日本民間放送連盟賞(連盟賞、英文名:NAB Awards)は、番組、CM、放送技術の向上と、放送活動のより一層の発展を図ることを目的に、日本民間放送連盟(民放連)が1953(昭和28)年に創設した賞です。民放連の会員である全国の民放各社から参加のあった番組・事績を対象に毎年1回実施し、優れた番組、優秀と認められた事績を顕彰しています。表彰は、毎年秋に開催する「民間放送全国大会(民放大会)」の式典席上で行います。
 このように長い歴史を持つ連盟賞ですが、平成18年に「青少年向けのテレビ番組」とラジオ・テレビ共通の「放送と公共性」の2種目を新設しました。このうち、「青少年向け番組」は、青少年への影響やメディアリテラシーの向上など、民放に対して求められている放送活動に照らして、新たな種目として設けたもので、現在、全国のテレビ各社で選定・放送している「青少年に見てもらいたい番組」を対象としています。また、「放送と公共性」は、放送の公共性を強く意識しながら民放各社で取り組んでいる企画や開発の事績に対して賞を贈ります。

※メモ:番組部門以外に、CM部門、放送技術部門、特別表彰(青少年向け番組・放送と公共性)も顕彰。番組部門もいくつかのカテゴリーに分類。ラジオに関しては、ラジオ報道番組・ラジオ教養番組・ラジオエンターテインメント番組・ラジオ生ワイド番組の4つに別れている。放送技術部門があるのも特徴的。民間放送全国大会で表彰。

ラジオ関連部分のみ抜粋&関連リンク貼付:

番組部門

ラジオ報道番組

ラジオ教養番組

ラジオエンターテインメント番組

ラジオ生ワイド番組

CM部門

ラジオCM 第1種(20秒以内)

  • 最優秀 <信越放送> 綿半ホームエイド ほぼ何でも揃います(20秒)
  • 優 秀 <文化放送> シー・アイ・シー クリーンドクター/パパうんち(20秒)
  • 優 秀 <文化放送> 白元 レンジでゆたぽん/夢で会いましょう(20秒)
  • 優 秀 <エフエム東京> 三越伊勢丹 新・銀座三越/銀座テラス篇(20秒)
  • 優 秀 <朝日放送> 長谷川工業 ノッテる(20秒)
  • 優 秀 <エフエム熊本> 車検のコバック 車検/ヤツが来る!!(20秒)
  • 優 秀 <エフエム沖縄> 沖縄県文化振興会 沖縄県公文書館/「いつか見た沖縄・Bタイプ」篇(20秒)

ラジオCM 第2種(21秒以上)

  • 最優秀 <エフエム東京> 味の素 言葉の成長(60秒)
    優 秀 <IBC岩手放送> 公共キャンペーン・スポット/ふるさとは負けない!八木澤商店(40秒)
  • 優 秀 <エフエム東京> 自社媒体PRスポット/ヒューマンコンシャス・コトバ銀行(60秒)
  • 優 秀 <J-WAVE> 統一キャンペーン・スポット/守ろう地球環境 母のたからもの(120秒)
  • 優 秀 <福井放送> 自社媒体PRスポット/あなたの心に 音でステキな風景を えがきたい(180秒)
  • 優 秀 <エフエム大阪> 大阪府電気自動車(EV)タクシー普及啓発事業 共同事業体 EVタクシー/「乗りたいもの」篇(60秒)
  • 優 秀 <山口放送> 公共キャンペーン・スポット/つなげよう思いやりの心(120秒)

特別表彰部門

  • 優 秀 <ラジオ福島> 災害ラジオとインターネット連動展開の記録(暫定版)

受賞作詳細:

番組部門

ラジオ報道番組

最優秀
<九州朝日放送> 濡れ衣〜看護師爪切り事件の真相〜

プロデューサー:大迫順平
ディレクター:西村香織
編集:長尾雪絵
録音:太田 正

2007年6月、北九州市の病院で認知症患者のお年寄りの足の爪をはいだとして、看護師が逮捕された。3年がかりで無罪を勝ち取るまでの看護師と家族の闘いを追いながら、事件の真相に迫った。取調べの可視化の議論があるなかでタイムリーな内容。関係者への多角的な取材と構成が見事であり、当時の過熱報道により「爪はぎ看護師」のイメージを定着させる一端を担ったマスコミの報道責任にも真摯に向き合っている。

優 秀
<山形放送> それぞれの「異国の丘」〜シベリア抑留者のいま〜

制作・構成:伊藤清隆
取材・編集:渡辺 寛
ナレーター:安藤 勲

今年5月、鶴岡市に本部を置く全国抑留者補償協議会(全抑協)が解散。その式で元抑留者たちが合唱した「異国の丘」は、作曲家、故・吉田正がシベリアの収容所で作った作品である。吉田 正の生涯をたどりながら、全抑協の活動と「祖国」の対応を振り返る。社内の貴重な音源を基に、戦後史の中でも省みられることが少なかった問題に光を当てた意義の大きな作品である。


竹山逸郎「異国の丘」(1948年)
 

優 秀
<ニッポン放送> ニッポン放送報道スペシャル 就職戦線「冬」の時代〜就活生が目指す「春」

プロデューサー:森田耕次
ディレクター:館野美欧
ナレーター:垣花 正
構成:桜林美佐

2011年春に大学卒業を控えた双子の兄弟を追い、就職活動の「いま」を考える。震災前に辛うじて内定を決めた弟と、決まらないまま卒業を迎える兄。新卒一括採用が主流の中で「既卒」の烙印を押される不安は大きい。兄弟とその母の葛藤を軸に、現在のリアルな雇用環境と、企業・大学・行政が抱える問題点を巧みにあぶり出していく。改善の動きや新たな試みも紹介し、兄が目標を取り戻し、職場体験を通じて正規雇用を目指す前向きな姿は希望を感じさせてくれる。

優 秀
<山梨放送> 明日へ〜自殺・4年連続ワーストの山梨より〜

プロデューサー:浅川俊介
ディレクター:依田 司
ナレーター:原 香緒里・土橋 諒

青木ヶ原樹海で自殺を試みた男性の手記をもとに、人口10万人あたりの自殺者数が4年連続全国ワーストワンの山梨県での自殺防止の取り組みを紹介し、自殺の現状を考える。健康・経済問題などの自殺の原因からボランティアや官民一体の取り組みなど、自殺防止に役立つ情報を丹念に取材し、相談できる連絡先も紹介し、自殺率ワースト県からの脱却を目指そうとする気概が感じられる。

優 秀
<福井放送> 共生の民 40年目の衝撃〜崩れた安全神話・若狭湾の憂い〜

プロデューサー:秋野範夫
ディレクター:町 雄介
ナレーター:岩本和弘
編集:藤田大樹

関西の電力の半分以上を供給する若狭湾沿岸の原発14基のうち、6基が敦賀半島に集中する。福島第一原発事故やエネルギー政策の行方を複雑な思いで見つめる住民の姿を追う。40年余り原発と共生してきた住民は、雇用・経済面の恩恵やエネルギー政策への貢献の自負を口にする。「脱原発」が叫ばれるなか、地元住民の声を丁寧に拾いあげ、問題の複雑さを浮き彫りにしている。

優 秀
<大阪放送> どうしてジャンケンできないの?〜人生を変えた大阪空襲〜

プロデューサー・ディレクター:和田麻実子

大阪空襲で被災し、火傷で手が開かない小宮山重吉さんは、「どうしてジャンケンできないの?」という幼い孫の一言で50年の沈黙を破り、自らの体験を語る決心をする。その半生を描いたミュージカルや被災者の証言を通じて、空襲の悲惨さを生々しく伝える。国に謝罪と補償を求める空襲訴訟の経緯や避難を禁じた当時の防空法の問題、「受忍論」の壁など、緻密な取材と構成で深く考えさせる作品に仕上がっている。

優 秀
<中国放送> 忘れんようにしんさいよ〜作曲家・川崎優が伝えるヒロシマ〜

プロデューサー:柏原清純
ディレクター:岡本 幸
出演者:川崎 優
ネレーター:和佐由紀子

国際的な作曲家・川崎優(まさる)さんは東京出身だが学徒動員で滞在した広島で被爆。被爆30年を機に作曲した「祈りの曲 第一『哀悼歌』」は、平和記念式典で毎年演奏される。川崎さんの「祈り」が託された調べと込められた思いを次代に繋ごうと、川崎さんの思い出したくない被爆体験や思いを新曲「祈りの曲 第六」の初演とともに記録した。「祈り」が込められた調べに圧倒され、記憶を次世代に引き継ぐ重要性を物語る。新しい切り口からヒロシマを捉えた力作である。

 

ラジオ教養番組

最優秀
<高知放送> うんとこしょ、どっこいしょ〜株式会社「大宮産業」奮闘記

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プロデューサー:竹下誠一・井津葉子
ディレクター:中嶋淳介
ナレーター:長谷川恵子

地域で唯一日用品やガソリンを販売していたJA出張所の廃止をきっかけに住民が出資して設立した株式会社「大宮産業」の5年目の1年間を追ったドキュメンタリー。「住民目線の店作り」がモットーの大宮産業の、お年寄りのための宅配サービスや住民の交流の場となる感謝祭、特産のコメをブランド化して地域の発展を目指す取り組みが丁寧に取材されている。テーマとなる限界集落のビジネスモデルが絶望的ではなく、高齢者が生き生きと描かれている。お年寄りの声などが丹念に入ってきて情景が浮かぶ。

優 秀
<IBC岩手放送> 空より高く〜被災地に届け!園児の歌声〜

プロデューサー:姉帯俊之
ディレクター:加藤久智
出演者:浪岡政行・浪岡幸子

東日本大震災発生から9日目、匿名で送られてきたカセットテープの保育園児の歌「空より高く」がラジオから流れると、終日災害報道を続ける放送局にリクエストが殺到した。番組はメイキングの形式で、この曲を作った人、園児に歌わせた人、電波に乗せた人、放送を通じてその歌を聴いた人、の声を集め、「生きる勇気と希望」を繋いでいった人々の絆を描く。匿名のテープが送られた地元局の地域に根差した営みが感じられる。

優 秀
<ニッポン放送> 片田敏孝のサンデー ズバリ!ラジオ

ディレクター:後藤 仁
パーソナリティー:片田敏孝
出演:森田耕次
構成:長谷川浩二

毎回各界のプロフェッショナルなパーソナリティのズバリ!トークで大人の時間を提供する番組。今回は、8年にわたり岩手県釜石市の「防災教育」に携わってきた群馬大学の片田教授を迎え、市内の小中学生の99.8%が助かるという成果をあげた防災教育の内容を検証し、これからの防災のありかたと、首都圏での今後の防災を探った。教養・役に立つという点で秀逸。1時間の語りはテレビでは難しく、ラジオならではの作品となっている。

優 秀
<横浜エフエム放送> 横浜洋琴物語

プロデューサー:神戸竜太
演出:今野悦夫
構成:松本耕一
ピアニスト:中村由利子

約100年前に横浜華僑の周さん親子が作ったピアノの数奇な運命をたどりながら、中華街の歴史を描写したドキュメンタリー。当時の中華街を描いた絵葉書にピアノの看板を見つけた調査員の話、周ピアノは家具のように装飾が施され家1軒買えるほど高価だったといったエピソードなど、関係者のインタビューを随所にはさみながら、関東大震災や第二次世界大戦時の中華街を描き出す。地域の歴史を伝えた、気品のある作品に仕上がっている。

優 秀
<福井放送> FBCラジオ特集 日本一短い手紙たち 一筆啓上賞 涙から明日(あす)へ…

プロデューサー:私市秀子
取材・編集・構成・ネレーター:重盛政史
リサーチ:越桐清司
解説:大廻政成

福井県坂井市丸岡町で「日本一短い手紙」を元に始まった一筆啓上賞。阪神淡路大震災のあった1995年の募集 テーマは「愛の手紙」、アメリカ同時多発テロの2001年は「いのち」、拉致被害者が帰国した2002年のテーマは「喜怒哀楽」。全国から4万通に上る応 募があった昨年18回目のテーマは「涙」。番組ではこれまでの主な作品を紹介しながら、「一筆啓上賞」が映した時代の記録を取り上げる。手紙自体がドラマ となっており感動をさそう。

優 秀
<京都放送> もし高校野球中継の中で京都のイケズを解説したら

プロデューサー:小川重和
ディレクター:岡 悠一郎
ナレーター・解説:松原タニシ
実況:森谷威夫

京都のイケズについて、敢えてイケズとほど遠い架空の高校野球中継の形式で探っていく。番組では、京都人の客 に対する「早く帰れ」のサインとして知られる「ぶぶ漬け」に加えて、「一子相伝」「一見さんお断り」「“おこしやす”と“おいでやす”」などの京都の言い 回しを手掛かりに、生粋の京都人の声を交えながら「イケズ」を紐解いていく。難解なお題を架空の高校野球中継の中で解説する演出で、楽しく聞ける。

優 秀
<宮崎放送> 戦艦大和沖縄特攻作戦〜護衛艦隊生存者の証言〜

ディレクター:紫安伸一
編集:小畑貴嗣
音声:平原秀明
ナレーター:関 知子

わずか2時間の戦闘で3700人が犠牲になったといわれる連合艦隊第二艦隊による沖縄水上特攻作戦。戦艦大和 の最期は手記や映画によって多く語られているが、この番組は大和を護衛する他の艦船の乗員たちの証言と手記から作戦の実像を描いた。証言者の数が年々減っ てきているなかで、生存者を発見し番組として取り上げていく姿勢はメディアにとって重要で、記録的な価値が高い作品である。

 

ラジオエンターテインメント番組

最優秀
<横浜エフエム放送> 開局25周年記念特別番組 ラジオドラマ「DAI」

プロデューサー:渡辺陽介・多喜井 徹
脚本・演出:青山鉄兵
出演:伊阪達也

2010年、FMヨコハマでADとして働く大輔が、FMヨコハマが開局した1985年にタイムスリップしてし まうラジオドラマ。毎日忙しくラジオの現場で働くことに自問自答を重ねていた彼であったが、開局当時の番組制作者やDJと触れ合ったり、死別した母のハガ キに出会ったりしながら、ラジオの原点、魅力を再認識していく。昔を懐かしむだけでなく、ラジオが持つ変わらない力を感じさせる。リスナーへの25年分の 感謝が溢れるラジオドラマである。

優 秀
<IBC岩手放送> 絆・いわて〜ふるさとは負けない〜これが岩手のシルバーパワー!

プロデューサー:帯 俊之
ディレクター:高橋典子
出演:神山浩樹・風見好栄

IBC岩手放送の2人のアナウンサーと地元の民謡歌手・中川あい子さんが集まり、それぞれが東日本大震災の被 災地で出会った元気で明るい3人のお年寄りたちを紹介しあう。震災に真正面から取り組んだ番組で、小手先の技法ではなく一人ひとりに話を聞く、という形で 作られている。ラジオから聞こえる「93歳だから93馬力!」などのお年寄りのたくましい肉声の数々が、被災地に元気を届けた。

優 秀
<ニッポン放送> ニッポン放送ホリデースペシャル「ラストイニング 全国高校野球 県予選決勝 聖母学苑 対 彩珠学院」

プロデューサー:伊藤了子
ディレクター:勝島康一
出演:煙山光紀・渡部 建

人気野球漫画「ラストイニング」のひとつのクライマックスともいえる埼玉県地区予選の決勝戦を架空実況したラジオドラマ。この作品の大ファンである煙山アナウンサーの芸術的な実況と、お笑いコンビ、アンジャッシュの渡部建の絶妙な解説によって、漫画の世界の選手たちによる一挙手一投足がいきいきと形になる。「負ければあとがない」という高校野球特有の緊張感に、リスナーは「試合」に引き込まれる。映像ではできないラジオならではの斬新な試みが成功している。

優 秀
<北陸放送> 浅川マキ〜ロング・グッドバイ〜

プロデューサー:園田 誠
ディレクター:川瀬裕子
技術:山崎正敬

寺山修司の世界を歌って演じるという新しい独特の世界観を作った浅川マキ。石川県出身の彼女のライブ音源が北陸放送に残っていた。彼女と親交のあった人物やプロデューサーへのインタビューなどを織り交ぜながら、その人生をたどる。よく練られた構成で浅川マキのエピソードを解りやすく伝えており、ラジオだからこそできた人物ドキュメンタリー。あらゆる世代のリスナーを浅川マキの世界へといざなう。


浅川マキ「かもめ」(1969年) 浅川マキ - シングル・コレクション - His Great Performances, 1953-1960
 

 

優 秀
<毎日放送> ラジオドラマ「罪と罰と人情と」

ディレクター:島 修一
脚本:三谷昌登
技術:亀田悠一

老親と子どもの間での介護の現場で起こった事件を裁こうとする裁判員裁判をテーマとしたラジオドラマ。関西ならではの騒々しく、ややこしい6人の裁判員の面々が繰り広げるコミカルな笑いの中から、「親子の情愛」や「社会が進んでも忘れてはいけないもの」を訴える。自分が7人目の裁判員になったかのようにドラマに引き込まれる。大阪弁の可能性を実現し、大阪人の個性の豊かさを表現している。

優 秀
<山陰放送> 中四国ライブネット「水の都 松江〜とっておきの秋の夜〜」

ディレクター:荒井由岐子
アナウンサー:板井文昭・大田祐樹・丸山聡美

松江城周辺の観光スポットなどに行灯の灯りをともし、水と光の幻想的な雰囲気の中で松江の風情を楽しむ毎年秋恒例の「松江水燈路」の模様を生中継で伝えた。堀川遊覧船の船上リポートや松江観光文化プロデューサーなどのゲストとのトーク、そして松江をこよなく愛した小泉八雲の作品を紹介しながら、観光文化都市松江の魅力を伝える。出演者による景観の描写が的確で、リスナーに松江の風情を感じさる。秋の夜長に優雅でゆったりとした時間が流れる。

優 秀
<九州朝日放送> ミヤリサン製薬presents 北方謙三 水滸伝

プロデューサー:石橋 聡
プロデューサー補:武藤礼治
チーフ・ディレクター:原田昌史
ディレクター:萩野谷 昇

人気作家・北方謙三によるヒット作品「水滸伝」を、「耳で聴く活劇小説」としてラジオドラマ化。大作を5年半かけて放送しようという長期企画。舞台は今から900年ほど昔、北宋末期の中国。重税と暴政で乱れ切った国を糺そうという志を持った人間味あふれる英雄たちの波乱万丈の生き様が、現代を生きるリスナーに人生のヒントを与える。優れた構成、表現力に加え、森 正明の音楽が物語の壮大なスケール感を力強く演出している。

 

ラジオ生ワイド番組

優 秀 <ラジオ福島> 夜をぶっとばせリクエストで120分

プロデューサー・ディレクター:菅野左千男
アナウンサー:大和田 新・菅原美智子

ナイターシーズンは月曜日/19時〜21時の放送。震災後は、2人のベテランアナウンサーが福島県の現状を取材やインタビューを交えて熱く語る内容で放送。この日は、福島の未来を担う子どもたちの教育の充実が急がれることをテーマに、校長が不在の県立相馬高校にスポットをあてた。2人の卒業生をゲストに迎え、高校の恩師や2人が進学した福島県立医科大学のOBの立谷市長も電話出演し、福島の将来を探った。地域の人々の真実をしっかり伝える地方局の意義とメディアの力のある番組である。

優 秀 <エフエム東京> シンクロノシティ〜東日本大震災報道特別番組

プロデューサー:平岡俊一
ディレクター:前田章太郎・東海林 靖
出演:堀内貴之

月〜木/16時〜18時45分の放送。東京に暮らす人々に実際に日々街頭でマイクを向け、考えや価値観を吸い 上げていく番組。3月14日のレギュラー放送枠と同日25時〜29時の特別放送枠の2パートからのダイジェスト。急遽駆けつけた渡辺貞夫さんのスタジオラ イブと、リスナーからのメッセージとリクエスト曲を全国に向けて放送した。震災に対して今自分たちにできることをしようという姿勢が伝わってくる。被災地 からのメッセージが印象的で、パーソナリティが素直な心情を心を込めて語っているのにも好感が持てる。

優 秀 <山梨放送> Talk魂765 GO!GO!イチ レッツ朝ごはん!

プロデューサー:浅川俊介
ディレクター:石川 治
パーソナリティー:櫻井和明・石河茉美

月〜金/13時〜16時24分の放送。トークテーマへのメッセージを募集し、リスナーとの「双方向」を意識し た昼ワイド。この日は栄養学の専門家をゲストに迎え、朝ごはんについて考えた。食べない人が増加傾向にある理由、朝ごはんの重要性についての解説、「ことわざ」に込められた朝ごはんの大切さの意味や、アイデアメニューの紹介と、トークが続く。番組内で何度もテーマトークが繰り返され、途中から聴いても分か るように構成されている。教養や情報、地域性が盛り込まれ、オチもつける、生ワイドの教科書的な番組である。

優 秀 <北日本放送> ご近所ラジオKNB

プロデューサー:松本芽久美
ディレクター:熊野智元
出演:鍋田恭子・荒瀬洋太

月〜金/12時30分〜16時の放送。今回は火曜日の企画である「飛び出せ!3D恭子さん」から。メインパー ソナリティの鍋田恭子がスタジオを飛び出し、この日は富山の港町、旧新湊にある「堀岡養殖漁業協同組合」からの中継。「天然魚あふれる町でなぜ養殖を?」 「なぜ富山では余り食べないトラフグを?」を聞いた。目先の新しい面白いテーマを掘り下げ、リスナーを「なるほど」としっかり納得させる。話し手の分担と バランス、番組の流れがともに良い。港の情景描写からは風景や活気が目に浮かぶようである。

優 秀 <FM802> HIRO T'S MORNING JAM

プロデューサー:平川英樹
ディレクター:ヒロ寺平

月〜金/6時〜11時の放送。リスナーの朝のライフスタイルに合わせて小刻みに緩急をつけながら、音楽と情報 を伝える。この日は全編を通じて東日本大震災を意識し、毎時間、震災関連のトピックを交えた。ハイライトは福島県いわき市在住のシンガー、菅波(すがな み)ひろみのパート。ヒロ寺平が心打たれた彼女の曲とメッセージを届けた。聴きやすい番組作りで、パーソナリティのコメントがメリハリをつけながらもさり げなく、安定感がある。この番組が日常になっているリスナーの多さが窺える。

優 秀 <高知放送> ラジオアイランド まる○しこく

プロデューサー:竹下誠一
ディレクター:中嶋淳介
出演:井津葉子・石田佳世

土曜日/13時〜16時の放送。「四国密着」をコンセプトに、四国4県の一週間の出来事やおすすめスポット、 話題の人物など、旬の情報を四国4県に向けて生放送する。この日は番組のコーナーの1つである「僕の自慢、私の自慢、ラジオキッズいらっしゃい」のスペ シャル版。これからラジオを聴いてほしい世代に向けて、スタジオから子どもたちの声を発信した。2人のアナウンサーが子どもたちを尊重しながら年齢にあわ せてキチンと分かりやすく話しているのが素晴らしく、子どもの心を開かせて自然に本音を語らせている。

優 秀 <琉球放送> ミュージックシャワー「ラジオがやってくる」スペシャル

プロデューサー:比嘉京子
ディレクター:相良 武・宜野座梨乃
パーソナリティー:狩俣倫太郎

月〜金/11時〜14時20分の放送。この日の番組は、民放連ラジオ委員会が主催する「ラジオがやってく る!」キャンペーンで、パーソナリティの狩俣アナウンサーが豊見城(とみぐすく)市の伊良波(いらは)小学校を訪問するスペシャル版。ミニ講座で放送局の 仕事を説明したり、子どもたちが「ラジオDJ」や「一芸披露」に挑戦した。子どもたちの熱気が伝わり無条件に楽しめる。「生」のよさと臨場感、ときには 「ぎこちなさ」がさらに面白みを醸し出している。

 

CM部門

ラジオCM 第1種(20秒以内)

最優秀 <信越放送> 綿半ホームエイド ほぼ何でも揃います(20秒)

プロデューサー:田中穂積
ディレクター:松田 隆(アンチテーゼ)

「パパとママをくっつける接着剤、言葉がキツイお姉ちゃんにあげるクッションはありますか?」と聞く子ども に、店員さんは「そ…それに近いものはございますが」と戸惑いながら答える。締めくくりの「“ほぼ”何でも揃う綿半ホームエイド」というナレーションが、 広告主に親近感を抱かせ、思わずお店に行ってみたくなるような気にさせてくれる。CMのコピーは、信越放送が今年春に実施したコピーライターコンクールで グランプリを受賞したもの。

優 秀 <文化放送> シー・アイ・シー クリーンドクター/パパうんち(20秒)

ディレクター:見目幸伸
ミキサー:上原裕司
企画:白石仁司
プランナー:高橋知之

「パパー、うんち、うんち!」という子どもの声に、「そこらへんでしちゃいな!」とお父さんが答える。「ほら、そこのお皿にしちゃいな。パパもこのお鍋にするから」と過激になっていく親子の会話に驚かされ、心配になってしまう。映像がないラジオならではの演出だが、実は害虫の親子の会話。「害虫に家中をトイレにされる前に」というナレーションが強いインパクトを与えて、害虫駆除サービスの必要性を上手に訴えるCMである。

優 秀 <文化放送> 白元 レンジでゆたぽん/夢で会いましょう(20秒)

プロデューサー:辰巳知之(白元)
ディレクター:見目幸伸
ミキサー:上原裕司
企画:矢代えり

チーンという鐘の音とともに、おばあさんが仏壇にゆっくりと話しかけている。「おじいさん、長生きするもんですね。湯たんぽが、“ゆたぽん”になったんですよ」と、電子レンジで温める湯たんぽがあることを報告する。今度は、電子レンジのチーンという音がして、「温まったんでもう寝ますね。夢でまた会いましょう」と話しかける。心が温まる夫婦の情愛を伝えながら、簡単で便利という商品の魅力をさりげなくアピールしている。

優 秀 <エフエム東京> 三越伊勢丹 新・銀座三越/銀座テラス篇(20秒)

プロデューサー:山口景子
コピー:シラスアキコ(Color)
ミキサー:越川博雅(エフエムサウンズ)
出演:坪井香百里(三越伊勢丹)

館内放送で使われる三越オリジナルの印象的なチャイムに続いて、「お客様のお呼び出しを申し上げます。地上 31メートルの『銀座テラス』で、お友達が星空を眺めながらお待ちです」とのナレーションが流れる。リニューアルした銀座三越を実感してもらおうと、ナレーションを、実際の館内案内の社員が担当した。夢のあるコピーと三越のブランドイメージがあいまって、上品な雰囲気を醸し出す優れた作品である。

優 秀 <朝日放送> 長谷川工業 ノッテる(20秒)

プロデューサー:野本友恵
プランナー:立石紀雄
ディレクター:村上正道(ビー・ジー・エム・サービス)
コピーライター:稲見周平(フリー)

ノリノリのコンサート会場で若い女性アイドルが「みんな何に、ノッテる〜!?」と観客に問いかけると、熱狂的な男性ファンが「キャッタツ〜!(脚立〜!)」と応じる。「どこのにノッテる〜!?」というと、「ハッセガワ」と答える。若手職人をターゲットに、テンポの良いやりとりのなかで、商品と広告主名を巧みにアピールする楽しいCMである。「ノッテる」を脚立に「乗ってる」にひっかけている演出も絶妙。

優 秀 <エフエム熊本> 車検のコバック 車検/ヤツが来る!!(20秒)

プロデューサー:伊佐坂功親
ディレクター:富岡弘展
録音:松下和浩(U2)
コピー:岡田 上(フリー)

恐怖をあおるような音楽と効果音を背景に、「あなた、ヤツが来るわ!」と声を震わせる妻。「ヤツって、まさか!」と応じる夫。最高潮に達した音楽のあと、「2年ごとにやって来る」とのナレーション。ヤツとは実は車検のことで、最後は一転して夫婦揃って「コバックね〜‼」と楽しげな声が響く。ドラマチックな演出で、定期的にやってくる車検を恐怖で表現したラジオらしいCMである。

優 秀 <エフエム沖縄> 沖縄県文化振興会 沖縄県公文書館/「いつか見た沖縄・Bタイプ」篇(20秒)

プロデューサー:・ディレクター・コピー:大田 判
ナレーター:多喜ひろみ 

1972年の沖縄本土復帰を記念して、沖縄特別国民体育大会(若夏国体)が復帰翌年に開催された。県民代表の子どもによる「若夏国体 歓迎のことば」を、公文書館に保存されている記録映画から抜き出してCMに使用した。ハキハキとした子どもの声が、沖縄復帰当時の“熱気”をリスナーにイ メージさせる。沖縄県公文書館に貴重な映像や音声が収蔵されていることを的確に伝える「いつか見た沖縄がここにある」というコピーが秀逸である。

 

ラジオCM  第2種(21秒以上)

最優秀 <エフエム東京> 味の素 言葉の成長(60秒)

出演:森山泰地(ごたごた荘保育園)・田町イルファン(同)・高橋かな(同)・宮田ゆう(同)

赤ちゃんがいち早く覚える言葉は、食べ物に関するものが多いという。にゅーにゅー(牛乳)、ぶどっこぢー(ブロッコリー)、にゃいよねーじーー(マヨネーズ)……。たどたどしくてもお母さんにはちゃんと伝わる、そんな“言葉”を拾い集める。食べることの楽しさをあらためて伝えるとともに、子どもを育てるお母さんたちへの応援歌にもなっている。丹念な取材で、心温まるCMを作り出したことが高く評価された。さらに、食生活を応援したいという企業の姿勢を伝えることに成功している。

優 秀 <IBC岩手放送> 公共キャンペーン・スポット/ふるさとは負けない!八木澤商店(40秒)

プロデューサー:姉帯俊之
ディレクター:江幡平三郎
出演:河野和義(八木澤商店)
MIX・編集:佐藤正昭(スリーエス)

八木澤商店の河野和義会長が、復興への思いを熱く訴えかける。同社は、本社を陸前高田市に置く、1807(文化4)年創業の老舗しょうゆ醸造会社。「自宅も会社もすべて流されました。しかし社員という大事な宝が残っておりますし、200年前からの酵母菌も見つかりました。ですから必ず復活いたします」と、力強く語る。被災者のみならず、リスナーすべてを奮い立たせてくれるパワーを持った作品である。

優  秀 <エフエム東京> 自社媒体PRスポット/ヒューマンコンシャス・コトバ銀行(60秒)

プロデューサー:林屋創一
ディレクター:中山佐知子(ランダムハウス)
クリエイディブディレクター:小松洋支(電通)
コピー:薄 景子(電通)

“コトバ”を預かるという架空の銀行が舞台。普段、妻への感謝の言葉をかけそびれている男性が、“コトバ”を引き出しにやってくる。「お誕生日おめでとう」は10年分預けっぱなし、「きのうはすまない」は23年分、「味噌汁うまかった」に至っては、30年満期で利息まで付いている。男性は意を決して“コトバ”を引き出し、妻へ伝えるのだった。あり得ない設定でありながら、「さて自分はどうだろうか」と考えさせる演出が光る。

優  秀 <J-WAVE> 統一キャンペーン・スポット/守ろう地球環境 母のたからもの(120秒)

プロデューサー:大谷恭代
ディレクター:大塚和広(フリー)
出演:桑名 忍(豪勢堂)
録音技術:宮越匡史(セラ)

久しぶりに実家に帰り、母親の遺したものを整理している女性が主人公。母が最後まで捨てられなかったものの中に、自分が5歳の頃はいていたスカートを見つける。破れたスカートを、母は愛情を込めて、何度も直してくれた。そんな母の優しさがつまったスカートを見ながら、溢れるモノで囲まれる、自分の“いま”を見つめ直す。自然体の語りが魅力的で、じっくり聴かせるキャンペーン・スポットに仕上がっている。

優  秀 <福井放送> 自社媒体PRスポット/あなたの心に 音でステキな風景をえがきたい(180秒)

プロデューサー:重盛政史
ディレクター・企画・構成・録音:岩本和弘
出演:小牧紀子

福井県坂井市の鳴鹿(なるか)児童クラブで指導員を務める小牧紀子さんは、身の回りのモノで作った「楽器」で、子どもたちを楽しませている。登場する「楽器」は、ビーズを付けたうちわ(雨の音)、大豆を入れた風船(雷鳴)、小石を入れた筒(川の流れる音)、お米とざる(波の音)。材料からは思いもよらないリアルな音色でリスナーを楽しませるとともに、自由に想像をめぐらせることのできるラジオの魅力を、自然な形で伝えている。

優  秀 <エフエム大阪> 大阪府電気自動車(EV)タクシー普及啓発事業 共同事業体 EVタクシー/「乗りたいもの」篇(60秒)

プロデューサー:小田切武史・大久保佳昭(ビッグフェイス)
コピー:森田一成(ビッグフェイス)
出演:内田法子(NAC)

おかんと娘の会話でCMは進む。EVタクシーに“乗りたい”というおかんに、「はぁ?なにそれ?」と娘。そこでおかんは、電気自動車(EV)を使ったタクシーのことであると教え、「EVタクシーは、エコやねんで、CO2削減や」と言うのだが、その前に体重計に“乗りなさい”と、娘に切り返されてしまう。よくある掛け合いとみせかけて、50台のEVタクシーが大阪府を走るという普及啓発事業の内容を、楽しく紹介している。

優  秀 <山口放送> 公共キャンペーン・スポット/つなげよう思いやりの心(120秒)

プロデューサー:藤田史博
ディレクター:大谷陽子
ナレーター:瀬川よしみ(フリー)
ミキサー:寺岡岳男

老人ホームと中学校との交流事業で知り合った森川正千代さんと伊本陽子さんは、出会いから12年が経った今も、交流を続けている。「寂しい気持ちを和ませる存在でいられるのであれば、嬉しい」と話すのは当時中学生だった伊本さん。91歳になった森川さんは「こんなに考えてくれるんだと思ったら、泣けてくるんですよ。幸せになってもらいたい、それだけを思うんです」と語る。“人を思う気持ち”が、飾りのない言葉で表現されており、心に響く作品となった。

 

特別表彰部門

放送と公共性

優 秀 <ラジオ福島> 災害ラジオとインターネット連動展開の記録(暫定版)

実施責任者:大和田 新

3月11日14時46分、生ワイド番組の放送中に東日本大震災が発生。直後から全番組、全CMを休止し、3月26日5時までの全時間、報道特番を生放送した。震災発生当日から、ツイッターで災害情報を発信するとともに、リスナーから災害情報を募集するためのメールアカウントを作成し、放送とインターネットの連動型災害放送を開始した。3月14日はユーストリームで音声配信を開始、翌15日からラジオNIKKEIに番組を配信し、radikoを通して全国向けに福島の情報を発信した。新たなメディアを使った災害時の情報収集・告知の形を具体的に示し、今後の発展が期待できる事績として評価された。

 
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