爆笑問題 日曜サンデー(TBSラジオ、2008年11月9日(日)13:00-17:00)
○「爆笑問題 日曜サンデー」(TBSラジオ、2008年11月9日(日)13:00-17:00)
小沢昭一登場
「小沢昭一の小沢昭一的こころ」(TBSラジオ、月〜金12:20-12:30)が35周年を迎え、ラジオ好きを自認する者の多くが一目置くであろう小沢昭一が「ここは赤坂応接間」のゲストだった。あっという間に時間が過ぎ、心から愉しめた。
それにしても、相変わらず太田光は、大御所の先輩芸能人に気に入られているなぁ、と感じた。
「疑り深いこと」についての話は特に秀逸だった。
「疑り深い」という立場をとることは、不同意を表明しつつもその理由が自分にある振りを装う、高等な抵抗のあり方だと心得た。
明らかに反主流派的な立場にありながら、表面に教条的な闘争のにおいを感じさせず、代わりに笑いのオーラを漂わせる小沢の飄々とした雰囲気が、私は好きだ。いつの間にか笑っている自分に気付くというのは本当に幸せだ。
「直接的官能性」
面白かったところを書き起こしても、決してその面白さは伝わらないだろうから、そういう野暮なことは今回はやめておく。聴けなかった人はせいぜい後悔して下さい。
聴かないと伝わらないが聴けば必ず伝わる愉しみこそが、ラジオの快楽の最高の次元に属するものだと思う。
「ラジオ批評ブログ」と銘打って書いているものの、このブログで批評的なアプローチで書けたことは数えるほどしかない。というのは、ラジオの語りは、ほぼ常に平易な口語で語られるため、「言葉の背後にある意味を解釈によって引き出す」というアプローチが取れないという困難さがその一因である。聴けば誰にでも解るのだから、批評する人が何かを引き出すという仕事の余地は、初めからそこには存在しないのだ。解釈こそが批評の精髄だという考え方では、ラジオについてほとんど何も語ることができない。
少し格好をつけて大げさなことを言うと、私はこういうジレンマを抜け出すための方法を、スーザン・ソンタグの一連の著作(とりわけ『反解釈』Against Interpretation, 1966 )、ヴァルター・ベンヤミンの論文「物語作者」("Der Erzähler", 1936)に見いだしている。こうした先人の方法を実践できてはいなくても、常に心に留めるぐらいのことはしているつもりだ。
ソンタグの言う「官能的直接性」(sensual immediacy)や、ベンヤミンの「物語作者」という切り口は、ラジオについて考える際にもきわめて有用だろう。小説や情報とは異なる、ある特定の人物の経験を通じて紡ぎ出された「語り」に直に接するという受容のありかたが、ラジオ・パーソナリティーとラジオ・リスナーとの関係を考える際には重要だと思う。解釈によって引き出される意味が仮に作品の本質だというのなら、作品そのものの全体性や価値には一体どんな意味があるというのだろうか。
な〜んつって。
『日本の放浪芸』
さて、放送の中身に話を戻せば、小沢の取材が途絶えていた猿回しの再興を促した話を爆笑問題の番組で偶然披露し、その再興の功労者の子孫がいまや爆笑問題の事務所に所属しているというのは、生放送ならではの出来事ですこしゾクッとした。
番組で小沢が言及したのは、山口県光市議会議員を務めた村崎義正(1933-1990年)。Wikipediaからの引用で恐縮だが、彼の人生は壮絶を極めるものだったようだ:
同じ地区で生まれた同級生12人全員が、部落差別にさいなまれ、ある者は自殺し、ある者は社会から落伍して、なんとか生き残ったのは義正を含めわずか3人だけというすさまじい状況下の青春時代を過ごす。
1970年に光市の市議会議員に初当選。鼻つまみ者を自認し、押し売りや恐喝など15回の逮捕歴を隠さずに当選を果たした。3期務めた市議時代は日本共産党に所属していたが、保守系でないにも関わらず、議会運営委員長を務めるなど保革を超えて人望のある人物だった。在職中は自然保護運動に取り組んだ。
またも同じ出典からで恐縮だが、小沢のエピソードも紹介されている:
猿まわし師の初代の村崎梅二郎を祖父に持ち、光市議に初当選と同じ年の1970年、俳優の小沢昭一がレコード『日本の放浪芸』シリーズのために光市を訪れたことをきっかけに、1963年に途絶えていた猿まわし芸を復活させることを決意。民俗学者宮本常一や民俗文化映像研究所の姫田忠義の協力を得て、1977年12月2日に周防猿まわしの会を結成して初代の会長に就任。弟の修二とともに、東京にいた「最後の猿まわし師」の重岡フジ子に調教を教わる。翌1978年7月に調教法を確立し、同年9月の光市におけるイベントで披露、猿まわし芸の復活を成す。
番組内ではさらに進んで焦点が当てられることはなかったが、放浪芸の歴史を紐解いていくと、この猿回しの話と同じような人権問題の歴史につながる水脈がいくつもあるような気がする。焦点を変えれば、いわゆる「正史」とは別様の日本の歴史の豊穣さが姿を現しそうな予感がして、少し興奮してくる。
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