大竹まこと ゴールデンラジオ!(文化放送、2008年3月11日(火)13:00-15:30)
○「大竹まこと ゴールデンラジオ!」(文化放送、2008年3月11日(火)13:00-15:30)
この番組は、ポッドキャストで聴いている。
ポッドフィ−ドの登録をしておけば、更新ごとに勝手にダウンロードされるらしいが、私は、いちいちサイトから手動でダウンロードしている。というのも、全部聴いていては時間がいくらあっても足りないので、基本的に、「大竹メインディッシュ」のコーナのみ聴いている。そして、ゲストによって取捨選択している。
先日、サイトを見てみると、「メインディッシュ」のゲストに野田聖子衆議院議員の名が。正直言ってどうしようか迷ったが、一応ダウンロード、という感じ。
しかし、聴いてみて驚いたが、実に秀逸な回で、今年一番の面白さだった。って、まだ3月か……。
○大竹まこと ゴールデンラジオ!「大竹メインデッシュ」【3月11日ON AIR】
※2008年3月18日(火)の夕方には削除されるので、興味を持った方はお早めに。
「いろいろ、あのぅ、聞きたいことは山ほどあるんですけど」と前置きした大竹は、代理出産の話を始めた。どうやら、オープニング・トークからのテーマのようで、大竹と山本は、打ち合わせ段階から喧嘩に近い大論争だったとのこと。お互いに納得いかないまま、スタジオに突入したそうだ。
○大竹まこと ゴールデンラジオ!「オープニング」【3月11日ON AIR】
※2008年3月18日(火)の夕方には削除されるので、興味を持った方はお早めに。
大竹は代理出産に慎重、火曜日アシスタント山本モナは賛成のようだった。「メインディッシュ」では言葉少なだったが、自分の見解をハッキリと主張する、従来の昼ワイドのアシスタントらしからぬ山本の姿勢は、なかなかいい(彼女が「NEWS 23」をあんなかたちで降板しなければ、筑紫哲也とどんなやり取りを展開しただろうか。つくづく勿体ない)。
さて本題。この回の「メインディッシュ」で大竹がホストとして秀逸だったのは、次第に専門的で細かくなりがちなこの話題を、「欲望」「技術」「諦観」というキー・ワードで、もう一回根本的なステージに戻したことだ。いわば話を「積分」したような感じ。この視点の導入で、話がぐんと引き締まり、最後まで退屈せずに興味深く聴けた。
さらに大竹は、ここに「格差」というもうひとつの軸を付加して、際限ない欲望が技術の進歩に下支えされて、富者であれば諦観を跳び越え、貧しい人たちを媒介として欲望を果たしうるのではないか、という疑義を提示した。
野田は、欲望実現の可能性が広がる状況において「どこで諦観するかっていうのは自分自身で決めること。それは、国が統制することではないだろう」という考えで応じた。郵政族で規制論者だとばかり思っていた野田が、この点に関しては実に自由主義者だということに驚く。「私自身も不妊治療をやってきたんですけど、代理出産を望むってのは、もう熟慮の末ですよ」という言葉も印象的。不妊治療の当事者だけあって、この問題について考え抜いていることがわかった。とはいえ、野田が用いる、「子供をもらう」という表現には最後まで違和感があったけれども。
語弊はあるかもしれないが、正直言って、昼のラジオのワイド番組でここまで濃密で充実した話が聴けるとは思っていなかった。リベラル派のTBSラジオのお株を奪う激論だった。
実をいうと、私の立場は、野田の考え方に近い。
とはいえ、もともと私は、山本モナの立場に近かったかもしれない。正直言って代理出産について突き詰めて考えたことがあるとは言えない私だが、大学でジェンダー論の洗礼を受けたのをきっかけに、妊娠中絶・生殖医療・クローンなどの話題を多少なりとも気にかけるようになったし、その時どきの最前線のフェミニストたちの著作は、社会的公正について新鮮な視点をいつも与えてくれた(この印象はいまでも変わらない)。バイオ関係の論題は、軍事・知的所有権などと並び、新自由主義を考える上での要諦でもある。
大学2年ぐらいの時だったら、私は、代理出産を擁護し、代理出産を認める法制を望み、代理出産に反対する者に容赦なく敵対したかもしれない。今でも、代理出産に活路を見出す人びとを擁護し、代理出産を認める法制を望むことには変わりないが、反対派に対する立場は少し変わった。
個人がどのような信念をもつかということと、どのような立法が最適かということとは分けて考えるべきだと思うようになったのだ。多くの人たちの——あまつさえ、立法府の成員である国会議員の多くですら——心のなかではこのふたつが癒着している。代理出産に反対の人たちは,代理出産を認める法制にも反対したりしてないだろうか。自分が反対だからって、人の望みを挫く立法をしていいはずはない。
何が言いたいかというと、私の個人的な信念としては、個人の幸福追求のための選択肢が閉ざされるべきではないと思う。しかし、反対派の信念に対する寛容さを捨ててはいない。
ここで論理的に考えると、代理出産に最後の可能性を託す人びとと、代理出産反対の人びとが、互いに信念を全う出来る方法は、代理出産を認める立法しかない。代理出産を認める法の下では、代理出産を選ぶことも選ばないことも出来る。しかし、代理出産を認めない法の下では、代理出産に否定的な人びとに影響はないが、代理出産に懸けようとする人の幸福追求権が制限される。
有り体に言えば、規制が少ない方が、幸福追求のための選択肢が広がるということだ。自分がやるかは別として、やれるようにしておく方がいい。
自分の信念が法律として具現化されなくても、あなたの信念は全う出来る、と反対派の人に言っておこう。
○大竹まこと ゴールデンラジオ!「オープニング」【3月11日ON
AIR】○大竹まこと ゴールデンラジオ!「大竹メインデッシュ」【3月11日ON AIR】
※2008年3月18日(火)の夕方には削除されるので、興味を持った方はお早めに。
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