月曜JUNK「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ、2012年1月23日(月)25:00-27:00)
○月曜JUNK「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ、2012年1月23日(月)25:00-27:00)
伊集院光が、第146回芥川賞の記者会見における田中慎弥の話をしていた。「なんかすげ〜イヤ」で「気持ち悪い」のだとか。
田中慎弥の発言がイヤなのではなく、むしろシンパシーを感じるとのこと。「気持ち悪い」のは、メディアによる取り上げ方のほう。
田中慎弥が発した批判めいた発言を慎太郎にチクって何かキナ臭いことを言わせようとけしかけたり、田中慎弥の発言の真意を陳腐で解りやすい型に落とし込もうする予定調和な感じがイヤなんだとか。
そんなこと言われたら気になるので、当該記者会見のノーカット版を見てみた:
芥川賞 田中慎弥記者会見(ANNニュース、2012年1月18日)
記者会見という特殊な状況なので何とも言えないけれど、感じは良くないが善人そうな人ではある。バカとヤンキー以外の男子だったら、我が身を振り返ると、たぶんあの感じに心当たりがある、アイタタタ。オレもあんな感じだったなぁ……今も根はあんな感じだけど、普通の社会人には得がないので言動には移さない。
それはさておき、記者会見で全然作品の話しないのね。受賞作を書いた本人がそこにいるのに、小説書くほど言いたいことのある人なのに、せっかくのチャンスをどうして活かさないのだろうか。新聞の学芸部はひとりも来てないのかよ。
他方、石原慎太郎は芥川賞の選考委員を辞任する意向らしい。純文学ファンには朗報。
石原都知事 芥川賞の選考委員辞任の意向
(ANNニュース、2012年1月18日)
もうあれ辞める、あれは。[……]いつかね、若い連中が出てきてね、足すくわれるみたいな戦慄を期待したけどね、全然刺激にならないからね。[……]自分の人生を反映したリアリティーがないね。つまり心身性、心と体、心身、そういったもののね、何と言うかな……心身性が感じられないね。
石原慎太郎(2012年1月18日)
いかにも実存主義者らしい発言。
だけれどむしろ、心身性に拘束されているにもかかわらず心身性が実感できない人生、リアリティーはないけれどリアルとしか言いようのない人生における葛藤や疎外こそが、現代文学の主要な関心事のひとつなのでは。
こういうのをエレガントに書いていくと円城塔の一連の作品みたいなものになっていくんだと思う。
他方、田中慎弥『共喰い』(集英社、2012年)はその点において直球で、セックス・暴力・家父長制・身体性の権化みたいな父と暮らしながら、自分はそういう人生を生きられない主人公の話。
田中慎弥が受賞し、石原慎太郎が去るという現実とパラレルになっているのも面白い。
実際に読んでみたけれど、けっこう面白かった。映画『ヒミズ』(2012年)を観たばかりの人は既視感をもって読むことになると思う。これにつげ義春の自伝的作品のテイストを足したような感じ。10万部に達したらしい。
○田中慎弥さん「共喰い」発売は10万部 芥川賞受賞作:日本経済新聞(2012/1/27 10:20)
田中慎弥の発言。
もし断ったって聞いて、気の小さい選考委員が倒れたりなんかしたら都政が混乱しますんで、都知事閣下と東京都民各位のために[芥川賞を]もらっといてやる。
田中慎弥(2012年1月18日)
これに対して石原慎太郎は、
いいじゃない、皮肉っぽくて。オレはむしろ彼の作品を評価したんだけどね。
石原慎太郎(2012年1月18日)
慎太郎の思想や行動にはほぼ共感できないが、悔しいけれど人間としては完全に格上。西部邁にも同じものを感じる。
この目の上のタンコブ感、それ自体が文学的なテーマ。そして、苛立ちながらの「父殺し」、これが若手表現者の駆動力になるのです。
ともあれ、次号の『文藝春秋』が愉しみ。
※伊集院の発言は下記に詳しい:
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