北野 誠『死んだら、あかん!』(メタモル出版、2009年)
○北野 誠『死んだら、あかん!』(メタモル出版、2009年)
※少し加筆(2009年4月16日)
北野 誠『死んだら、あかん!』(メタモル出版、2009年)、25日を待たずに買ってしまった。すみません。
「25日?」という人はこちらを:
日曜日夕方の時点で、紀伊國屋書店新宿南店のタレント本コーナーでは平積みになっていた。まだ在庫があるところにはあるようだ。他の本を買いにいった時にひとまわりしていると視界に入ってしまい、見たらすぐに買いたくなってしまった次第。
Amazon.co.jp では概ね20〜30位台を行きつ戻りつしていたが、ちょっと落ちてきた模様。発送状況は「通常1~2か月以内に発送します」。増刷されることを期待する。いまAmazonマーケットプレイスで倍近く払って買っても山師に金が渡るだけなので、なるべく定価で普通に買いましょう。
読んでみた
先に買ってしまったので、いま購入を迷っている人のためにレヴューめいたことをしてみようと思う。
『死んだら、あかん!』を読んでんでみた感想としては、思い入れで評価が何割増かにはなっていると思うけれども、良い作品だと思った。
よって冷静な判断のために、最初に2つだけ批判めいたことを言っておこう。
まず、細部の描写がもう少し精緻であれば、作品の世界に引き込む力が増すのになぁと思った。誠さんは小説家ではないし、ご本人も小説を書いたつもりはないだろうから、見当違いな要望かもしれない。
次に、自伝的各章と最後の提言の章が上手くつながっていない印象もうけた。最後の提言の章の内容を自伝の各章に埋め込んで物語として伝える構成にして、自伝だけの本にしたほうが良かったのではないかと思わなくもない。ああいう構成になっているのは、提言やメッセージを伝えることが誠さんにとって重要だったからではないかとは思う。
さて、ここからは面白かった部分。
昭和30年代が憧憬をもって商品化されることが著しい昨今だが、そういう作品がマーケティングのために捨象してきた昭和30年代の別の顔が、誠さんの少年時代の描写ではリアリティーをもって描かれていると思う。これは結構重要なのではないかと思う。暗く重いトーンに支配されている作品だが、あの時代、みんながみんな東京タワーを見上げながら希望に満ちていたわけではないはず。大阪市内の話だが、都市居住者でない地方出身者にも共感できる部分が多いのではないかと想像する。
この作品では、お父上の自殺を中心に据えた誠さんの半生が描かれているが、読んでいると、自殺後のタレントとしての苦境と、誠さんの現在の苦境がダブってしまう。ただ、やしきたかじん、上岡龍太郎、嘉門達夫、竹内義和、板井昭浩といった人びとに支えられて当時の苦境を乗り越えてゆく様子を読むと、きっと現在の苦境も色いろな人たちに支えられて耐え忍んでおられるのだろうと、心配しつつ、同時に安心もした。
アニキとの出会いから「サイキック青年団」誕生の瞬間までの流れも描かれていて、リスナーとしては純粋に興味深い。番組打ち切りについても多くは語られていないながらも言及されていて、ABCラジオへの謝辞も捧げられている。
「紀伊國屋襲撃ツアー」の節はコントみたいで可笑しい。初の番組本を出した時に、前著『ザ・サバト——不条理マニュアルBOOK』(プラザ、1988; 1991; 1997年)のサイン会で人を集められなかった2人は書店からサイン会を断られたとのこと。「サイキック」の力を書店に見せつけるためリスナーに呼びかけた顛末が描かれている。紀伊國屋の前に予想を超える大勢のリスナーがひしめいているのを見たおふたりがビビって逃げようとすると、見つかって追いかけられるというドタバタ劇。
このエピソードを読んでいると、ネットで本を買う習慣がないリスナーは紀伊國屋書店で買うのがリプライとして美しいのではないかという気がした。どうでしょう? 買うだけね。集まったりしないように。
本全体としては、誠さんの半生の骨組みを印象的に素描しているという感じで、そういう意味では映画の原案などに向いているのでは。シネカノンあたりが映画化すればきっと良い作品が撮れるような気がする。難しいとは思うけれど。
※例の件、新情報が少し出た模様。(少し加筆)
(1)直接聴いたわけではないが、「誠のサイキック青年団・リス ナー's BBS」の書き込みによると、桂ざこばが「元気イチバン!芦沢誠です」(ABCラジオ、2009年4月14日(火)15:30-16:54)で、いかにも桂ざこば的な方法で誠さんにエールを送ったとか。同時に、事の真相をほのめかす発言もしたとのこと。
(2)スポーツ紙に一歩踏み込んだ記事が出た。下記の記事には「芸能関係者を根拠もなく誹謗(ひぼう)中傷したとして」とある。桂ざこばの発言とも符合している。ただし、記事にはこの情報の出所への言及はない:
北野誠 ラジオで謝罪、活動自粛を発表(スポーツニッポン、2009年4月14日)
芸能関係者を根拠もなく誹謗(ひぼう)中傷したとして、テレビ、ラジオの全レギュラー番組を順次降板する方向で調整しているタレントの北野誠(50)が13日、出演している中部日本放送のラジオ番組「ごごイチ」で騒動後初めてコメントした。
冒頭で「他局のラジオ番組、および関連イベントにおきまして不適切な発言をしてしまったため、関係の皆さまにご迷惑をおかけしました。あらためてこの場を借りて深くおわび申し上げます。私自身と(所属の)松竹芸能との話し合いの結果、当面、芸能活動を自粛します」と謝罪。同番組の司会も27日の放送を最後に降板する。
一方、所属の松竹芸能はこの日、北野を無期限の謹慎処分とし、関係する役員、社員を懲戒処分にすると発表。同社のホームページで「今後、当社内で再発防止を徹底すると同時に、全社員がタレントマネジメントのプロフェッショナルとしての矜持(きょうじ)を持ち、高い倫理観と強い危機管理意識を持ち、職務に励む所存です」とした。
北野は関西ローカルのラジオ番組「誠のサイキック青年団」(朝日放送)で不適切な発言があったとされ、先月16日の放送で突然、打ち切りとなっていた。
(3)『週刊文春』および『週刊新潮』2009年4月23日号で、例の件が報じられている。「芸能関係者」で決まりのようだ。
『週刊文春』のほうがより断定的な筆致で、引き金となったとされる誠さんの発言が具体的に数例挙げられている。ただ、決定的なところは書かれていない。
『週刊文春』に書かれていないポイントが『週刊新潮』には書かれているが、言わば半分しか書いてない感じ。
もって回った言い方ですみません。
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コメント
こんにちは。いつもお世話になっております。ウェブラジオFMCの榎田信衛門でございます。
此処に記入して良いものか迷いました。もし不都合がある場合は削除して下さいませ。
今改編期を境に、日本のラジオ(概ねAMになるかと思いますが)が妙な方向に傾きつつある‥そんな懸念を抱いております。
只の老婆心なら良いのですが‥。
最近の「サイキック‥」「ストリーム」等々‥その他いくつかの地方局でも余りにもリスナーを無視した改編の動きがあるやに伺っております。
今、ラジオは何処に行こうとしているのか?
そもそも日本のラジオは何だったのか?
手前味噌で恐縮ですが、今度の「QIC」全枠使って考えてみようと思っております。
ぜひラジオ好きの皆様からのフリーハンドなご意見を伺いたいと考えております。ご投稿をお待ち申し上げております。
(結局告知ですみません)
http://www.fmc.or.jp/qic.html
投稿: 榎田信衛門 | 2009年4月15日 (水) 01時52分
こんばんは、お久し振りです。
ドウも、今回の件は…松竹芸能よりも大きな某大手プロダクションが絡んでいるとか、いないとか…?
其処に所属すると言うか…グループを含めてスゴイ、シェアを有する芸能プロからの圧力だと言うのが専らみたいですね。
でも、此れも根拠がないというか…放送内容よりも、番組の有料イベントや公開放送時のオフレコ発言を録音して関係先にチクッたとか…ドウだか?
でも、名誉毀損で訴えるとか…其れこそ、以前にあった山本リンダ事件のように…前に出た遣り方でなく、裏から圧力(?)を掛けて芸能界から抹殺しようとする遣り口には…ゾッとしますよ。
北野誠の本を購入して、支持率を上げようといった試みもあるそうですが…懐疑的ですよ(涙)
投稿: 花餅屋の太夫元 | 2009年4月15日 (水) 02時05分