園子温[監督]『恋の罪』(2011年)と初日舞台挨拶を観てきた。
○園子温[監督]『恋の罪』(2011年)と初日舞台挨拶を観てきた。
園子温[監督]『恋の罪』(2011年)を観てきた。テアトル新宿、初日の第1回目。舞台挨拶あり。
前作『冷たい熱帯魚』(2011年)が面白かったので、今作も観に行った。園子温作品は、これに『愛のむきだし』(2009年)を入れて3作目。
『冷たい熱帯魚』のときは立ち見が出ていたけれど私は座って観ることができた。その時と同じぐらいの時間に家を出て劇場に着くと、既に建物の外まで列ができていて、私の2〜3人前ぐらいから「お立ち見でのご案内となります」とのこと。これから2時間半も時間を潰すのもなんなので、立ち見で観賞。
園子温[監督]『恋の罪』(2011年)予告編
東電OL殺人事件(1997年)に材を取った話。佐野眞一の著作で言えば、『東電OL症候群(シンドローム)』(2001年)の第3部「緋色のけものたち」の「読者」の章を膨らませたような感じ。人物の配置に若干、桐野夏生『グロテスク』(2003年)っぽいところもある。タイトルはマルキ・ド・サドの短編から取っているのだろうけれど、これは未読。
「ビートたけしのラジオ黄金時代 街で一番の男 ビートニクラジオ」(TOKYO FM、2000年7月10日?(月)25:00-26:00)
東電OL殺人事件について:佐野眞一×浅草キッド×ターザン山本
前作は殺人、今作はセックスを包み隠さずとことん撮ってやろうという姿勢なのだと思う。
ただ、前作『冷たい熱帯魚』の死体損壊の徹底したリアリズムに比べれば、今作『恋の罪』はかなりファンタジーっぽい印象を受けた。
女たちの心の闇や衝動といった形のないものや、セクシュアリティの領域で女性が自律的な主体として振る舞う様を描いているのかもしれないけれど、その筆致は、女に対して男がいだくファンタジーから抜け出ていないようにも思えた。
男を描けばリアリズム、女を描けばファンタジー——この点においては、男性の手による表象芸術は19世紀から変っていない。
水野美紀が脱ぐということで注目している人もいるかもしれない。後日メシ屋でとなりになったオヤジが読んでいるタブロイド紙にも「希代の脱がせ屋、園子温」みたいな見出しが躍っていた。確かに脱いではいるけれど、そこがウリという感じではない。そもそも、劇中では普通の女性の代表の役回りなので、他のふたりの女優が始終脱ぎまくりでキレまくりなのに比べれば、大人しいもの。
予告編のセックス・シーンで飛び散るピンク色のしぶきが単なるイメージ映像じゃなかったのは面白いといえば面白かったけれど、やや興をそがれた。
この広告を見ると映画を想い出す。
劇中の殺人事件は、あのような幕引きではなく、吉田刑事(水野美紀)自身の手で解決されなければならなかったと思う。事件を解決することと、事件に関わった女たちの心の闇を追体験することが、パラレルになっていないといけない。
もうひとつ言えば、死体の遺棄方法の意味には合点がいったが、なぜあの犯人があのように死体を遺棄しなければならなかったのか説明がつかないような気がする。
作中でフランツ・カフカ『城』(1926年)が引用され、「城」という言葉がある種のキー・ワードになっているのだけれど、『恋の罪』そのものが『城』のような作品になっている。
中盤から後半の、追い込まれていく神楽坂恵の演技はなかなか良かった。
「本物の言葉には体がある」——この映画にも体があると言えるかな?
『冷たい熱帯魚』を観たときは、余韻がしばらく後を引き、暴力とはどういうものかなと考えさせるところがあったけれど、『恋の罪』の場合は映画館を出るころには映画のマジックは薄れ始めてしまっていた。
ちなみに、劇中で殺人現場の住所は「円山町35番地」だけれど、実際の円山町には28番地までしかない。
また、円山町にほど近い神泉駅前には、東電OL殺人事件の現場となったアパートが現在も建っている。
東電OL殺人事件の現場となった神泉のアパート
舞台挨拶
上映後の舞台挨拶が面白かった。
尾沢美津子役の冨樫真が可笑しかった。
冨樫は、映画の中では「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」と田村隆一の詩を講じていたが、舞台挨拶では司会の質問に対して度たび言葉に窮し「ゔ〜」「む〜」と言葉にならないうなり声を上げて観客の笑いを誘っていた。ルックスとのギャップが好印象。すげぇ面白い人なんじゃないかと思った。崔洋一[監督]『犬、走る DOG RACE』(1998年)に出ていた人ですね。
水野美紀は、背は高かったけれど頭がとても小さく、意外と肩幅が狭くて細かったよ。
劇中の石鹸 Savon de Marseille はフランスではごく一般的な石鹸で、高級品じゃないんだってさ。園監督は、カンヌでそのことを初めて知ったとのこと。
『恋の罪』初日舞台挨拶
私は、このカメラのすぐ右隣で見てました。
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○第291回 「桜川名画座の十六 リアル・オア・フェイク」(桜川マキシム:ネットラジオ)
蛇足:『スパルタの海』も観てきた。
これとは別の日に渋谷のシアターNで、西河克己[監督]『スパルタの海』(2011年)も観てきた。戸塚ヨットスクールの話。石原慎太郎・東京都知事ご推薦だってさ。
西河克己[監督]『スパルタの海』(2011年)予告編
作中で披瀝される戸塚宏校長の教育思想には首肯しがたいものがあるが、観ることができて貴重な経験だった。あとは、大神源太[監督・主演]『Blades of the Sun』の公開を待つのみ。こっちはムリか。
大神源太[監督・主演]『Blades of the Sun』予告編
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