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小島慶子 キラ☆キラ(TBSラジオ、2009年9月18日(金)13:00-15:30)

○「小島慶子 キラ☆キラ」(TBSラジオ、2009年9月18日(金)13:00-15:30)

TBS RADIO 2009年9月18日(金) 映画評論家・町山智浩さん - 小島慶子 キラ☆キラ
『キャピタリズム〜マネーは踊る〜』はキリスト教徒マイケル・ムーアの資本主義批判 | やじうまUSAウォッチ | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

資本主義という名のラヴ・ストーリー

4か月近く前に町山智浩が、マイケル・ムーア(Michael Moore)の最新作 Capitalism: a Love Story (2009)をレポートしていた。同作は『キャピタリズム〜マネーは踊る〜』という邦題で日本でも公開されている。

Capitalism: A Love Story(英語、公式サイト)
12月公開『キャピタリズム マネーは踊る CAPITALISM:A LOVE STORY』公式サイト

同作は、私がマイケル・ムーア作品のなかでいちばん好きな『ロジャー&ミー』Roger & Me(1989年)の続編的な作品でもあるようだ。

年末に有楽町で先行公開されていた『キャピタリズム』を観てきた。今年に入って、順次全国公開され始めている。

以下、ネタバレ含む。

労働運動とキリスト教

さて、『キャピタリズム』の後半はクリスチャン的な切り口の新自由主義批判になっている、というのが町山の話の本題だったと思う。

ちなみに確認しておくと、ムーアがキリスト教の話を持ち出したその心は、近年の新自由主義-キリスト教福音主義の必然性のない結びつきを断ち切り、横領されたキリスト教を自分たちの手に取り戻すということだと思われる。

話しを戻すと、町山のレポート全体としては、労働運動とキリスト教との「意外な」結びつきを、アメリカの労働者文化とムーア自身の宗教的バックグラウンドから解説するという雰囲気だった。

ムーアが神学校に通っていたという話は「ストリーム」時代に「コラムの花道」でも言っていた記憶がある。ムーア自身は映画の中で、公民権運動や反戦運動に身を投じる聖職者たちに憧れていたと語っている。

ただ、町山の語り口やスタジオの反応ほど、私にとっては労働運動とキリスト教との結びつき自体は意外ではなかった。

ここ数年来、新自由主義とキリスト教福音主義との結びつきが強調されて報じられてきたので、ここへ来てアンチ新自由主義な労働運動とキリスト教の結びつきを云々するのは奇異に感じられるかもしれない。しかし、孤立した労働者を団結させる労働運動と、倫理的紐帯としてバラバラになった個人を結びつけるキリスト教とは、思想的背景は違うが、運動の方向性において近似している。よって、両者が結びつくことがあってもおかしくはない。

ちなみに、フランス語では福祉国家のことを "État-providence" と言う。「神の摂理による国家」の意味である。共和主義者たちから見れば、集権的・チャリティー的価値観で個人を包摂しようとする福祉国家は、旧価値観の体現に見えたのかもしれない。

「ムーアは政治家でもアカでもなく、素朴なキリスト者」ってホント?

ニューズウィークのコラムで町山は、映画の最後に流れるウディー・ガスリー(Woody Guthrie)の曲 "Jesus Christ" (1940) を引用しつつ「ムーアは政治家でもアカでもなく、素朴なキリスト者」と締めくくっている。

しかし、私は、この結語に疑問を感じる。

ラジオでもコラムでも触れられていないが、ウディー・ガスリーの曲の前には、朗々と謳い上げられる英語版の「インターナショナル」L'internationale が流れる。歌詞はイギリス版で、ビッグ・バンドの演奏。残念ながらクレジットは見逃してしまった。

労働歌「インターナショナル」から、社会主義社ウディー・ガスリーの曲へとつながるメドレーで締めくくられる映画を観て「アカでもなく、素朴なキリスト者」という結論を導き出すのには無理があると思う。

むしろ、ムーアのメッセイジは「アカと呼びたいならアカで結構」というものではないだろうか。

映画を俯瞰して振り返ると、映画序盤では、シェリフが実力行使でドアを打ち破り、労働者の住宅を借金のカタに差し押さえるシーンが観客に強い印象を残す。

中盤ではアメリカ大統領選挙の様子がフィーチャーされ、前共和党大統領候補ジョン・マケイン(John McCain)前共和党副大統領候補サラ・ペイリン(Sarah Palin)カリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガー(Arnold Schwarzenegger)、その他コンテイターたちが、口ぐちにバラック・オバマの政策を「社会主義」(socialism)と呼んで批判する。

オバマが選挙に勝利し、政権の座についたことに呼応して、シェリフは住居の差し押さえに協力しないとテレビで宣言し、マースィー・カプター下院議員(Rep. Marcy Kaptur)は、差し押さえに瀕した人びとに「堂々と居座りなさい」(正確には、"So I say to the American people,  you be squatters in your own homes.  Don't you leave." )と議場から呼びかける(この演説前後の畳掛けがけっこう感動的で、私の隣で観ていた初老の紳士は泣いていた)。

これに呼応して、家を差し押さえられた人とそれを支えるコミュニティーが、家を「解放する」と称して封鎖を解き、家族が家に戻る。通報によって現場に駆けつけた警察官はしばらく様子を見守るが結局諦めて退散、家族は家を取り戻す。

共和党陣営が「社会主義」と呼んだオバマが政権に就いたことで、労働者が家を失うことが避けられたという流れ。

これを踏まえれば、「アカでもなく」ではなく「アカで結構」と考えるのが順当じゃないかと私は思った。

* * *

おまけ:プロテスタントは貯蓄を奨励したか?

町山が放送内で「プロテスタントが貯蓄を奨励した」という趣旨のことを言っていた。

これにちなんで一席。

ココで疑問に思いませんでしたか——なんでプロテスタントが貯蓄を奨励するの?

正確に言えば、プロテスタントが本来奨励したのは貯蓄ではなく、いわゆる「世俗内禁欲」である。

キリスト者にとって最大の煩悶の種は「自分は本当に救済されるのだろうか?」という疑念、「救済の確証が得られない」という不安である。この問題の解決策としてプロテスタントが導入したのは「天職」(Beruf)という概念である。「救済を信じて、神によって与えられた職業=天職を全うせよ。神の召命に従うことは、神の栄光を現世に実現することであり、そうすれば汝は必ず救済される」という考え方である。

ちなみに、英語で「(神の)呼びかけ」を意味する "vocation" や "calling" が同時に「職業」を意味するのは、この「天職」概念に由来している。

儲けや貯蓄のために働くことではなく、職業人としての勤勉さをひたすらに貫き、奢侈を排して生活を合理化すること(世俗内禁欲)こそが、神の国へ通ずる道として奨励されたのだ。貯蓄が生まれるのはその副次的な結果に過ぎない。

プロテスタンティズムが貯蓄の奨励にたどり着くまでのあいだには、それなりの行程が存在しているのである。

聖職者が方便として「貯蓄せよ」と唱えることはあったかもしれない。しかし、それはあくまでもショート・カットのようなものと考えるべきではないかと思う。

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