月曜JUNK「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ、2011年6月20日(月)25:00-27:00)
○月曜JUNK「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ、2011年6月20日(月)25:00-27:00)
伊集院の兄、「深夜の馬鹿力」にネタを投稿
この日の月曜JUNK「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ、2011年6月20日(月)25:00-27:00)では、数か月前から番組に相当数のメールが寄せられているという話から、こんな話に展開:
その中に——おそらくもう47ですよ——ウチの兄貴のメールが入ってるんですよ、たまに。たまに入ってて、それも、兄としてじゃないヤツ、いちリスナーとして書いているヤツが入ってて、もう、ノヴェルティ希望のヤツ。
伊集院少年とラジオと兄
これに続く、伊集院のラジオとの出会いと兄との関係の話がおもしろかった:
僕はね、正直言いますけど、もう、全てのことはウチの兄貴のおかげで知りました。ラジオも兄貴のおかげで、兄貴がラジオを聴いているのを、ええと……それこそ最初はさぁ、なんか、おじいちゃんのお古か何かのラジオなわけ。子供みんな寝てる部屋でさぁ、兄貴がさぁ、独りでさぁ、クッククック笑ってるわけよ、何か布団かぶりながら。「うわぁ、気持ち悪りぃ! アレだけど、ついにアレだな!」と思って。
「アレな人だけども」って思ってたら、どうやらなんか兄貴が変な機械からチューブが出てて、それが耳に突っ込んであるから、なんか脳に汁をブチョブチョブチョブチョかけてるヤツだなと思うわけ、こっち知らねぇから、そのラジオっていうモノを知らないからさぁ。そしたら、汁が出るたびに「はっはっはっは」とかなってるわけ。
[……]
兄貴がいない時に、その、「同じ汁入れるんだったら穴のほうがいいだろう」って思って、イヤホンを肛門の中に入れて、「笑うより気持ちいいほうが」と思うんだけど「何も出てこねぇな」と思って。もうその肛門の中から「高嶋ヒゲ武の」って聴こえるだけだから、「大入りダイヤルまだ宵の口」みたいなのが聴こえるだけだから、「中島みゆきのオールナイトニッポン」とかが俺の肛門を通して聴こえるだけだから、ねぇ、全然だなぁと思ってたんだけど。どうやら、それがラジオだってものが判って。
その後、ふたりでラジオを聴くようになる。ラジオにはイヤフォン・ジャックがひとつしかないが、兄はイヤフォンで聴く習慣を堅持したいので、イヤフォンを中途半端に差し込んで、イヤフォンとスピーカー両方から音が聴こえる状態にして、兄がイヤフォン、伊集院がスピーカーという、珍妙なリスニング・スタイル。後に分配器(スプリッター)を買って、ふたりともイヤフォンで聴くようになったそうだが、それはそれで珍妙なことに変わりない。まぁ、少なくとも、仲が悪かったらムリ。
話のなかでひとつ懐かしかったのは、
昔のイヤホンってね、なんか肌色で、あの、コードが編んであるんだよね。編んであって、しかも耳の中に入れるところだけは、あの、透明のゴムみたいのになってて……肛門に入れちゃうでしょそんなの、どうやったって!
そのイヤフォン、耳が遠くなったウチのじいさんがテレビを見る時に使ってたわ。じいさんもオレも肛門には入れてなかったけれど。もちろん、モノラル。最近見かけない。色は違うけれど、雰囲気としてはコレがいちばん近い。クリスタル・イヤフォンをそのままひと回りふた回り小さくしたようなデザインのヤツ。
田中家のBCLブーム
そして、BCLブームが到来。
兄貴がそのあと、「BCLブーム」つって、短波放送みたいな、海外のスゴい短波放送をキャッチして、スカイセンサー何とかって、当時コレもやっぱスゴいもんで、BCLブーム——オレが小学校の低学年ぐらいのときぐらいに知ったのか、ぐらいから始まったのか、ぐらいに爆発したのか判んないけど——まぁ、今じゃ考えられない、いいラジオを買うブームなんですよ。小遣いを貯めていいラジオを買うブームなの。色んな雑誌のいちばんいい広告のところにラジオが、ねぇ、ホントに今見たら「軍か、お前は?」みたいなスッゴい微調整できるダイヤルのラジオみたいのが、もう。
で、スカイセンサー1600って言ったかなぁ、なんかその、ウチの兄貴が欲しかったのは、スカイセンサーのシリーズの何番何番何番ってあって、それのいちばん安いのでいいから自分のラジオが欲しいわけですよ。もはや、兄弟のラジオになっちゃったから、おじいちゃんからもらったラジオが、兄弟のラジオになっちゃってるから。ほいで、その、兄貴がついに小遣い貯めて買うんだよね。
話に出てくる「スカイセンサー1600」は、スカイセンサー(SONY)とTRY-X 1600(東芝 RP-1600F)がゴッチャになっているのかもしれない。SONYの高性能ラジオのブランドが「スカイセンサー」シリーズになるのは、スカイセンサー5500(ICF-5500)・スカイセンサー5400(ICF-5400)以降のようだ。ちなみに、SONY にはCF-1600 という機種が存在したが、一般的なラジカセである(私はこの機種のデザインが好き)。
○BCL受信機3(受信機博物館)
※TRY-X 1600ほか。○ソニー CF-1600(初期ラジカセの研究室)
田中建少年のラジオ・ライフ
伊集院光こと田中建少年は、ついに自分のラジオをゲット。
で、[兄がスカイセンサーを]買った後に自分のラジオに、そのおじいちゃんのラジオが自分のラジオになるじゃないですか。そいで、その自分のラジで番組聴いてて、で、オレがハマってたのは、「欽ちゃんのドンとやってみよう!」、「欽ドン!」の、ラジオの「欽ドン!」がけっこう好きで、その「欽ドン!」っていうのは、「高嶋ヒゲ武の大入りダイヤルまだ宵の口」っていうワイド番組の中のワン・コーナーとかで入ってる「箱番組」って言う、今で言う優香ちゃんのヤツみたいなヤツで。だから、優香ちゃんがハゲヅラをかぶって「良い子悪い子普通の子」みたいのをやってるって思ってくれればいいんですけど。その、優香ちゃんが、変に斉藤清六に冷たくあたってる、と思ってくれればまぁいいと思うんですけれども、そういう感じなんですよ、当時。で、それを僕聴いてたんだけど。
ラジオの「欽ドン!」の正確なタイトルは「欽ちゃんのドンといってみよう!」(ニッポン放送、1972年10月9日〜1979年4月6日、月〜金21:40ごろから10分間、ほか)。「欽ちゃんのドンとやってみよう!」はテレビ番組(フジテレビ)のほうのタイトル。
「欽ちゃんのドンといってみよう!」(ニッポン放送)
「黄金バットが笑い死に」のネタはなかなか。
今はなき『ロードショー』のCMには今は亡き小森のおばちゃまが出演。
それと前後して、伊集院の兄が、その日の「欽ドン賞」だか「ジャンプ賞」だかのネタを放送前に言い当てるという現象が起こり、「何だコレ? ウチの兄貴、アレでああなってるけど……アレなんじゃねぇの!?」と不思議がる田中建少年。
要は、スカイセンサーの威力にモノを言わせて、東京よりも放送時間の早い地方のネット局で聴いていただけなのだけれど、
「スゲェなこの人」と思うワケ。「何なのその予知するヤツ?」と思って、で、こっちは……兄貴はそういうの意外に教えてくんないのよ、兄貴ってのは。でも、なんかやってる作業を見て、「あいつも「欽ドン!」を聴こうと思って部屋に入ったはずなのに、早くからラジオに向ってるのは何だ?」みたいことで。
また、兄貴がいない日とかあるわけ。何かの都合でいない日に、いったんスカイセンサーのイヤホンを肛門にこうやって入れてから、「良し!良し!コレも良し!」と思って、それを抜いてから、こう細かく兄貴の合わせっぱなしのダイヤルとか聴いてみると、「なるほど、あいつの予言は……なんだよお前! たいてい、そうな。たいてい、予言者の類ってそういうのな!」っていうので、兄貴のことが判ったりとか。
「兄貴の踏んだところ」
兄の影響はラジオだけではなかったようで、
兄貴が先にマンガを描き始めたりとか。だって兄貴のエロ本をずっと盗み続けたわけだから、コッチは。だから、そうすると変な話、兄貴の入れた……その後兄貴とは袖を分かつわけですけど、袖が分かれるわけですけど、最初のエロ本は兄貴の好みに染まってますもんね、どうやっても。
ただ、兄貴が、その、オレがあんまり兄貴のエロ本を盗むんで、兄貴が宗旨を変えるっていう。ふふふ。間逆になってくわけですよ。オレの好まない、これは盗まれないっていう統計をたぶん兄貴は出してくるんですよ、静かに。普通だったら怒っていいわけですよ。その、世間で言う兄貴だったらば「お前、何オレのエロ本盗ってんだよ!?」でいいんだけど、ウチの兄貴はスゴい静かな人だから、そこを、静かに努力してく。いろんな、こう、バリエーションのエロ本を買った上で、統計的に「建が——本名の建が——持ってかないヤツはこの系統だな!」みたいなヤツ、ね。「パンストやぶくの持ってくな」と思って、それで、パンストやぶくヤツは持ってかないようにしよう。でいて、「オレはいつか自分で手に入れられるようになったら、パンストやぶき放題でいこう」みたいな。
そういうのも、兄貴の踏んだところを踏んでくるし、その、何だろうね、兄貴がマンガ描き始めればオレもマンガ描きたいと思うしっていうのが、兄貴の部屋で見たマンガに最初は染められて、「コレ違うんじゃないか?」と思ってカウンターが当っていくみたいなことなわけ。その兄貴です。
エロ本を弟に盗られないために自分が宗旨を変えるっていうのも、この兄にしてこの弟という感じ。
しかも、「「パンストやぶくの持ってくな」と[兄が]思って、それで、パンストやぶくヤツは持ってかないようにしよう。でいて、「オレはいつか自分で手に入れられるようになったら、パンストやぶき放題でいこう」みたいな」って、何なの、その心理戦?
伊集院兄の投稿職人スピリッツ
その兄貴だから、いいけど! ふふふ。別に[投稿してくる]権利はあんだけど。なんだろうね、そのさあ、兄貴のネタを見る恥ずかしさって解ります? 兄貴がガチで書いて来るネタを見る恥ずかしさで、兄貴のスピリットとしては「別にお前に「深夜の馬鹿力カード」をくれなんて言わないけど、オレは自分」——。
あの人はね、元もと、その、ラジオ・リスナーとしての面白さもオレに教えてくれてる人だから、変な話、その、もらいたいんじゃないのよ。読まれて——コレたぶん逆に言うと、オレなんかよりずっと、投稿してくれてる人のほうが解ると思うけど、そのスピリッツなんですよ。
例えば、あのカードをYahoo!オークションで買いたいとも思わないし、拾いたいとも思わないし、偽造したいとも思わない。あと、何かコネを使って欲しいとも思わないんだけど、あの、「書いて読まれたい」って意識が強いから、ペン・ネームとか書いてんのね。恥ずかしいだろ? だって、実の兄貴で、しかもオレ、10……20年くらい会ってないんだよ。20年はちょっと大袈裟か? 十何年会ってない。18年……いや20年会ってないわ。20年ぐらい何の音信もしてないのに、ネタを書いて来るっていうこの感じ。
この感じと、それとね、コレ兄貴に言っとくよ、ね。兄貴も色いろ、会ってないから考えること多いと思うけど、あんまり面白くないから採用してないだけだから。別にそれは、全部フラットな。
だって、ダメじゃん! 変な話、兄貴が兄貴って名乗ってないのにだよ、名乗ってないのに「コレ、兄貴だから」って採用したら、コレ、不公平。コネ、コネ入社じゃないですか、コレ完全な。コネ入社じゃないですか。だけど、ウチの兄貴は「ちゃんとノベルティはもらう」っていう、ね。オレはネタだけが書きたいわけじゃなくて、ちゃんとネタを読まれた証も欲しいからって言うんで住所が書いてあるから。実家は判るよオレだって、そりゃぁ! 行ってなくたって、コレ、実家と、あとお前の名前書いてあるし、わかるよ。
ほいで、これはまだいいわな。でいて、今日も正々堂々と——今日も正々堂々と書いてくれよ! 頼むぞ、ねぇ。
兄はそれだけでは飽き足らず、他の番組にも投稿しているらしい:
全然違う番組のスタッフから、「あの、伊集院さんの兄を名乗る人からのメールが来たんです」っていう話、「なりすましのメールが来たんです」って言われて、「どんな?」って聞いてみると、これ本物なんだよ、どう考えても! 判るもん、だって。笑いのセンスとかも、オレ、あんたに影響されてできてるモノだから、最初は、スタートは。だから、あんたの書きそうなこととかもスゴい判るわけ。
「ラジオに先にいたのは誰かって言ったら、ウチの兄貴が絶対先にいた」
それで、その……なんだろうこの感じ、ドキドキする感じ。
でも、何つうのかなあ……元もとラジオに先にいたのは誰かって言ったら、ウチの兄貴が絶対先にいた。今の流れからは、先にいた人だから、何でしょうね、書くなとも思わないし、もっと言えば、オレ、「オールナイトニッポン」にスゴい無名でいきなり起用されたときに、最初に来たハガキの、よく冗談で半分とか90%って言うけど、それまではいかないまでも、5%くらいは兄貴のネタなのよ。まぁ、スゴい勢いで兄貴がネタ書いてくれるから。まぁ、その頃から、そんなに面白くはないんだけど。だけど、まあ、まぁまぁ面白いのとかもあったりとかもして。
オレからしてみたら、兄貴のネタが減っていくの、割合が減っていくことっていうのが、ちょっとずつメジャーになっていくっていうイメージの時もあったから、あの、その時ず〜っと兄貴はラジオが好きでラジオに投稿するってスタンスは、まぁ変わってないんだろうなって思うんだけど。なんだろうね、この、この恥ずかしさ。
この恥ずかしさと、この歳になってくるとイヤではない感じっていうのか、何て言うのかねぇ……あの、よく言う、自分のバイト先にお袋が来るヤツよりはイヤじゃないんだよね。
それは何か、スゴいチャンと……兄貴がオレに教えてくれたラジオ道からも反さず、何かそういう、当然その、そこから流れを汲んでいる僕の思う温度みたいなところから外れずに来るし、みたいな。
ただ、なんだろうねぇ、この感じはねぇ。
ていうことで、兄ちゃんね——ふふふ、私信だったら家でやれよ。あとゴメン、恥ずかしかったのが、「兄ちゃん」なんて呼んだこともないし。あと、「兄貴」っていうのもたぶんあんまり呼んでないから、何か、まぁ、それはまぁ、気恥ずかしいんですけども。
家族と音信不通と言いながら、けっこう頻繁に饒舌に家族の話をする伊集院。この日も兄の話題で約15分。いい話。
馬鹿なラジオのなかに良い短編が埋め込まれていた回でありました。
私も田舎では弟とふたり部屋だったので、「オールナイトニッポン」などラジオは一緒に聴いていた。ただ、マンガの趣味は合わなかったし、弟のエロの志向は未だに知らない。
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