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リチャード・カーティス[監督]『パイレーツ・ロック』(2009年) を観て来た。

○リチャード・カーティス[監督]『パイレーツ・ロック』(2009年)を観て来た。

2010年1月30日(土)から2月5日(金)までの期間で、下高井戸シネマリチャード・カーティス[監督]『パイレーツ・ロック』Richard Curtis dir., The Boat That Rocked(2010年) の公開が始まったので、初日に観に行った。100人ちょっとぐらいのいいサイズの劇場で、お客もけっこう入っていた。

『パイレーツ・ロック』公式サイト | 10月24日(土)TOHOシネマズ六本木ヒルズ・みゆき座ほか 全国ロードショー


『パイレーツ・ロック』予告編

当ブログ内の関連エントリー:

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桑原茂一の PIRATE RADIO(InterFM、2010年1月19日(火)23:00-23:30)
海賊放送あれこれ

あらすじ

民放ラジオ局のなかった1966年のイギリス、BBCでかかるポップ・ミュージックは法律で45分以下に制限されていた。もっと聴きたい人ために、もっと聴かせたいDJたちが、公海上の船から24時間ロックを放送し続ける海賊放送局「レイディオ・ロック」の話。

海賊放送局のDJたちの活躍、高校を退学になって船にやって来た少年の恋とイニシエイション、取り締まり当局との攻防がストーリーの柱になっている。

イギリスでは The Boat That Rocked のタイトルで公開されるも興行成績がふるわず、アメリカ・カナダでは再編集の後、Pirate Radio のタイトルで公開されたとのこと。

評価・感想など

率直に言うと、60点ぐらい。期待値が高すぎたのかもしれない。

上映開始5分ぐらいまでのスタート・ダッシュはとても良かった。あの勢いで最後まで突っ走ってほしかったなぁ。

コンスタントに入るギャグのひとつひとつは面白く、客席からも度たび笑いが起きていた。それに、135分もある映画なのに長さは感じなかった。けれど、最後まで深い感情移入ができなかった。

リスナーの側の描写が薄かったのが理由のひとつだと思う。

リスナーは度たび登場するのだが、群像扱いどまり。海賊放送がいかに多くのリスナーに支持されていたかを表現するための方法かもしれないが、もう少し個々のリスナーの丹念な描き込みが欲しかった。

たとえば、こっそり寝室でラジオを聴いている冒頭のあの少年をもう少し大きくフィーチャーするとか、船に来る前にカール(Carl)が夢中でラジオを聴いている描写を入れるとか。

当然のことながら、観客にはラジオをやっている/いた人よりもよりも、聴いている/いた人のほうが多い。よって、感情移入できるリスナーが登場しないと、話が他所事のように感じられてしまう。

それに、DJたちの描き込みも今ひとつだったかもしれない。

なによりも、船上での乱痴気騒ぎに共感がもてなかった。当時を知っているイギリスの人にとっては、ああいう雰囲気は懐かしいのだろうか。

ただ、伝説のDJ・ギャヴィン・カヴァナー(Gavin Cavanagh)のキャラクターはちょっと面白かった。エロ・トークと音楽の組み合わせ——日本にはいないタイプのDJなので、いまあのスタイルでやれば日本の第一人者になれるかもしれない。マイクの回りを下から舐めるようなしゃべり方がツボだった。

海賊ラジオを取り締まる当局との攻防も淡白。ここに期待していた私は肩透かし。もっと濃厚に描く事ができれば、観客とDJたちの一体感が増したはず。それにそもそも、DJたちがなぜそこまでしてラジオでロックを放送したいのかという動機付けの描写も不足している。脱法・不法行為の映画なのにワクワクする要素が少ない。

ラスト・シーンは、もっと spectacular にしたほうが盛り上がったと思う。

まぁ、ラジオ・ファン向けに映画つくっても損するのは目に見えているから仕方ないかなぁ。実際、ブログでは好意的な評価が多いので、こんなことをグダグダ言っている私が少数派なのだと思う。でも、ラジオを題材にするのなら、ラジオ・ファンも夢中になったり唸ったりするようなストーリーの展開や細部の描写もあったほうが良いと思う。

Smoky Robinson & the Miracles の "Ooo Baby Baby" (1965) が使われていたのはうれしかった。サントラ盤はあの時代のヒット曲満載。買いかな。

おまけ

レイディオ・ロックは中波203mで放送しているという設定。計算すると1477.83...kHz。1478kHzあたりのようです。

周波数と波長(「爆裂無線研究所」内)

映画「パイレーツ・ロック」を見てきました: K's Memo-Random


"Anglia Tonight" (ITV)
海賊放送終了40年特集
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