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中国国際放送局、2008年4月12日(日)

○中国国際放送局、2008年4月12日(日)

日曜日の朝はいつものように「Early Morley Bird」(J-WAVE、日5:00-6:00)を聴きつつ散歩。2008年4月13日(日)の話題もチベット。モーリー・ロバートソンがネットで集めたチベット関連のニュースを紹介。なかでも、2008年4月8日付『産経新聞』の記事は興味深かった。天安門の民主活動家たちが、チベット人と反権力連帯を築かないのは、反権力漢人インテリたちも中華思想からは自由でなく、チベット独立には反対なのだという内容:

チベット問題 中国の古来からの排他的な中華思想が背景(産経新聞、2008年4月8日)

「Early Morley Bird」が終ってからは、ダイヤルをあちこち回していたが、ここはひとつ北京政府の立場を聴いてみようと思い、中国国際放送局(いわゆる北京放送)にチューニング。こういう時は、短波も聴ける ELPA ER-21T は、とてもいい。もうちょっと小さければもっといい。

最近、「Free Tibet」のバナーを貼ったブログなどをよく見かける。

私自身も、個人が幸福を追求する権利を国家権力が侵害することには強く反対する。しかし、チベットという個別の事例に責任ある判断を下せるほど、私はチベットを知らない。東欧で社会主義の墓場から民族主義が擡頭するのを幾例も見て来たが、チベットがそうならないとは断言できない。もちろん、基本的人権の一本で猛進することもできるかもしれないが、小心者の私は少し逡巡する。今の無知なままの私では、目を潤ませ、頬を紅潮させ、ヒロイックな陶酔を徒に貪るのがオチだ。もう少し調べたり考えたりしたい。跳ぶ前に見たい。

もちろん、ラサで命を落とした人たちには、そんな時間の余裕はなかったということは理解しているつもりだ。

以上のような関心から、中国国際放送局を聴いてみることにした。コチラの価値観でアチラの価値観を斬るだけではなく、アチラの内的理論を知ることには代え難い意義があるはず。反共保守の人たちは、これをやらない人が多い。当然、左翼にもそういう人はいるが。人の話を批判したいなら、まず人の話を聴いてからでも遅くない。

中国国際放送局は、1コマ1時間の番組を2コマ(うち1コマは前日の再放送)、朝晩に数回リピートしている。私は7:40-9:00ごろまで聴取。周波数は複数有り、時どき変更することもあるので、最新の情報は中国国際放送局のサイトで確認を

この日のトップ・ニュースは、胡錦涛中華人民共和国国家主席の発言を紹介。発言の内容は、チベット問題は、民族問題でも宗教問題でも人権問題でもなく、完全な内政問題だというもの。これは、日本の新聞やニュースでも報じられた:

胡錦涛国家主席、「チベットは完全な内政問題」と強調(中国国際放送局、2008年4月12日(日))

「時事解説」のコーナーでは、ドイツ外交政策協会研究所所長、エーベルハルト・サンドシュナイダー博士(Prof. Dr. Ebehard Sandschneider)のインタヴューを紹介:

DGAP研究所長 チベット問題で不事実な報道に遺憾(中国国際放送局、2008年4月12日(日))

局側は北京政府の主張のサポートとして博士の発言を取り上げたのだと思うが、サンドシュナイダー博士の「私は中国に関する報道をめぐり、現実と実用に適する原則を守っている」という言葉が印象的だ。

私の能力では、博士の元の発言がどうなのか、それがどう訳されているのかまでは知ることが出来ないし、サンドシュナイダー博士についても知らない。そこで、中国国際放送局で博士の発言がどのように引用されているのかを調べてみることにした。

このエントリー執筆時(2008年4月14日(月))現在、局の公式サイト内で "Sandschneider" を検索すると2件のヒット(アルファベット以外の表記体系のサイトは未検索)。いずれも英語サイト。そのうち、博士の主張を知る上で意味があると思われるものは1件。博士がドイツのテレビ番組に出演した際の発言を紹介する内容。ネット経由で寄せられた視聴者からの質問に答えている(ちなみに、博士はインターネットと中国社会の変容についての論文集の共著者でもある):

Asked what he thought the German government should react if China supports the independence of the southern German state of Bavaria, Sandschneider said the German government will make the same reaction if necessary. The German Government must reject with emphasis any interference in its internal affairs.

If demonstrators go on the rampage on May 1 in Berlin's district of Kreuzberg, vandalizing shops, setting cars on fire, the German authorities would also take rigorous action resolutely, Sandschneider said.

"It is important not just to look at China in a know-it-all manner, we should also hold up a mirror to ourselves occasionally...So what I really try to do is to suggest a change of perspective, which would hopefully lead to the conclusion that one-sided observation is not helpful and taking a solely critical view of the action by the Chinese forces may miss the fact," Sandschneider added.

German Scholar, Net Surfers Discuss Lhasa Riot (CRIENGLISH.com, March 19, 2008)

「もし中国がバイエルン州(他州と文化的に異質で、経済的にも潤っているため独立話がよく出る州)の独立を支持したら」「もしクロイツベルク(ドイツ最大のトルコ人街がある都市)でメーデーのデモ隊が暴徒化したら」など、「もしもドイツで」といった、やや位相の異なる話が引用され、チベット問題に直接回答したものではない。もし直接の発言があるならば、どうしてそれを引用しないのかと勘ぐられても仕方がない。また、引用符の付けられた部分は、研究者として当然採るべき立場を語っているに過ぎない。ヨーロッパの良識ある知識人であれば、おそらくこう言うだろう。または、サイードとかを読んでいれば、当然身につけている姿勢。

TIME (Jan. 11, 2007) の取材に対しては、博士はこうも答えている:

Sandschneider, the German China expert, says the Chinese "talk about peace and cooperation and development, which sounds great to European ears--but underneath is a question of brutal competition for energy, for resources and for markets."

"China Takes on the World", TIME (Jan. 11, 2007)

サンドシュナイダー博士については、情報が充分でないため断言できないがものの、おそらく親中派だと思われる。しかし、政府への政策提言のために正確な事実把握に基づいて,極端な偏向のない分析をするタイプのよう。まさに「中国に関する報道をめぐり、現実と実用に適する原則を守っている」タイプだろう。

中国国際放送局については、他人の主張を引用する際の精緻さには難があるというところまでは断言できるかもしれない。少なくとも巧くない。印象的な部分を抜くのではなく、クリティカルな部分を引用するべきだと思う。

とはいえ、放送を聴くことには絶対的な意義がある。少なくとも以上のようなことは判ったわけだし。まさに、サンドシュナイダー博士が言うように、"a know-it-all manner" な見方を避けるためにも、他者の話は聞いておくべきだろう。

ちょっとカタい感じになったので、最後に軟らかい話:

放送の最後の方に「エンタメ・キューブ」というコーナーがあり、中国のヒット曲を紹介していた。英語名の歌手がほとんどで、おそらく香港の歌手なのだろう。その中に混じって、1曲だけ台湾の曲が紹介された。「春泥」という曲名だけは憶えていたので、家に帰って調べたら「哈林」こと?澄慶(Harlem Yu)という人の曲だとか。台湾の曲が流れるのは少し意外だったが、これも「一つの中国」という主張の一端だろうか?


「春泥」

参考:

Voice of Tibet(ノルウェイのオスロにあるラジオ局:チベット語・北京語)

RFA: RFA Tibetan(Radio Free Asia のチベット語放送)

※このエントリーは、昨日の深夜にアップしようとしたところ、保存中にパソコンがフリーズし、タイトル以外の記事が全部消えてしまいました。一度は「やってられるか!」と思いましたが、想い出しつつ内容を復元して再度公開します。RSSリーダーなどをお使いの方、すみませんでした。

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