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「ホモソーシャル」とは何か。

○「ホモソーシャル」とは何か。

 

今回は「ホモソーシャル」(homosocial)という概念の話です。「ラジオ批評ブログ」なのに、ラジオとは必ずしも関係ない話ですみません。

「ホモソーシャル」という概念は、ライムスター宇多丸のラジオの映画評で比較的よく登場するような気がします。やおい評論にこの概念を援用する人もいるようです。

ただ、ココを見ると、元ネタの本にトライして挫折した人が多いようです(「やおいの本だと思ったら、英文学の専門書だった!」)。

ハード・ディスクの整理をしていたら、数年前に書いた文章が出てきたので、それを改稿・再編集して下記に公開します。

「ホモソーシャル」って、誰が言い始めたの?

アメリカの文学者でジェンダー研究家のイヴ・K・セジウィック(Eve Kosofsky Sedgwick 1950-2009)が提唱しました。

著書 Between Men: English Literature and Male Homosocial Desire, (Columbia University Press, 1985) でその詳細を知ることが出来ます。

邦訳は上原早苗/亀澤美由紀[訳]『男同士の絆──イギリス文学とホモソーシャルな欲望』(名古屋大学出版会、2001年)です。

ぶっちゃけ、「ホモソーシャル」って何?

同性愛嫌悪(ホモフォビア homophobia)と女性嫌悪(ミソジニー misogyny)によって男同士のホモセクシュアルな欲望を抑制することで維持される男同士の連帯を、ホモソーシャルな関係といいます。

ひとまずは、「ホモセクシュアル=男同士の性的欲望」「ホモソーシャル=男同士の非性的連帯」と考えれば、厳密な定義ではないものの、理解の補助線になるかもしれません。ただ、これで終らせると、背後にある権力の作用が見落とされしまいます。

もっと詳しく言うと?

近代社会は、男同士の連帯により支えられてきた男社会でありました。

男同士の連帯は、実のところ、男同士のホモセクシュアルな欲望と切れ目のない連続体を成しています。従って、本来なら両者のあいだを自由に行き来することが可能であり、近代以前は、男が男の欲望の対象となることはしばしばありました。つまり、友達もいればホモ達もいて、場合によっては友達がホモ達にも成りえる状態でした。

しかし、男同士のホモセクシュアルな欲望が恒常化・顕在化すると、男同士の連帯に基づく規範・秩序は、安定性を失ってしまいます。

この点が主要な(そしてベタな)モチーフになっている日本映画、大島渚[監督]『御法度』(1999年)を想起すると解りやすいでしょう。

新撰組という男同士によって組織されている武闘集団に美少年剣士が加入したことをきっかけに、それまでホモソーシャルに維持されていた集団の規律がホモセクシュアルに融解し、組織が機能不全に陥ります。

こういった秩序崩壊の危険性を回避するため、第三の項としての女性の存在が重要となってきます。女性が男の嫌悪の対象になると同時に欲望の対象となることで、男同士の連帯が醸成されると同時に、男が男の欲望の対象となることが回避されます。

異性愛がデフォルトになることで、同性愛はマイノリティー化し、抑圧・排除の対象として社会の周縁へと追いやられます。オスカー・ワイルドがロンドンにいられなくなり、パリへ渡ることとなったことを想起すると解りやすいかもしれません。

また、女性が欲望の対象として交換・共有されることで、男がホモセクシュアルな欲望の対象へと転化することが阻止され、男同士の連帯が維持・強化されます。いわゆる「従軍慰安婦」や基地周辺における風俗街の存在は、軍隊が男同士の連帯に依拠する集団の最たるものであることと関係します。

ここでいう、欲望の対象としての女性の交換・共有には、性行為の場面における具体的な交換・共有(意味、解りますよね)ばかりではなく、結婚や家族に関わる抽象的で制度的な交換・共有も含まれます。そして、女性が交換物・共有物と位置付けられる男社会においては、女性は蔑視され、低い社会的地位に甘んじされられます。

* * *

ちなみに、映画『ハングオーバー!——消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』The Hangover (2009年)においては、主人公のひとりの結婚を契機にホモソーシャリティーが顕在化します。

男同士の物語であるブロマンス(bromance=brothers+romance)映画のストーリーも、女性の媒介なしには成立し得ないのです。単に男同士がキャッキャキャッキャじゃれ合っているという現象があるだけではなく、ホモソーシャリティーを醸成するシステムが存在しているのです。


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コメント

いつも興味深く拝見しています。
本年も、よろしくお願いいたします。

投稿: 石﨑亮史朗 | 2012年1月 5日 (木) 17時28分

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