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『放送文化』2011年冬号(NHK出版)

○『放送文化』2011年冬号(NHK出版)


『放送文化』2011年冬号(NHK出版)
 

たまたま池袋のジュンク堂で見かけた『放送文化』2011年冬号(NHK出版)。特集は「つくる女性 見る女性」と題し、"テレビと女性"という切り口。

表紙に出ているマツコ・デラックスの「テレビは巨大化しすぎた」というインタヴュー記事に興味をもって手に取り、ラジオNIKKEIの掛原雅行氏による radiko に関する記事も載っているので購入。

1,000円也。季刊だから年間4,000円と考えればさほど高くはないけれど、NHKラジオの語学講座のテキストほどのヴォリュームで1,000円は、1冊の雑誌としては高いよ!

マツコ・デラックス「テレビは巨大化しすぎた」(pp.13-22)

マツコ・デラックスへの10ページにわたるインタヴュー。

巨大化して機動力を失った大手テレビ局が提供する番組がいかに視聴者のニーズと乖離してしまっているかを、TOKYO MX の「5時に夢中」(TOKYO MX、月〜金17:00-18:00)と対比させつつ指摘している。

「5時に夢中」は、視聴率でNHKに勝ったり、民放でも2番手3番手につけることもあるらしい。そんなに人気だったとは。マツコは「視聴者が、テレビで本当のことを言ったり、バカバカしいことをやったりしている姿を見たいっていうことなのよね」(p.14)と分析。


「5時に夢中」(TOKYO MX、月〜金17:00-18:00)
 

私がいちばん興味深いと思ったのはこの箇所:

[……]メディアの中で、テレビが一番、人もお金も集まってくる。だから中にいる社員たちも、特に男性の場合、制作者というよりは、権力志向の強い人たちが集まって、一種のマジョリティを代表する場みたいな感じになってしまった気がするのよね。

アタシは、メディアっていうのは絶対にマイノリティ側についてなきゃいけないし、反体制じゃないと面白くないと思っているのよ。[……]でないと、そこに刺激も新しいものも生まれないから。まあ、日本の大きなメディアなんてほとんど権力側についていて、それがメディアを面白くなくする要因のひとつだと思うんだけど。(p.22)

お金があると人は志が低くなるので、「テレビが儲かる」という図式が消えたらテレビはもう一度面白くなるという主張。

だったら、ラジオのほうが先に面白くなるワ、きっと。

掛原雅行「ラジオというハコにこだわらない radiko 戦略」(pp.84-87)

掛原雅行氏は、ラジオNIKKEIのインターネット事業部部長。古参のBCLファンにとっては「クリアキャッチレスキュー隊隊長」と言ったほうが通りが良いらしい。

記事では、radiko が新たなラジオ・リスナーを獲得することに成功した事実や、ソーシャルネットワークと radiko との親和性を紹介し、今後のラジオNIKKEIの戦略に言及している。リスナー拡大について言及している箇所の、

[radikoのiPhone用公式]アプリの公開初日のみで10万ダウンロードを超えたのは、1日でラジオが10万台売れたのに等しいといえる。(p.86)

という指摘には目から鱗。昨今の家電量販店のラジオ売り場の寂しさを考えると、実は画期的なことだったのだ。

リスナーに来ていただくよりも、こちらが出て行く。フットワークの軽さはラジオの最も得意なことだったはず。アウトプットの選択肢をより多く持ち、その選択権はユーザーに任せる。これが弊社のここ数年の方針であり、radikoもそのひとつとしての位置づけである。(p.87)

リスナー寄りな考え方がうれしい。

石井彰「AM/FMの垣根が消える?」(p.110)

放送作家・石井彰氏による radiko に関するコラム。

radiko による音質の均一化と選択聴取(ザッピング)の増加(=AM/FMの垣根が消えること)に対応した番組編成・内容の変更を行わない局は取り残されるという指摘。

別に地上派放送がなくなるわけではないから、そこまでは言い切れないと思うのだけれど。ただ、受信機リスナーよりも、PC・携帯リスナーが数で勝る日が来れば状況は変るかもしれない。

ちなみに石井氏は、佐藤忠男[編]『日本のドキュメンタリー 4 産業・科学編』(岩波書店、2010年)に「ラジオドキュメンタリー」という論文を寄稿している。


 
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