「DJ Interview 54 小島慶子」『ラジオライフ』2009年7月号(三才ブックス)
○「DJ Interview 54 小島慶子」『ラジオライフ』2009年7月号(三才ブックス)
小島アナ、『ラジオライフ』に登場
ケーブル・テレビをタダで見る方法、鍵を破る方法、偽札をつくる方法などを取り上げてきた雑誌『ラジオライフ』。あくまでも世界の謎を解き明かすために取り上げている決まっている、決まっているじゃないか!
ただ、私のようなラジオ番組が好きなラジオ・ファンとしては、常に気にはかけているものの、常に買うわけではない、そんな雑誌でもある。
ただ、もうすぐ先月号になる今月号を書店でチラッと見て、小島慶子TBSアナウンサーのインタヴューが良かったので購入した。
小島アナは、「小島慶子 キラ☆キラ」(TBSラジオ、月〜金13:00-15:30)で活躍中ではあるが、前番組の「ストリーム」(TBSラジオ、2001年10月1日〜2009年3月27日、月〜金13:00-15:30)のコアなリスナーからは必ずしも好評を得ていないようだ。政治ネタがフィーチャーされることがなくなったことがその原因のようだ。
そういう人たちとは逆に、むしろ私にとっては「BATTLE TALK RADIO アクセス」(TBSラジオ、月〜金22:0-24:00)を担当していた頃の小島アナのハードなイメージが強かったので、「お昼のソフトな話題でもこんなに実力を発揮するんだなぁ!」と好意的に評価している。
私は応援しております。
「「ストリーム」に比べるとヌルい」とか軽口言って馬鹿にしていた人、君は甘い! わかりやすくトンガることは意外と簡単で、誰にでもできる。「キラ☆キラ」の一見ユルいスタイルの底流にどのような想いがあるのかが、このインタヴューでよく解る。
”この世は捨てたもんじゃない”
商品化された情報が人を不自由にするという話など、すでに放送の中で触れられた内容も含まれている。あるいは、インタヴューを受けることで整理された持論を放送で話した、という時系列かもしれない。そのへんは不明。
なかでも次のふたつの発言が印象深かった:
でも昭和っていうか…『それじゃあ皆さん、お待ちかねのHな話をしますか!』ってのはダメですよ。そういう場の作り方は避けたいんです。みんなHなんです。そうやってHやバカなことを考えてるんだけど、同時に生活を大切にしたり、誰かのことを真剣に心配したり、真面目に哲学的なことを考えたりするんです。それが人間なんですよ。(p.19)
ホント何でも大丈夫ですよ。先日もホモセクシャルの方のメールを読みましたけど…男が男に発情する。ありですよ。それをね、『こういう差別はいけません。こういうことも認めていきましょう』っていう方法もありますけど、『いいのよ。何を書いてもOKですから』という方法もある。かつては『差別はいけません』っていう方法をやりました。いい経験でしたし、今でもそれは必要な場であることは確かですけど、今の私は違う方法をやってるんですよね(p.20)
上のふたつの発言からは自由のにおいがするので、読んでいてとても気分がいい。
自分自身の多様性に気付けば、他人の中の多様性に気付くことが出来る。となれば、世の中が多様でないはずがないことにだって気付くことが出来る。
インタヴューの結びはこうだ:
大学4年生の時、私はどうしてアナウンサーになりたいのか、その理由が分からなかったんです。ただその時に”この世は捨てたもんじゃない”って世の中の人に感じてほしいって思ったんです。でも人に伝えたいくせに自分ではそう思えない部分があったんですよ。[……]この世は下らないことや取るに足らないことで満ちあふれているから、この世は捨てたもんじゃない、ってこの1か月で感じましたね(p.21)
この世に対する耐え難い絶望が極限に達すると、自分に対する攻撃(自殺など)や他者に対する攻撃(他者に対する中傷や殺傷など)にかたちを変えることが実際にある。「この世は捨てたもんじゃない」と感じられれば、それは防げるかもしれない。そこまでの限界事例でなくても、「この世は捨てたもんじゃない」と考えることがストレスを吸収するということもあるはず。
ただ、正直なところ私は未だに「この世は捨てたもんじゃない」と心から実感できている気がしない。というのも、現状を肯定することは堕落を意味するのではないかという迷いが払拭できないからだ。よって、「”この世は捨てたもんじゃない”って世の中の人に感じてほしいって思ったんです。でも人に伝えたいくせに自分ではそう思えない部分があった」という部分をとても共感を持って読んだ。
私はあいだを取って、「この世は捨てたもんじゃないはずだ」と思うようにしている。
インタヴュアー薬師神亮によるインタヴュー後記に興味深い記述があった:
インタヴューの最後に彼女が漏らした「この世は捨てたもんじゃない」。小生は今は亡き林美雄アナを思い出した。まだ高校生だった小生が、彼の番組から学んだのはまさにこの言葉だった。そのことを彼女に告げた時、みるみる彼女の目が潤み始めた。ラジオを教えてもらった林氏に、この番組を聞いてもらえないのは悔しいと言う。(p.21)
小島アナも林美雄チルドレンのようだ。確か、新人研修のときのメンターが林美雄アナウンサーだったと聞いた記憶がある。「アクセス」で、宮崎哲弥が「林美雄のパックインミュージック」(TBSラジオ)の熱心なリスナーだったと語った時に、小島アナが林アナから研修を受けたと言っていたような気がするが、記憶違いかもしれない。
日増しに、林美雄を知らずに育ったことが残念に思えて来る今日この頃。
※蛇足:直接は関係なさそうで関係ある言葉:
僕はねぇ、あのねぇ、いちばん大事にしているのはね、あのう、まぁ、そのぅ……いつも居るその風景が好きですねぇ。その風景で、そこを歌うこと自体がホントの反戦だと思う。
なにもね、「反戦で〜す!」てって言うのはね、あんなものはね、中途半端です。僕はそう思ってます。
高田渡、「筑紫哲也 NEWS23」
TBSテレビ、2004年7月2日(金)
「筑紫哲也 NEWS23」TBSテレビ、2004年7月2日(金)
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コメント
初めてコメントします。
興味深く、楽しいエントリを、いつもありがとうございます。東京在住の、おっさんのラジオファンです。
TBSで「ストリーム」をやっているころから、文化放送の「大竹まこと ゴールデンラジオ!」を聴いているクチです。そうしたら、「小島慶子 キラ☆キラ」が始まり、今ではどちらか一方を録音して、両方を聴く日々です(ただ、両番組とも火曜日がウィークポイントかも、と勝手なことを)。
小島アナと林美雄アナのエピソード、ぐっときます。当方も林パックに夢中になり、いまだラジオを聴く日々です。そんな小島アナのスタンスと、高田渡氏に共通点を見るMasaruSさんに、強い共感をおぼえます。
私もラジオのブログをやりたくなりました。開設しましたら、またお知らせします。
急に暑くなりました。ご自愛ください。
投稿: mm | 2009年6月27日 (土) 12時21分
普段、これあまり読まないけど、
今回のは買おうかな・・・?
投稿: とくながたかのり | 2009年6月28日 (日) 06時57分
小島信者乙。
投稿: | 2009年6月28日 (日) 20時40分