BATTLE TALK RADIO アクセス(TBSラジオ、2009年6月9日(火)22:00-24:00)
○「BATTLE TALK RADIO アクセス」(TBSラジオ、2009年6月9日(火)22:00-24:00)
この日は「核実験、ミサイル発射、そして拉致・・・。今の北朝鮮に対して、日本としては、制裁や圧力の強化など強硬路線で行くべきだと思いますか?」というバトルトークのテーマで、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(=家族会)元副代表で、拉致被害者蓮池薫氏の兄、蓮池透氏がゲスト。
蓮池氏の知性に驚嘆する放送だった。いくつか彼の発言を引用してみる:
私自身は左でも右でもありません。被害者の救出が第一だと考えています。(放送で紹介された著書の一節)
[蓮池薫氏は]要するに日本と北朝鮮の両方知っていて、要するに、その、状況を複眼視できるという能力を非常にもってますので、そういう意味で、彼の、その、発言というのは——まぁ、彼はそう思ってないかもしれませんけど——私には相当影響を与えてる。
私が言いたいのは、その、拉致被害者の人権というのを全く考えないで、あの、要するにそういう政治のカードに使ってしまうという、北朝鮮もそうですけども、日本政府にもそういうところがあったんじゃないかと。
最近、やたら、その、勇ましい言葉が聴こえて来て、それはウケがいいですよねぇ。「核実験してけしからん」と、あのぅ、「強硬で行くんだ」と。麻生[太郎・内閣総理大臣]さんもおっしゃっていましたし。で、基地攻撃とかいろんな話が出てくるぐらいですから。
ただ、それがですねぇ、あの、まぁ、自民党・与党の政権浮揚策みたいに利用されているとしたら、非常に不健康だと思いますし、そこはしっかり考えなきゃいけないと思うんですよね。
振り返ってみれば、横田滋・早紀江夫妻は、拉致被害者である娘のめぐみさんの血を分けた、孫のキム・ヘギョンと会いたかったに違いない。私は当時、新聞やニュースを見ながら「孫に会いたいと言う資格がふたりにはある」と思っていた。
しかし同時に、長らく無視され続けていた拉致問題が政局の偶然でやっと日の目を見ることとなったその時を、年老いたご夫妻はラスト・チャンスと考えていたにちがいない。家族会の会長であったという立場もあっただろう。
その板挟みの結果として、ご夫妻は、拉致議連的・森派的言説をなぞる発言をせざるを得なかったのではないかと私は想像する。家族を奪還するという目的実現ためには、政治的アリーナのプレイヤーにならざるを得なかったのだろう。
その意味では、蓮池氏の「私自身は左でも右でもありません。被害者の救出が第一だと考えています」という言葉を聴いて、私は胸のつかえが取れた。強硬であれ対話であれ、どんなかたちであれ、家族を取り戻すということが至上の価値であっていいはずだ。それが国民としての当然の権利であり、国家はそれを最大限にサポートする義務があるはずだ。
当初は強硬な制裁論者と思われていた蓮池徹氏は、最近では「裏切り者」「変節者」などと呼ばれることもあるとか。少なくとも私の耳には、極めて現実主義的かつ根源的で、筋の通った真っ当な主張にしか聴こえなかったけれども。
この日の放送で最も興味深かったのは、蓮池氏の次の発言:
皆さん世間のかたは誤解されているんですが、当時の安倍[晋三・内閣総理大臣補佐官(当時)]さんとか中山[恭子・内閣官房参与(当時)]さんとかが[拉致被害者の北朝鮮への帰国を]必至に止めたとかいう話があるんですけども、そうではないんですよ。
安倍さんも中山さんも当然、チャーター機を使ってまた北朝鮮に戻るという風に考えていたんだと思うんですよ。それをわれわれ家族が必至になって止めて、これで戻してしまったらもう二度と日本の地を踏めないという思いがあって、まぁ、とにかく必至でしたね、10日間というものは。
で、ようやっと、その、弟が考えを変えてくれて、で、日本に留まって、非常に確率は低いけれども子供たちを日本に呼んでくれ、というような決断をしてくれたんで、その意を受けて初めて安倍さん・中山さんが、「まぁ、本人がそう言ってんだったら、まぁ、意思を尊重しよう」というようなことで、まぁあのう、日本に滞在延長というようなかたちで政府にも声明を出して頂いたっていうのが本当のところなんですね。
当時メディアでは、安倍晋三や中山恭子の主導で、拉致被害者を北朝鮮に戻さないという決断が下されたと報道されていた。あまつさえ、そういう再現ドラマすらテレビで見た記憶がある。しかし、実際それは真っ赤なウソだったということになる。
ご家族の強い主張がなければ、安倍・中山は拉致被害者を北朝鮮に帰していたということになる。
当時は、安倍晋三を次期首相に推すためのメディア戦略が華やかなりし頃だった。まさか、彼が腹をこわしてショボく失脚するなんて誰も思いもしなかった頃の話だ。彼に次期首相候補としてハクを付けさせるために、拉致被害者をカードにして、こともあろうに国内に向けて切ったという卑しさ。「拉致被害者の人権というのを全く考えない」という蓮池氏の言葉の通りとしか言いようがない。
ヒロイックなタカ派言説に酔って昇天しているバカは、蓮池氏を見倣って、もう少し自分の頭を使って考えたほうがよいのではないかとご心配申し上げます。国家の威を借りた仔ギツネに過ぎない君たちの声高な叫び声は、被害者のかたたちを不幸にしかしていない。
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コメント
私も火曜の「アクセス」聞きました。「実話ナックルズ」昨年11月号に掲載されていた蓮池(兄)さんのインタビューはさらにカゲキで、「本当に返して欲しいなら北朝鮮に金を払ってでも奪還すべきだ」とまで言っていました。まったくその通りだと首肯したものです。それが被害者家族の本音でしょう。
ところが当の被害者家族の本音は封じられ、いつの間にか「制裁」だの「敵基地攻撃」だのという言葉にすり代えられ、いまの家族会はタカ派政治家のプロパガンダの道具にされていますね。私は「安倍ちゃんたちはむしろ拉致は解決しない方がいいと考えている」などとネタに書いたことがありますが、ラジオで蓮池(兄)さんが同様の発言をしていたのには驚きました。
まさに拉致被害者家族は「二重に拉致」されているということですな。もっとも、それとは別に最近の北朝鮮は何だかなあと思ったりもしますが・・・。
投稿: やきとり | 2009年6月11日 (木) 02時51分