上杉隆が Twitter で紹介していた『ニューヨーカー』の記事を翻訳しました(5):Evan Osnos, "Aftershocks: A nation bears the unbearable." The New Yorker, March 28, 2011
○上杉隆が Twitter で紹介していた『ニューヨーカー』の記事を翻訳しました(5):Evan Osnos, "Aftershocks: A nation bears the unbearable." The New Yorker, March 28, 2011
先日訳した The New Yorker の記事、Evan Osnos, "Aftershocks: A nation bears the unbearable." The New Yorker, March 28, 2011の続き。やっと終了。
上杉隆が登場。TOKYO FM での特番の様子を取材。上杉のTwitterにあった「日本人は「洗脳」」に関する記述あり。
<< 前ページ | 1 | 2 | 3 | 4 | 5
様々な余震
エヴァン・オウスノス(5ページ目)
上杉は別の電話に出た。今度は別の被災地自治体の職員からの電話で、彼はこう伝えた「われわれは復帰のことを考えなければならない」——「復帰」、それは多くの人びとが異口同音に唱える言葉だ。
「放射能漏れに対して何か準備はしていますか?」と上杉は尋ねた。
「いいえ、全くしていません。そんなことを考える余裕もありませんでした」と電話の相手は答えた。
地震以来、上杉は、記者会見への参加を日本の大手メディアの代表だけに制限するのではなく、放射能漏れの脅威に関する情報をさらに提供し、幅広く様ざまな報道機関の記者が公式な記者会見へ参加して徹底的に質問をすることを許可するよう政府に求めてきた。それに先立つテレビのインタヴューで、彼は炉心融解の見通しという歓迎されない話題を持ち出し、今後二度と放送に呼ばれることはないだろうと言われた。話の中で彼は、民衆は「洗脳されている」と言った。「彼らは自分で判断することができない。誰もが、政府の言うことが正しいと思っている。 誰もが、政府高官の言うことが真実だと思っている。しかし、フリー・ジャーナリストや、ネット情報や、Twitter 情報は信じない」 と彼は語った。 そこで私は、ネットは現在、真実のフィルターにはほとんどなっておらず、原子力危機のあいだはむしろ非常に不安定なものになっているのではないかと言及してみた。すると、「それは平静を保つこととは別の話だ。日本の民衆は情報を何も受け取らないことに慣れてしまっている」と彼は言った。
TOKYO FMのスタジオでは、テーブルの上には食べかけの食べ物が置かれ、震災後数時間しか家に帰っていない何10人ものスタッフでごった返していた。Soil & Pimp Sessions、MASH、Superfly、Jujuといった 日本のポップ・スターたちから寄せられた国民への応援メッセイジが壁一面に貼られ、副調整室のブースは、プリントアウトされた紙、電話やインターネットで日本中から寄せられたメッセイジの置き場所になっており、どのメッセイジにも曲のリクエストが添えられていた。 局のオフィスとスタジオは、恐怖と悲愴の掲示板と化していた。
「全く眠れません」と松島町の17歳の少女は綴っていた。「外ではヘリコプターの音がして、余震が止まりません。3月11日からずっと水道が止まっていて、毎日水を汲みに行っています。外の放射能のことが気になります」。
別の人は「今は寒いです」と書いてきた。その人物は、体をさする意外に体を温める方法が何もないことを知ってる人がいるかと問いかけた。生存者たちに物資を運ぶ大型トラックの運転手は、彼らに次のような言葉を届けた、「みなさん、私たちがそっちへ向いますよ。運んで運んで運びまくります」。メッセージは、建設作業員・電気技師・子供・シングルマザーなどから届いた。彼らは、ウルフルズ「サムライソウル」、Orange Range「みちしるべ」、Mr. Children「Flower」といった曲を次つぎにリクエストした。
TOKYO FM のスタッフは若く、つい先週は、スタジオは、極めて日本的な意味でスタイリッシュな場所だった。プロデューサーはトラッカー・キャップやカンゴール・キャップをかぶり、ヒップホップ風のスニーカーやアイビー風のレトロな L.L.Bean のブーツをはいている。パープルのジーンズにライダーズ・ジャケットを着た26歳の男性が、カーペットの上にいっしょに座って、私のためにメッセージを翻訳し、届くと同時に1件1件大きな声で読み上げてくれていた。彼は生後1週間の赤ん坊についてのメッセージを読んだ。「私は彼女をヒカリと名付けました——「light」という意味です——今年生まれた子供たちには運命があり、なすべき仕事があります。彼らは次の世代を担っています」。彼には涙がこみ上げた。
上杉の出番は10時に終った。プロデューサーとホストたちは立ち上がり、お互いに恭しくお辞儀をし、番組はシンディ・ローパーので “All Through the Night” で終了した。
(了)
<< 前ページ | 1 | 2 | 3 | 4 | 5
この記事を書いたエヴァン・オウスノスという記者、独自の考察の部分ではケレン味がすぎるところもあるけれど、現場の様子を生々しく伝える筆力には長けていると思う。
Cyndi Lauper, "All Through the Night" (1984)
随時更新。
被災地情報の取得・安否確認等にお役立てください。
| 固定リンク
« 上杉隆が Twitter で紹介していた『ニューヨーカー』の記事を翻訳しました(4):Evan Osnos, "Aftershocks: A nation bears the unbearable." The New Yorker, March 28, 2011 | トップページ | 「ラジオ批評ブログ——僕のラジオに手を出すな!」総目次(45) »
「FM」カテゴリの記事
- ラジオ局売上高ランキング(関東)令和3(2021)会計年度(2023.02.18)
- 在京ラジオ局新規採用者数一覧(1987〜2021年度)(2023.02.18)
- 参議院議員選挙:東京圏ラジオ局の開票速報番組一覧(各局、2022年7月10日(日))(2022.07.08)
- 在京ラジオ局新規採用者数一覧(1987〜2020年度)(2022.02.12)
- ラジオ局売上高ランキング(関東)令和2(2020)会計年度(2022.02.12)
「番組評以外のラジオの話題」カテゴリの記事
- ラジオ局売上高ランキング(関東)令和3(2021)会計年度(2023.02.18)
- 在京ラジオ局新規採用者数一覧(1987〜2021年度)(2023.02.18)
- 参議院議員選挙:東京圏ラジオ局の開票速報番組一覧(各局、2022年7月10日(日))(2022.07.08)
- 在京ラジオ局新規採用者数一覧(1987〜2020年度)(2022.02.12)
- ラジオ局売上高ランキング(関東)令和2(2020)会計年度(2022.02.12)
「ラジオ」カテゴリの記事
- ラジオ局売上高ランキング(関東)令和3(2021)会計年度(2023.02.18)
- 在京ラジオ局新規採用者数一覧(1987〜2021年度)(2023.02.18)
- 参議院議員選挙:東京圏ラジオ局の開票速報番組一覧(各局、2022年7月10日(日))(2022.07.08)
- 在京ラジオ局新規採用者数一覧(1987〜2020年度)(2022.02.12)
- ラジオ局売上高ランキング(関東)令和2(2020)会計年度(2022.02.12)
コメント