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つげ義春「ねじ式」(1968年)の生原稿を見てきた:「石子順造的世界——美術発・マンガ経由・キッチュ行」(府中市美術館、2011年12月10日(土)〜2012年2月26日(日))

○つげ義春「ねじ式」(1968年)の生原稿を見てきた:「石子順造的世界——美術発・マンガ経由・キッチュ行」(府中市美術館、2011年12月10日(土)〜2012年2月26日(日))

※会期の誤記を修正(2012年3月4日)

 

「荒川強啓 デイ・キャッチ!」(TBSラジオ、2012年2月9日(木)15:30-17:50)のポッドキャストで山田五郎が府中市美術館の「石子順造的世界——美術発・マンガ経由・キッチュ行」(2011年12月10日(土)〜2012年2月26日(日))について言及している回を先日聴いた:

2012年02月09日(木)(TBS RADIO 954kHz | 荒川強啓 デイ・キャッチ!)
※上掲サイトから「デイキャッチャーズ・ボイス 石子順造的・世界観を楽しめ! 山田 五郎」をお聴きください。

石子順造的世界 美術発・マンガ経由・キッチュ行 府中市美術館 府中市ホームページ

山田五郎は西洋美術史の人だと思っていたけれど、卒論のテーマは「戦後日本における野球マンガの様式史的発展」だったとかで、その際、石子順造『戦後マンガ史ノート』(紀伊国屋新書、1975年)を大いに参考にしたとのこと。

私は石子順造(1929-1977)については何も知らず、このポッドキャストで初めて知ったも同然。サブカルチャーにカラッキシ疎いのであります。

ただ、石子が高く評価したつげ義春「ねじ式」(1968年)の生原稿が展示されているというのでガゼン興味を持ち、滑り込みセーフの最終日に見てきた。



 

開館前に着いてしまったので、しばらく近辺を散策して戻ると、入口にすでに10人弱が並んでいた。最終日かつ日曜日ということもあるのだろうけれど、その後もけっこう人が来ていた。

展覧会のサブタイトルが示す通り、美術・マンガ・キッチュという三部構成。

美術のコーナーでは、横尾忠則の作品、赤瀬川原平の「模型千円札」、トリック・アートなどを展示。小池一誠『自画像』(1966年)が印象に残った。電車の窓枠の中に、窓の外の風景と窓に映り込んだ小池が描かれている。観賞している自分も窓に映り込み、作品の外にいる自分が、作品の中にいる自分を作品と一緒に見る。

マンガのコーナーでは、石子が高く評価した作家のマンガが天上からワイヤーで吊るされていて自由に読むことができたり、SHARP製の赤い14型ダイヤル式ブラウン管テレビで林静一による非商業アニメ2本を上映したりしてした。原爆をモチーフにしたアニメ『かげ』(1968年)では、BGMのザ・ピーナッツ「恋のロンド」(1968年)が原爆投下とともに不意に途切れる。2011年3月11日を経た現在、このアニメを観ると、1945年、1968年、現在2012年が作品のまわりで錯綜し、原爆によって日常が断ち切られたように見えると同時に、原爆によって日常に引き戻されるようにも感じられてしまう。


ザ・ピーナッツ「恋のロンド」(1968年)
もう、この歌が頭にこびりついてこびりついて。
他の展示を見ていても、遠くで薄く聴こえたりする。

 

そして、それとは別の部屋に「ねじ式」の生原稿の全ページが順番に展示されていて、全編を読み通すことができた。山田五郎が言うように、至る所にセロテープ痕があり、保存状態が良いとは言えないが、それも含めて面白かった。背景が色鉛筆で乱雑に彩色されている部分や、山田五郎が言うように主人公の絵が背景の上に切り貼りされているところがあったりするのも判った。

基本的に館内は撮影禁止なのだけれど、キッチュの展示については撮影可という案内が貼ってあった。ここだけ妙に照明が明るく、キッチュさが強調されていた。でも、撮影している人は不思議とおらず、私も撮らなかった。みうらじゅんのカスハガとかムカ絵馬とかエロスクラップとか、実は石子の影響なのではないかと思ったりもした。

展示物だけでなく、石子の論文や著作から引いたと思しき言葉が壁に掲示してあり、それらがいちいち面白く、スッカリ石子順造に興味をもってしまった。

そして、山田五郎が「この図録買うためだけに行っても損はない」と言っていた図録もしっかりゲット。26.7cmx18.6cm、304ページ、¥2,000+税。ミュージアム・ショップでは¥2,000ちょうどだった。充実の内容、あり得ない値段。Amazon.co.jpでも売っていた


噂の図録
 

テープ痕、青林堂の原稿用紙(図録より)
 

この企画展のほかに常設展もあり、そこの入口で見た植竹邦良『最終虚無僧』(1974年)が妙に印象に残った。サイバーパンク虚無僧みたいな感じの絵。グラハム・ベイカー[監督]『ベオウルフ』Beowulf(1998年)を想い出した……そんな映画、誰も見てないか?


『ベオウルフ』Beowulf(1998年)より
「最終虚無僧」は、これの虚無僧版みたいな感じでした。
 
Google

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