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立川談志x伊集院光:伊集院光のUP'S 深夜の馬鹿力(TBSラジオ、1998年12月14日(月)25:00-27:00)

立川談志x伊集院光:「伊集院光のUP'S 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ、1998年12月14日(月)25:00-27:00)

 

ふだんスポーツ新聞は買わないのだけれど、電車の中でオッサンが読んでいるのを見て、オレも欲しくなって買ってしまった。やったね、スポーツ報知:


「談志が死んだ」
いい見出し、いい写真。
 

立川談志死去を受けて、「伊集院光のUP'S 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ、1998年12月14日(月)25:00-27:00)に談志が出演した回がネットで話題になっているらしい。この回はけっこう鮮明に憶えている。伊集院の『のはなし』(宝島社、2007年)にも出てくる話だけれど、細部が若干ちがう。

この頃はラジオ付きICレコーダーがまだなかったので、VHSテープに音だけ録って聴いてたなぁ。


「伊集院光のUP'S 深夜の馬鹿力」
(TBSラジオ、1998年12月14日(月)25:00-27:00)

 

「誰だコイツ?」と言わんばかりの沈黙で始まる。談志は、作家の伊集院静との対談と思っていたのだとか。

まずは伊集院が、若き日の談志による「雛鍔」のテープを聴いて落語家への途を諦めたと自己紹介すると、談志は、

談志 どうも聞いててウソくせぇなぁ。

伊集院 ホントなんですよ。

談志 辞めるきっかけを待ってるみたいな気がするなぁ。

こんな感じで始まったけれど、談志もナンダカンダで途中からはうれしそうにしゃべってた。

「談志・円鏡 歌謡合戦」(ニッポン放送)

「雛鍔」同様、若き伊集院にインパクトを与えたという、立川談志と月の家圓鏡(現・橘家圓蔵)のラジオ番組「談志・円鏡 歌謡合戦」(ニッポン放送、放送期間・曜日・時間未詳)に話がおよんだ。伊集院曰く「脳が直接何かを噴射しるみたいなラジオ」と落語との関係が談志の口から語られる:

伊集院 落語の談志師匠、さっき言った「雛鍔」があるとするならば、もうひとつ[六代目三遊亭圓楽]師匠の家でテープで「談志・円鏡 歌謡大合戦」のテープを聞くんですよ。

談志 そこ行くまでにねぇ、漫談で笑わして、それでまぁ、落語で締めちゃえと——まぁバッと分けちゃえばね——そういう部分があって、日劇でやってて、大きな劇場でたくさんの数を笑わせて、寄席へ来て各寄席は違う落語やって。まぁ、両方できるんだということですけどねぇ。

それが、「談志・円鏡 歌謡合戦」みたいな、あれ別のもんだと思てったんですよ、オレはね。

伊集院 僕も聴いてる限りは、別のもんだと思うんですよ。

談志 別じゃなったんですよ。

伊集院 違うんですか?

談志 あれがホントなんですよ。

「談志・円鏡 歌謡合戦」と落語:理論編

続いて、談志は「談志・円鏡 歌謡合戦」の理論的な背景を語る。ピュシス(フィシス)とノモス(φύσις / νόμος)みたいな話でもあり、ジャック・ラカン(Jacque Lacan)っぽい感じの話でもあり:

談志 生まれてきて幼い頃っていうのは、鳥も熊も蟻も一緒みたいに描きますワねぇ。

伊集院 お父さんでもお母さんでも変んねぇんだよ全然、えぇ。

談志 そのまんまでは困るからって分けさせますわなぁ、ずっとそれが二十歳まで[この部分は聴き取れず]エラい目に会うから。それを「正常」と言ってますよねぇ。

だから、壊れてきた時に、その「正常」のパワーがなくなった時に「ボケる」と言ってますよね。本来こっちがホントであって、この無理してる「常識」とか「学習」っていうのは無理だっていうのが基本にありますから。

[……]

談志 もっと言うと、物理も三次元も四次元もあるもんか、何だ、生まれたまんまみたいな姿が本当で、それが残ってるから夢でバランスを取るだろうっていう意見。夢だとか***だとか、またはマジックだとかっていう非条理なものみたいなのを見て、もちろん「あれはマジックだ」と言ってるけど、どっかでそこに入りたいわけですから、それを言葉のイリュージョンでやってるわけですから。

[……]

伊集院 そういう意味では、落語は原形をとどめてるシュールであって、「談志・円鏡 歌謡大合戦」は、もう、徹底的に脳の反応みたいなものであって——

談志 そうそうそうそう。

伊集院 直接信号を送り込んでるみたいなもんで。

「談志・円鏡 歌謡合戦」と落語:技法編

続いて、「談志・円鏡 歌謡合戦」の技法的な背景を談志はこう語る:

談志 タネ明しすると、お互いに「テーマはオレが決めるから」というのはあるんですよねぇ。

[……]

「発表できなかった記事」なんていうと、それは割と解りやすいんですよ——「ずいぶん発表されなかった記事があるねぇ」「そう、うん、うん、うん……東京駅の駅長がキセルで捕まった。あれは発表しなかったなぁ」。これぐらいはまだ解るんだけどね。

伊集院 そうですね、ハイ。

談志 もっと、「あれは発表できなかったなぁ。唐茄子がライオンに食い付いて「くやしい」つったけど、あれはどうした?」

伊集院 ヒヒヒヒ。

談志 「あれはお前、あれはライオンが怒ったってんで、歯を磨くの忘れて素っ飛んじゃって、お前、フランス行って大統領になる」それから「大統領になるったらどうするったって寅年だ」ってそんなの解んない。とにかくなんだか解んない。

伊集院 解んないんだよ、これが(笑)

談志 解るところもあるわけですよ。

伊集院 何となく接近してきたところもあるんですよ。接近してきて、自分の中で勝手に頭の中で「こういう形だ」ってなりそうだったのがパーンって弾けて、「おい、違うもんなんかい、今度は?」

談志 それはねぇ、例えばねぇ、なぜ頭にこのイメージが浮かぶのかっていうのをねぇ追って行くんですねぇ。なんでこのイメージが浮かんでくんのか。それをね追ってこうとしてイメージを確認しようとするよりも、どんどんどんどん絵が出てきちゃう。絵に追っ付かなくなっちゃう、自分の説明が。それに近いかも知んないですな。

伊集院 スッゴい疲れて絶好調な時に、たまに解るような気がします。

談志 そうそう、そうですよ。疲れる時にそれが来るんですよねぇ。追っかけて、追っかけて行けない。だけど、ある程度追っかけないと物事まとまりませんなぁ。

伊集院 はいはい、はい。

談志 そうすると、どっかで切らなきゃならない。

伊集院 はい。

談志 ね。だから、例は違うけど、「お前、クドクドしゃべんなよ同じことを、いくら酔ってるとはいえ」——あれがホントなんだからね。

伊集院 はい。

談志 と同じように、もっとムチャクチャな話を次から次へしたいんだけど、それだと物事まとまんなくなるから、そこでこう、切る。

伊集院 はい。

談志 だから、切ることに無理があるんじゃないのかねぇ。あっちのほうが、ホントなんじゃないかねぇ。だから、切らないで行ってるときも、どっかで学習に侵されてる部分が出てくるんじゃないの?

伊集院 本来だったら、興味もったもの興味もったものに行っちゃって、前の物は放っとくべきなんだけども——

談志 そうそうそうそう、放っとくべき。

伊集院 でもう、僕は、一個一個憶えてもしょうがないものを、最初はそれを憶えて分析すれば解ると思ってたんで、それこそ「いい女ってのは、いるねぇ」なんて、「うなじん所にキリギリスが止って、これがずっと鳴いてるのにこの女は気付かないんだ。それでいて、キリギリスはキリギリスで鳴いてるうちに、なに鳴いてんのかなぁって思ったら、「キュウリくれ、キュウリくれ」つってんだよ」なんて話に行くのが。オレは、これは何か、これは理屈なんだと思ってたんですよ。図式が、方程式があって、そうじゃなきゃこのスピードは出ないと思ってたのが、方程式ではなくて、「なんかキリギリスに興味がもう出て来ちゃったらもういいんだ、女は放っとこうや」。

[……]

談志 だからもっと言いますよ。それはねぇ、おしゃべりなんぞ辻褄合わしてるヤツなんぞはねぇ、しょうがないからやってるんでねぇ、本来セコいんだよ。やめちゃったらいい。やめちゃったら解んなくなっちゃうからやってるだけで、やめたらいい。

伊集院 僕、あのぅ、恐れ入りましたというところが、あれは若いからできることだと思ってました。若いときの脳の回転が速さのみが造る産物だと思ってました。

談志 でもねぇ、それはねぇ、論理的に分かってくるとねぇ、つくれるよ。反応ばかりではなくて、つくって置いておくことができるよね

伊集院 もう突きつめて考えれば——

談志 ボーンって来る反応ばかりではなくて、つくって置いておくことはできるよね。

伊集院 パーツパーツみたいのは置いといて。

談志 そうそうそう。どっかでつくっておくと。うん、うん。

伊集院 何かこれで引っかかりそうな所にそれを出しながら、また次のものを——

[……]

談志 つくることは可能でしょうね。だけども、つくったところで、読み上げるとまたそこで、テクニックってことでもって自然と合なくなるから無理だなってのが出てくるかもしれないけどね。

伊集院 いやぁ、何か今日は、オレの中でいろんなものが……僕が勝手に決めてた、あまりに近寄れなかったので僕が勝手に決めてた立川談志論みたいのが、すごいやっぱりあるんですよ。落語に関しても——

談志 そうですよ、人は勝手に決めるんですよ、論なんてもんは。

伊集院 でも何か、チョッとだけヒントが僕見えましたね。何か追っかけ行く途中に、横から入った——普通だったらば考えが逸れたって言うんだけど、逸れてんじゃなくて、「もういいじゃん、そこ追っかけて行けば」っていうことですよね?

談志 そうそうそうそうそう。

伊集院 「ヘンなもん浮かんじゃった」とか言うんじゃなくて、へンなもんじゃなくて、それが浮かびたかったら浮かびっぱなしにして、離れっぱなしでドンドン行っちゃえばいいんだってことですよね?

談志 それです。

伊集院 それだぁ。それが解ったからって、すぐに出来るもんではないと思いますけど。

談志 いや、おまえ出来っだろ。

伊集院 ……すっごい今、オレ、ムチャクチャうれしいですね。

僕、今まで努力でここまでやろうと思って、ずいぶんこのラジオも頑張ってきたんですけど、何か、努力の方向って……いっぱいセットを入れるのは少し解るんです。だけど、今言ったみたいな追っかけかたをすりゃぁいいんだっていうのは——

談志 努力じゃどうしようもねぇだろ。

伊集院 どうしようもないですね。

談志 ただこの場合、いくらか分析する努力はあるかもしれないね。[……]でも、スピードが速くなってくると、入れてくる時間がないって、あとは感性だけになってくるね。

[……]

伊集院 それが今まで僕は、絶好調でしかも疲労困憊の時に必ず来てたんですよ。だから、分析は出来ない。で、トランス状態みたいな時にはできるんだけど、このラジオやっててもガーっといつの間にかトランス状態入ると出来るんですけど。

談志 それでいいかどうか判らんよ、今やってることが。

伊集院 僕はもうそれでいいです。

談志 あぁ……。

伊集院 この番組も、それでいい人も来てくれてるんで。 

ベルクソン(Henri-Louis Bergson)を彷彿とさせる話。あるいは、文学の技法に引き寄せて言えば「意識の流れ」(stream of consciousness)というやつ。ジェイムズ・ジョイス(James Joyce)の『フィネガンズ・ウェイク』Finnegans Wake(1939)とかのナラティヴ。

このあとのハガキ・コーナーも可笑しかっなぁ。談志も、もうノリノリじゃないか。

この放送の伊集院とのやり取りや、「立川談志・太田光 今夜はふたりで」(TBSラジオ、2007年10月6日〜2008年3月29日、土23:30-24:00)での爆笑問題・太田光とのやり取りを改めて聴くと、実は月の家圓鏡(橘家圓蔵)がいかにスゴかったか改めて解った。


「談志・円鏡 歌謡合戦」(ニッポン放送)
 

※当ブログ内の関連エントリー

談志・円鏡 歌謡合戦(ニッポン放送、放送期間・曜日・時間未詳)

立川談志・太田光 今夜はふたりで(TBSラジオ、2007年10月20日(土)23:30-24:00)

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コメント

こんばんは…爆問のラジオ終わりの今です。
この内容に価値を見いだす人って、『万人に一人もいない』んじゃないでしょうか…
伊集院はそれ↑を割り切っていて、太田はそんなことには無頓着に突き進んでいるというのが僕の印象です。
伊集院と太田には少なくとも一人ずつ、そんな自分を理解をしてくれる相方がいる(出来た)んだけど、
伊集院の相方は表舞台に立たない構成作家だったからね…

投稿: morihsgw | 2012年4月11日 (水) 03時27分

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独自の解釈を加えた古典落語と、歯にきぬ着せぬ毒舌で注目を集めた落語家の立川談志さんの在りし日の姿です。 銀座でのテレビ番組集録の様子です。 対談の相手は、日米異色のコンビ、漫才・コントの“パックンマックン”の“パックン”です。 “パックン”は、ハーバード大学を卒業したアメリカ人です。 強烈な個性で、現代感覚の古典落語を語った立川談志師匠。 さようなら。... [続きを読む]

受信: 2012年1月 4日 (水) 16時59分

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