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安住紳一郎の日曜天国(TBSラジオ、2009年1月18日(日)10:00-12:00)

○「安住紳一郎の日曜天国」(TBSラジオ、2009年1月18日(日)10:00-12:00)

 

醤油マニアの逆襲——そういった趣の回だった。

メインの安住紳一郎TBSアナウンサーが自分の名前をネット検索したところ、関連キーワード候補のなかに「安住紳一郎 醤油」というものがあったそうで(私が検索したときは出なかった)、これは昨年の放送で安住アナが5年来の醤油のコレクターだという話をしたことに関連しているというのが安住アナの見立てだった。

「日田のスーパーで大声」(にち10ポッドキャスティング、2008年12月7日放送分)

期待に「鼻の穴ブンブク広がって」検索結果をクリックしてみたところ、褒められているかと思いきや悪し様にけなされていた——という導入から始まるのが今週のオープニング・トーク:

「コーラのライトを飲んだときの気持ちだよ」(にち10ポッドキャスティング、2009年01月18日放送分)

ロケで出張の多い安住アナは、各地で醤油を買い求め、テイスティングし、ラベルとテイスティングの結果をファイルに記録しているとのこと。この話がめっぽう面白く、私は笑いっぱなしだった。


※上は想像図

この放送をきっかけに、ラベル・コレクション用のバインダーに、何か別のものをスクラップしてみようという人が出てくるかもしれない。

アーカイヴのつくり方や評論の語彙とスタイルが確立している既存の蒐集趣味の方法論を借用して、自分ならではのテーマを追求するというやり方は、これから何かをコレクションしてみようという人にとって、ひとつのヒントになると思う。既存の「高尚な」趣味に対するアンチテーゼにもなっていて面白い。

褒めてばかりだとウソくさいので、ちょっとだけ些末な点にツッコむと、バインダーの表紙にシャトーの絵とともに記してあるらしい "collection de vins" の読み方は「コレクション・ドゥ・ヴィンズ」ではなく「コレクシオン・ドゥ・ヴァン」だ、フランス語なので。また、ラベル・レコーダーの項目 "COLOR & APPEARANCE" の "APPEARANCE" は「存在感」ではなく「見た目」「外観」の意味で、ここでは色("COLOR")以外の視覚情報を "APPEARANCE" で総じていると思われる。

ともあれ、アシスタントの中澤有美子アナウンサーが言うように「すごい完成度」。安住アナは「ね、実物持って来ないほうがよかったでしょ? 完全におかしい人の出来上がりだから」と自嘲気味に語ったが、多少気持ち悪い水域に達してこそ、リスペクトに値する本物のマニアだ。実際、私も醤油薀蓄の波状攻撃を耳にして心底感心した。

「トップ・ノートを感じて頂きたい」「味わうほどに奥深い」「醤油はじめたいなぁと思ったら、この辺りからいくのがいいですよ」というフレーズがツボだった。

言及された醤油(言及順):

チョーコー醤油(チョーコー醤油株式会社:長崎県長崎市)
フジジン醤油(富士甚醤油株式会社:大分県臼杵市)
ヤマト醤油(合資会社山中商店:長崎県雲仙市)
カネヨ醤油(合資会社横山味噌醤油醸造店・有限会社カネヨ販売:鹿児島県鹿児島市)
○マルマタ醤油(マルマタしょう油合資会社:大分県日田市)
カニ醤油(可兒醤油合資会社:大分県臼杵市)
キッコーマン醤油(キッコーマン株式会社:千葉県野田市)
ヒゲタ醤油(ヒゲタ醤油株式会社:千葉県銚子市)
ヤマサ醤油(ヤマサ醤油株式会社:千葉県銚子市)
アキコー醤油(株式会社秋幸醸造:和歌山県田辺市)
てんおー醤油(天王醸造株式会社:和歌山県田辺市)
ギノー醤油(義農味噌株式会社:愛媛県伊予郡松前町)
ホシサン醤油(ホシサン株式会社:熊本県熊本市)
キッコーショウ醤油(正田醤油株式会社:群馬県館林市)
キッコーショウ醤油(柴沼醤油株式会社:茨城県土浦市)
キッコーニホン醤油(日本醤油工業株式会社:北海道旭川市)
○キッコーノザキ醤油(不明)
キッコーナン醤油(日南工業株式会社:秋田県由利郡仁賀保町)
キッコーセン醤油(キッコーセン醤油醸造株式会社:山形県新庄市)
キッコーゴ醤油(近藤醸造株式会社:東京都あきるの市)
○キッコーブ醤油(繁田醤油株式会社:埼玉県入間市)
キノエネ醤油(キノエネ醤油株式会社:千葉県野田市)
ヒガシマル醤油(ヒガシマル醤油株式会社:兵庫県たつの市)
○オーギ醤油(石川県?)
マルテン醤油(日本丸天醤油株式会社:兵庫県たつの市)
ヤマイ醤油(ヤマイ醤油株式会社:兵庫県たつの市)
マルサ醤油(合資会社マルサ醤油:高知県四万十市)
ニビシ醤油(ニビシ醤油株式会社:福岡県古賀市)

安住アナは、以上の醤油について資料なしで語り切った。

東京都内にお住まいの方であれば、各都道府県のアンテナ・ショップなどで手に入る地醤油もあるかもしれない。安住アナの話では、全国に1500もの醤油メーカーが存在し、人口10万人にひとメーカーという計算になるのだとか。

東京のアンテナショップ(「レッツエンジョイ東京」内)

九州出身の私としては、安住アナ一番のお気に入りの「ホシサン」、および「フジジン」「ニビシ」といったブランド名がとても懐しかった。

ついでに、醤油メーカーのロゴと商号に亀甲紋と「キッコー~」の名が多いのは、「キッコーショウ」の柴沼醤油を起源とし、他の醸造元がこれに倣うことで広まったためだとか:

柴沼醤油 300年の歩み(柴沼醤油ウェブサイト内)

聴きながら私は、正直言って安住アナにちょっと嫉妬していた。

私はこれまで何かをコレクションした経験がほとんどない。

一度、世の中の過剰なラーメン・ブームに鼻白んでいた時期に、「だったらオレはワンタンを極めてやる、しかもカップ・ワンタンだ!」と意気込んで、カップ・ワンタン・マニアになろうと決意したことがある。ワンタンが嫌いだという人に会ったことがなかったのと、この決意を友人に密かに打ち明けたら結構ウケたので、その時は「イケる!」と確信した。

しかし、近所のスーパーなどを廻って、置いてあるカップ・ワンタンを全種類買い求め、「他にもあるはず」とネットでも検索してみたものの、意外と種類が少なくてガッカリ。ウケようという心根の卑しさも災いしたのだろうか、マニアの世界の門前で挫折し、うなだれた。

時間をかけなければ質量ともにコレクションとしての深みは出てこないし、時間をかけるに値する主題自体の奥深さも必要だ。自分自身の意気込みばかりでなく、対象の選択も意外と重要だと知った。

オープニング終盤の安住アナ曰く:

ただしですねぇ、最近気づいているのは、実は醤油より味噌のほうが面白いらしいんですよ。えぇ。その事実に気づいちゃったんですよ。

マニアの道はけもの道。一度迷い込んだら終りはないようだ。

※参考サイト

しょうゆ情報センター(全国醤油工業協同組合連合会ウェブサイト)

醤油系れとろ看板(「れとろ看板写真館(琺瑯看板)」内)

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コメント

この回はポッドキャストで聴いて改めて
私の仲の安住アナは完璧にオタク化いたしました。
すでに話し方や「間」のオタクであり
さらに醤油オタクでもあったとは!
安住アナの奥深さを改めて見直すとともに
他の同僚アナの薄っペラさを感じました。
精神面に気を付けて安住アナがんばれ!

投稿: お気楽 蘭々 | 2009年2月25日 (水) 13時26分

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