町山智浩のザ・邦画・ハスラー! 20世紀少年<第2章>最後の希望、「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」(2009年2月21日(土)21:30-23:30)
○町山智浩のザ・邦画・ハスラー! 20世紀少年<第2章>最後の希望、「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」(2009年2月21日(土)21:30-23:30)
私は、浦沢直樹のファンだ。
『YAWARA!』がきっかけで、『MASTERキートン』で完全にハマった。つい最近、数ヶ月がかりで『MONSTER』のアニメ74話をYouTubeで見終わった。『モーニング』で連載中の「BILLY BAT」も愉しみにしている。
しかし『20世紀少年』は、なぜかまだ原作コミックすら読んでいない。
その『20世紀少年』が映画化されているのも知っている。しかし、いっさい見るつもりはない。テレビで流れている予告編で充分ゲンナリだからだ。ポッドキャストの中でも言及されていたが「あいつ……おまえか?」なんて言われたら、こっ恥ずかしくて目も当てられない。
ただ、古田新太が演じ切る春波夫の「ハロハロ音頭」はスゴい。天才としか言いようがない。
○TBS RADIO 町山智浩のザ・邦画・ハスラー!「20世紀少年<第2章>最後の希望」 (ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル)
このポッドキャストは、映画を観に行こうと思っている人は聴かない方がいいかもしれない。きっと、観に行くのをやめようと決心してしまうからだ。しかし、そのリスクを冒しても聴くべき面白さ。あるいは、観た後に聴くとスッとするかもしれない。
町山智浩による物語の構造分析は鮮やかで、しかも聴いていて面白いというところが二重にすごい。映画ばかりでなく原作コミックのプロットの不備まで衝いてしまっている。
「原作はいいけど映画は……」という言い方がもはやできない。映画化を機に原作コミックを大人買いしようと思っていたが、ポッドキャストを聴いて迷いが出きた。
映画評の冒頭で町山は、ショット・ガンの弾痕描写におけるリアリズムの瑕疵を指摘するが(私もガン・ファンなのでこういうのは気になる)、そもそもこの映画を成功させるには徹底したリアリズムを以って撮る必要があった。どこかで堤幸彦は、原作コミックに忠実に撮ったと言っていたが、あの漫画のファンタジックなディストピアの実写化においては、その選択がそもそもの間違いだったと言える。
そもそも近年の日本の娯楽映画あるいはテレビ・ドラマの多くは漫画的に様式化された演出やカメラ・ワークが目立つ。あれは結局は実写では機能しないと私は思う。日本の映像コンテンツを習慣的に見てきた人たちは、コンテンツを自分の頭の中で変換してリアリティーを補完することに長けてしまっている(時代劇の殺陣はその典型)。映画およびテレビ・ドラマの監督は、こうした鑑賞者の能力に甘えてきたのかもしれない。
町山は、演出ばかりでなく「シナリオの問題」を指摘する。
脚本は、浦沢のブレインで現在フリーの漫画編集者の長崎尚志。かつて私がハマった『プルンギル——青の道』(作画・クォン・カヤ)の原作者・江戸川啓志や、最近ハマっている「ディアスポリス 異邦警察」(作画・すぎむらしんいち)の原作者リチャード・ウーも長崎の変名とのこと。「ディアスポリス 異邦警察」は、表面上は割とベタなサスペンス・アクションなのだが、「外国人不法滞在者のための裏都庁」という設定が権力とは何かという問題系をラディカルに問うており、その政治学・社会学的センスの秀逸さに脱帽だ。ストーリーが、設定の単なる説明に終わらず、ちゃんと話になっているところがさらにスゴい。漫画編集者・原作者としての長崎の才能にもはや誰も疑義を差し挟む余地はないだろう。
この長崎について町山は、その才能は認めつつ、「映画と漫画は違うんだってことが解ってないんだよ、はっきり言って」と一刀両断。いまや漫画編集界の寵児である長崎を、このようなかたちで堂々と批評できる人は町山の他にいないだろう。
この『20世紀少年』という長大なコミックおよび映画は結局のところ、原恵一[監督]『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年)と全く同じ話で、「1時間半の子供向けアニメ」ながらも、同じテーマを見事に描き切った上にその先の展望までも見せているこちらのほうがはるかに優れているとのこと。名作だとの噂は聞き及んでいたが、とんでもないティアー・ジャーカーだと聞いてビビって敬遠していた。思い切って購入することにした。
町山はさらに、映画『20世紀少年』の最も良い結末まで提案している。コレも見事。
そもそも『20世紀少年』は1本で撮るべきだったのではないか、そう私は思っている。
※蛇足
コーナー最後の方で高城剛・沢尻エリカ主演で谷崎潤一郎『痴人の愛』を映画化すべきだというネタが出たが、エリカ様はピッタリな気もするが、高城剛と河合譲治はイメージが違いすぎる。
ちなみに、ラジオ・ファン的関心から言うと、増村保造[監督]『痴人の愛』(1967年)は、何とわれらが小沢昭一御大が主演のココロだ〜!
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コメント
おはようございます。やはり「町山智浩のザ・邦画ハスラー」に注目(耳)なされましたか。
今朝は蛇足部分についてコメントしますね。
小学生低学年のころ、父親のバイクに乗せられて、映画をいっしょによく観に行きました。それはたぶん父が観たい映画ばかりで、子ども心に「こんな映画みていいのかなあ?」って映画ばかりで…
その中でいちばん衝撃的だったのが『痴人の愛』でした。
もちろん、このジャケット写真にもなっている安田道代が小沢昭一の上に馬乗りになって、ピシピシやっているシーンが、もう忘れらなくて…
(一種の映画のトラウマですねえ)
トラックバックさせていただきます。
投稿: 月本夏海 | 2009年2月26日 (木) 07時54分
ストリームが終了だそうです。
http://www.tbs.co.jp/company/newsrelease/20090225.html
投稿: わっきぃ | 2009年2月27日 (金) 07時01分
町山氏の邦画ハスラーは前回のポニョもそうですが明快かつ笑えますよね。
ワタシも浦沢作品は好きですが(パイナップル・アーミーからのファンです)、20世紀少年だけは・・・というよりもそれ以降の作品はあまり好きではないのです。彼本来の持ち味を殺してしまっているような気がして・・・。
そうそう、わっきぃさんも書かれてますが「ストリーム」、正式に終了がアナウンスされました。
非常に優良コンテンツだと思っていただけに非常に残念です。
「大竹まことのゴールデンラジオ」に押されたんでしょうかね。
(実際面白いんだけど)
投稿: マサやん | 2009年2月28日 (土) 00時44分