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オリヴァー・ストーン[監督]『トーク・レディオ』Talk Radio(1989年)

○オリヴァー・ストーン[監督]『トーク・レディオ』Talk Radio(1989年)

 


 

月曜JUNK「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ、2011年5月29日(月)25:00-27:00)で、伊集院が好きな映画として、オリヴァー・ストーン[監督]『トーク・レディオ』Talk Radio(1989年)に言及していた。

テキサス州ダラス(Dallas, Texas)の架空のラジオ局 KGAB の人気DJ、バリー・シャンプレイン(Barry Champlain)が主人公。

監督のオリヴァー・ストーン(Oliver Stone)は、『プラトーン』Platoon(1986年)『ウォール街』Wall Street(1987年)『JFK』JFK(1991年)『ブッシュ』W.(2009年)『ウォール・ストリート』Wall Street: Money Never Sleeps(2010年)などで知られている。言わずもがな。

主演はエリック・ボゴシアン(Eric Bogosian)。見憶えのある顔だと思ったら、スティーヴン・セガール主演の『暴走特急』Under Siege 2: Dark Territory(1995年)に出ていた人。衛星兵器をハッキングで乗っ取るイカれた科学者役。

一般に、ラジオをテーマにした映画やドラマといえば、ノスタルジックだったり、ハート・ウォーミングだったり、切なかったりするものが多いけれど、『トーク・レディオ』はまったくの対極。

バリーは、リスナーを挑発する発言で人気のユダヤ系のDJ。例えば、電話をかけてきたリスナーからホモ呼ばわりされると、"Your brother [...] is a pimp, and your wife is a fucker, isn't she?"(あんたの弟はポン引きで、カミさんは売女なんだろ?)などと応酬する。

リベラルなユダヤ系であることから、ジ・オーダー(The Order)を名乗るネオ・ナチ集団から脅迫状とネズミの死骸を送りつけられたりもする。

悪意が悪意を呼び寄せ、彼の番組は、人びとの心の闇と孤独の吹き溜まりになっている。

「それにしても、よくもこれだけ罵詈雑言を」と思っていたら、ブライアン・デ・パルマ(Brian De Palma)[監督]『スカーフェイス』Scarface(1983年)の脚本もオリヴァー・ストーンだった。スタジオのシーンではシビレる台詞の連続。

主演のエリック・ボゴシアンはオリヴァー・ストーンとともに脚本にも名を連ねている。実は、この映画は、元もとはボゴシアンによる戯曲で、オフ・ブロードウェイで1987年に初演、ピュリッツァー賞(Pulitzer Prizes)にもノミネートされた2007年にはブロードウェイで再演された。戯曲での舞台は、オハイオ州クリーヴランド(Cleveland, Ohio)に設定されている。

Talk Radio On Broadway(戯曲版公式サイト、英語)

The Pulitzer Prizes | Drama(ピュリッツァー賞公式サイト、英語)

話のほとんどはラジオ局のスタジオで展開する半密室劇。にもかかわらず、トークの上手さとカメラ・ワークの工夫で飽きさせない。三谷幸喜[監督]『ラヂオの時間』(1993年)のようなもったいぶったテンポのダレはない。

過激だが人気のあるバリーの番組に全国ネット(national syndication)の話が舞い込む。ビッグ・ビジネスを前に過激な内容を抑えるよう釘を刺すラジオ局と、今まで通りのスタイルで通そうとするバリー。

しかし、スタジオの外で自分に対する敵意を目の当たりにし、人間関係の破綻を経験し、スタジオに招き入れたリスナーとのトラブルを経て、限界まで追いつめられる。

これまでリスナーに丁々発止で言葉を投げ返していたバリーは、こう語りかける:


 

Yes, the world is a terrible place!  [...] Everything's screwed up and you like it that way, don't you?  You're fascinated by the gory details.  You're mesmerized by your own fear!  [...] You're happiest when others are in pain.  And that's where I come in, isn't it?  I'm here to lead you by the hand through the dark forest of your own hatred and anger and humiliation.  I'm providing a public service!
(そうさ、世界ってのは酷い所だ![……]何もかもメチャクチャで、お前らはそいうのが好きなんだろ? 血腥い話のひとつひとつにうっとりし、自分自身の恐怖にクラクラする。[……]他人の不幸は蜜の味。そこでオレのお通りだ。そうだろ? オレはお前らの手を取って、憎しみと怒りと屈辱の鬱蒼とした森の中を案内するのさ。オレの仕事は公共サーヴィスなのさ。)

Marvelous technology is at our disposal.  Instead of reaching up for new heights, we're gonna see how far down we can go, how deep into the muck we can immerse ourselves!
(オレたちは素晴らしい技術を手に入れた。新しい高みを探求する代りに、どれだけ地に堕ちることができるのか、どれだけ深く糞に埋もれることができるのかを、オレたちは身を以って確かめようとしている。)

そして、ついにバリーは本音を語り始める。

I come up here every night and make my case.  I make my point...I say what I believe in.  I have to, I have no choice.  You frighten me!  I come up here every night and I tear into you, I abuse you, I insult you...and you just keep calling.  Why do you keep coming back?  What's wrong with you?  I don't want to hear any more.  I've had enough.  Stop talking.  Don't call anymore!  Go away!
(オレは毎晩現れて、自説を唱え、力説する……自分の信念を語るのさ。そうせざるを得ない。それ以外の道はない。オレはお前たちが怖いんだ! オレは毎晩ここへ来て、お前たちをなじり、罵り、侮辱する……なのにお前たちは何度も電話してくる。どうして凝りもせずに戻ってくるんだ? お前らどうかしてるのか? もう何も聴きたくない。もうたくさんだ。話をやめろ。もう電話してくるな! あっちへ行けよ!)

しかし、バリーは気付いている。

We are stuck with each other.(オレたちは腐れ縁だ。)

きっと、毒舌を売りにしている喋り手には、誰しも同じような懊悩があるに違いない。かと言って、舌鋒が鈍ればたちまち「あいつ、終ったな」などと言われかねない。終りなきチキン・レース。

リスナーに本音を吐露したバリーに待ち受けている結末やいかに!

この映画はラジオの話だけれど、今観ると、通信技術と人間との関係一般や、インターネット時代の感受性について考えさせる映画でもある。

* * *

「ショック・ジョック」(shock jock)とは何か?

英語では、ショッキングな発言を売りにするDJを「ショック・ジョック」(shock jock)と呼び、彼らの番組を「ショック・ラジオ」(shock radio)と呼ぶらしい。ハワード・スターン(Howard Stern)ラッシュ・リンボウ(Rush Limbaugh)がその好例。

劇中の若き日のバリーは、ウェイヴィー・ヘアーの長髪で、ハワードを彷彿とさせる。ハワードのロゴ・マークも、この映画のポスターのデザインに似ている。ひょっとしたらはこの映画を意識しているのか、それとも単なる偶然?


HowardStern.com - Official site of The Howard Stern Show
 

実話に基づいた映画

この映画には実在のモデルがいる。コロラド州デンバー(Denver, Colorado)で人気を博したショック・ジョックのアラン・バーグ(Alan Berg 1934-1984)。劇中に登場する The Order というネオナチ集団も1983から84年にかけて実在した。映画のストーリーも、彼らの間に起きた実際の事件にインスパイアーされたものである。

ちなみに、KGAB というラジオ局も実在するが、放送エリアはワイオミング州シャイアン(Cheyenne, Wyoming)で、こちらは劇中の局とは異なる。


AM 650 KGAB Radio - Cheyenne's News Talk Leader
  
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