« 爆笑問題の日曜サンデー オール芸人! 営業トーク・グランプリ(TBSラジオ、2009年6月14日(日)13:00-17:00) | トップページ | 『Quick Japan』vol.84(太田出版、2009年) »

Kakiiin(TBSラジオ、2009年6月15日(月)18:00-21:00)

○「Kakiiin」(TBSラジオ、2009年6月15日(月)18:00-21:00)

この番組は久びさに聴いた。電車の中で何となく携帯ラジオ(TalkMaster)をつけたら大槻ケンヂがしゃべっていたのでそのまま聴き続けた。みなさんにも、この人の声がラジオから聴こえると、ついつい聴き続けてしまうという人がいるかもしれない。私にとっては、他にはなぎら健壱などがそういう人。

その上、「林美雄のパックインミュージック」(TBSラジオ)に話が及び、ラジオ・ファンとしては聴き逃せない状況になってきた。面白くなってきたので録音ボタンを押す。新型車輛はやけにノイズが入るのでイヤだ。

大槻が登場したのは、「Kakiiinセレクト」というコーナーで、ゲストがなにがしかのテーマに沿って選んだ3曲を流してトークするというもの。この日は「Kakiiin × 日本のロック」というテーマ。

TBS RADIO 6月15日 Kakiiinセレクト 大槻ケンヂさん登場! (Kakiiin)

大槻ケンヂ少年にとって「林美雄のパックインミュージック」(TBSラジオ)の影響は絶大だったという話から始まり、この日の3曲もそのような影響が感じられる選曲:

頭脳警察「ふざけるんじゃねえよ」『頭脳警察3』(1972)Youtube

ヒカシュー「20世紀の終わりに」『ヒカシュー』(1979)YouTube

チャクラ「島の娘」『CHAKRA』(1980)

頭脳警察→ヒカシューと続けて聴くと、大槻ケンヂの音楽のルーツが解ったような気がした。大槻は、

僕みたいのを呼ぶから、こういう曲がかかるんですよ。普通、BOØWYとかブルーハーツとかがかかるじゃないですか、日本のロックと言えば。ヒカシューかかるっつうのは、オレうれしいねぇ。うれしい。最高〜!

と、愉しげだった。ちなみに、チャクラのヴォーカルの小川美潮は、「すぐ、そこ、サンクス」や「ミニストップ」のジングルでお馴染みかもしれない。

大槻ケンヂが出演したこのコーナーは短いコーナーではあったが、名言連発で聴き応えがあった。とっさに録音ボタン押しておいてよかったなぁ。いくつかご紹介してみよう:

僕はその頃、中学……生ぐらいか? 漫画家になりたかったんですよ。サブカルチャーなことしたかったんですよ。『ガロ』系の漫画家になりたかったんですよ。中野[この部分聴き取れず]で売ってるような漫画を描きたかったんだけども、でも、そん時に、あのぅ、ヒカシューなんてのが出てきて、「ロックって手段もあるね」ということに気付かされたんですね。

でもほんとに BOØWY が日本のロックをカッコいいものにしたと思うの。でも、僕なんていうのは、やっぱり、何て言うのかなぁ、「カッコ悪いことは、なんてカッコいいんだろう」っていう発想で、「邪道こそ王道」みたいな、「邪道こそロック。外道でなければいけない」みたいな発想でやっていたから、僕は BOØWY 派閥ではないということですよね。

さらに、日本のロックが[……]はっぴえんど と BOØWY とブルーハーツによって語られる日本の歴史が、いま創られようとしてるの。

でも、それじゃない歴史もあると思うの。そういうことを、大槻ケンヂみたいな人間が言っていかなきゃいけないとは思ってますね。

ヒカシュー・頭脳警察・筋肉少女帯が日本のロックの中心だっていうね、あのね、裏日本史を創ろうと思ってますよね。[……]歴史改竄主義って言うんだけどね、そういうのね。うぅん。

どうしても、何て言うのかなぁ、記号化されていくじゃないですか、あの、音楽って、音楽の歴史って。だから、「80年代のロックっていったら、あの曲」「このジャンルでいえば、この曲」ってどんどんどんどん決まっていっちゃって、それ以外の曲が、いい曲がかからないっていう状況が出来てきちゃうんですよ。

だから、そうしたくないと思って。それが出来るのはラジオですよ! もっと変な曲いっぱいあるんですよ。

たまたま最近、なぎら健壱『日本フォーク私的大全』(筑摩書房、1995年)を読んでいる。こちらはフォークでロックではないが、音楽の歴史について考えたりしていた。そして、友部正人の「一本道」(1972年)を聴きながら軽く涙ぐんだりしている今日この頃。そんなところへ飛び出した大槻の言葉なので、余計に印象に残った。

YouTube - なぎら健壱のフォーク講座

YouTube - 友部正人 一本道 2004年

「歴史はひとつでだけではない」と考えるだけで、清々しい自由な感覚で満たされる。

「それが出来るのはラジオですよ!」という大槻の言葉にも、一瞬胸が躍った。一瞬ね。

ラジオが苦境にあるという。改めてラジオのプレゼンスを高めるには、ラジオにしか出来ない面白さを追求するしかない。単純なことだ。

どうやら、ラジオ業界に携わっている人たちや、ビジネスとしてのラジオについて近ごろ語る人たちは、「ラジオの価値や面白さは変っていない。変ったのは外部の経済的要因だ」と考えている節がある。果たしてそうだろうか? ビジネス・マインドがそう考えるのは至極当然だし、どうやって広告を取るか、売り上げを上げるかを優先次項として具体的に実現可能なかたちで考え出すのが彼らの仕事ではある。そこにだってクリエイティヴな営為は含まれていることも理解しているつもりだ。

しかし、私のような一介のラジオ・リスナーにとって重要なのは番組の面白さだ。番組の面白さだけだと言っても良い。

大槻が示唆した、もうひとつの日本ロック史の可能性の話を聴きながら、「もうひとつのメディアとしてのラジオ」というイメージが心の中に浮かんだ。テレビが王道で、消費社会的で、巨大なら、ラジオは、それを常に相対化する、邪道で、創造的で、小さなメディアになってしまえばいい。

私は、リスナーの側にもクリエイティヴィティーを求めるような、別の言い方をすれば、文化の創造と破壊に自らも加担しているという高揚感をリスナーが感じられるような番組を聴きたいと思っている。

そういう陰謀をこっそり進めるのに、ラジオはうってつけではないかと思うのだけれども。

Google

|

« 爆笑問題の日曜サンデー オール芸人! 営業トーク・グランプリ(TBSラジオ、2009年6月14日(日)13:00-17:00) | トップページ | 『Quick Japan』vol.84(太田出版、2009年) »

AM」カテゴリの記事

TBSラジオ」カテゴリの記事

ラジオ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Kakiiin(TBSラジオ、2009年6月15日(月)18:00-21:00):

« 爆笑問題の日曜サンデー オール芸人! 営業トーク・グランプリ(TBSラジオ、2009年6月14日(日)13:00-17:00) | トップページ | 『Quick Japan』vol.84(太田出版、2009年) »