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雨宮処凛のオールニートニッポン(ウェブラジオ、オールニートニッポン)

○「雨宮処凛のオールニートニッポン」(ウェブラジオ:オールニートニッポン)

前口上

新宿のジュンク堂書店で本を買った帰りに、検索端末で「ラジオ」を検索してみた。検索結果で、ちょっと気になったのは次の2冊:

雨宮処凛『雨宮処凛のオールニートニッポン』<祥伝社新書>(祥伝社、2007年)

坂本慎一『ラジオの戦争責任』<PHP新書>(PHP研究所、2008年)

今回は前者について。単純に「オールニートニッポン」というタイトルにやられた。

雨宮処凛については、『論座』2007年4月号(朝日新聞社)で初めて名前を知った。その号は「グッとくる左翼」特集で、他には素人の乱が取り上げられたり、一部の人たちで話題を呼んだ赤木智弘「「丸山眞男」をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争」への数名の論客による応答などが掲載された。

ちなみに、赤木智弘「「丸山眞男」をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争」が掲載された,『論座』2007年1月号(朝日新聞社)の「現代の貧困」特集号の、「貧困ビジネス」(貧困層狙いのビジネス)の記事に度肝を抜かれた。レ○パレスが敷金・礼金を取らないのはそういう理由だったのか、とか、保証人代理業のやり口など目から鱗。

雨宮処凛のオールニートニッポン

さて、『雨宮処凛のオールニートニッポン』の内容は、ウェブラジオ,オールニートニッポンを書籍化したもので、過去の放送の中から大槻ケンヂがゲストの回他数本を書き起こして編集したもの。収録回のほとんどは,今でもウェブで聴くことが出来るようなので、早速いくつか聴いてみた:

■雨宮処凛のオールニートニッポン:

・2006年10月27日 ゲスト:月乃光司、AKIRA
・2006年11月24日 ゲスト:塩見孝也、外山恒一
・2006年12月22日 ゲスト:田口ランディ
2007年01月31日 ゲスト:大槻ケンヂ
2007年02月25日 ゲスト:森達也、梶屋大輔、松本哉
2007年03月30日 ゲスト:湯浅誠、佐野章二、今野晴貴
2007年06月08日 ゲスト:赤木智弘、杉田俊介
2007年07年13日 ゲスト:斎藤貴男、梶屋大輔、山口素明
2007年08月10日 ゲスト:香山リカ、古澤克大
2007年09月14日 ゲスト:梶屋大輔、今野晴貴、杉田俊介、月乃光司、松本哉、山本繁、湯浅誠、ほか
2007年10月12日 ゲスト:福島みずほ、池田一慶、増田明利
2007年11月06日 ゲスト:森永卓郎、寺脇研、元木史昭、今村久美
2007年12月14日 ゲスト:宇都宮健児、関根秀一郎、白石嘉治、白井勝美

サイトにアクセスして度肝を抜かれたのは、サイトのタイトルの部分に「硫化水素自殺 方法 製造 作り方」の文字が大きく表示されたこと。これはおそらくSEO対策だろう。硫化水素自殺がメディアをにぎわす昨今、硫化水素自殺のやり方を探してネット検索する人を誘導して、「死ぬな」というメッセージを伝えよとする試みのようだ。

さて、番組だが、ゲスト陣は『論座』(朝日新聞社)や『世界』(岩波書店)を読んでいる人にはおなじみの顔ぶれが並ぶ。著名人も出演しているので、知っている人が出ている回から聴くと良いと思う。パンキッシュなルックスの雨宮だが、声だけで聴くと印象がまったく違う。けっこうかわいい感じの声。反自由主義者陣営のポップ・アイコンになるか?

私が一番面白いと思ったのは、斎藤貴男がゲストの回。ニート・フリーター・派遣労働などの問題について考える時の視点がひと通り、しかも触発的なかたちで紹介されている。

「再チャレンジ」を連呼する安倍晋三自身は、そもそも一度もチャレンジすらせずに現在の地位を得ているとか、折口雅博や堀江貴文(成金)はいわば走狗に過ぎず、本当の敵(エスタブリッシュメント)は別にいるといった視点は、実に妥当だと思う:

第8回 雨宮処凛のオールニートニッポン

森達也がゲストの回では、芸人的な感性の人であれば流れに身を任せて調子をあわせたりするようなところで、何が問題なのか、質問の意図は何なのかをきちんと整理しようとする森の姿勢に誠実さを感じた:

第5回 雨宮処凛のオールニートニッポン

他にも、森永卓郎が出ている回もなかなか。面白かったのは、国立大学の授業料の話や、金融資産の1500万円を超過する部分に2%課税するだけで20兆円、3%で30兆の財源が確保でき、一般庶民の3/4は払わなくていいという案など:

第12回 雨宮処凛のオールニートニッポン

番組を聴いての所感

聴いていると、放送に混じってときどきクリック音や警告音が聴こえる。おそらく、ウェブラジオの生放送を、後のポドキャスティング用にパソコンで録音しつつ、他の作業をしているのではないだろうか。こういう手作りの感じも微笑ましい。

さて、常日頃から感じていることではあるが、このような問題を顧みる人間は、もう既に問題意識をもっている人間であって、乱暴なことを言えば、放っておいても大丈夫だ。第8回でも同じような話が出ていたが、格差問題に、ふだん『Forbs』なんかを読んでいるような企業の経営者連に本気で耳を傾けさせるにはどうするかが課題だと思う。

その意味でいい流れとして、『PRESIDENT』2008年5月5日号(プレジデント社)に格差問題の話が出ていた。単なるリスク管理の資料として読まれてしまわないように願う。

いずれにせよ、このウェブラジオが新自由主義包囲網の一角になることを祈りつつ、応援したい。

ついでに

「雨宮処凛のオールニートニッポン」は、内容的にはやや硬派な感じがするので、同じ「オールニートニッポン」でやっている「月乃光司×戸川純 ハート温泉」と交互に聴くといいかもしれない(いいのかな?):

アーカイブ(オールニートニッポン)

「ハート温泉」第1回で、闘病後に社会復帰中のリスナーからのメールの中の「月乃さんが本に書かれていた『今日一日を生きる』という言葉を日記に書いたりして頑張っています」という言葉が紹介されたとき、清廉な魂の気高さのようなものを感じて、少し体がピリッとする思いがした。

第1回 月乃光司×戸川純 ハート温泉

新自由主義に抗するためのブックガイド

テッサ・モーリスースズキ/辛島理人[訳]『自由を耐え忍ぶ』(岩波書店、2004年)
「市場の社会的深化」をキー・ワードに、新自由主義が社会に与える影響を軍事・行政・知的所有権などの広範な話題に言及しつつ論じている。私の好きな本。

渋谷望『魂の労働——ネオリベラリズムの権力論』(青土社、2003年)
労働によって収入を得ているすべての人は、せめて第1章だけでもいいので読みましょう。

白石嘉治/大野英士[編]『ネオリベ現代生活批判序説』増補(新評論、2008年)
これがいちばん読み易いかもしれない。タイトルの「生活」というところがいいと思う。

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