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山口隆のOH MY RADIO!(J-WAVE、2007年11月23日(木)、30日(木)24:30-26:00)

○「山口隆のOH MY RADIO!」(J-WAVE、2007年11月23日(木)、30日(木)24:30-26:00)

最近の木曜深夜は「山口隆のOH MY RADIO!」(J-WAVE、木24:30-26:00)を聴くことが増えた。

普段は木曜JUNK「アンタッチャブルのシカゴマンゴ」(TBSラジオ、木25:00-27:00)を聴いているのだが、オープニング・トークが今ひとつのときには、タイマーで録音中の「シカゴマンゴ」の音量を絞って、もうひとつのラジオでJ-WAVEにチューニングする。

ところで最近、高田渡を聴き始めた。偶然手に取った森達也の本で紹介されていた「系図」(1972年)という曲の歌詞(三木卓)に強い感銘を受けたからだ——というより、静かに打ちのめされたというのがむしろ実感に近い:

僕がこの世にやって来た夜
おふくろはめちゃくちゃにうれしがり
おやじはうろたえて質屋に走り
それから酒屋をたたき起こした

その酒を飲み終るやいなや
おやじはいっしょうけんめい
ねじりはちまき死ぬほど働いて
死ぬほど働いてその通りくたばった

くたばってからというもの
こんどはおふくろがいっしょうけんめい
後家のはぎしり 後家のはぎしり
がんばって僕はごらんの通り

丙馬のおふくろは
おふくろはことし60才
おやじをまいらせた昔の美少女は
すごく太って元気がいいが

実は先だって僕にも娘ができた
女房はめちゃくちゃにうれしがり
僕はうろたえて質屋に走り
それから酒屋をたたき起こしたのだ

僕がこの世にやって来た夜
おふくろはめちゃくちゃにうれしがり
おやじはうろたえて質屋に走り
それから酒屋をたたき起こした

書店からの帰りに立ち寄ったCDショップに高田のCDがなく、その日は泉谷しげるの初期作品のベスト・アルバムを買って帰り、今では高田・泉谷が家でのヘヴィー・ロウテイションである。

話を本題に戻すと、「山口隆のOH MY RADIO!」の番組最後に山口がテーマにそって話をするコーナーがある。「アーカイブ」とか言っていたような気がするので、そんなコーナー名なのだろう。先々週と先週は「東京」がテーマだったのだが、これが秀逸だった。

先々週は、憧れを抱いて東京へ出てきたが、自分の生活も、やっているテレビも田舎となんら変わりない、想像していたよりも東京はつまらない、でも東京は面白くあってもらわなければ困る、という田舎から上京してきた者にはどこか憶えのある焦燥感をズバリと語り尽くした。

この話を聴きながら想い出していたのは、自分の経験と同時に、泉谷しげるの「眠れない夜」(1974年)だった:

眠れない夜 風が窓をたたき
手招きして 誘い水をまく
眠れない夜
金色のネオン ピンク色の壁
都会の暮らしは 底無しで
眠れない夜

憧れにつられてやてきたら
自分だけが ただ憧れてる
眠れない夜がいつまで続くやら
北の汽車から
南の船へ 乗り急いだよ
ぼくの足は こんな所で疲れた

めずらしい見世物は すぐあきて
自分だけが 珍しくなってく
眠れない夜が いつまで続くやら
手紙も書いた 日記もつけた
だけど宛名はすべて ぼくのところ
眠れない夜 眠れない夜
眠れない夜 眠れない夜

泉谷の曲が呪詛に満ちているのに対して、山口はつまらない東京が人びととのふれあいなどをと通して捨てたものでないと思えるようになっていく過程を語って救いを残した。

先週は先々週とは逆に、東京が蓄積してきた粋の文化と当時自分がハマっていたジャズとを重ね合わせてポジティヴに語り始め、後に都会のストレスの話へ移項した。憧れて出てきた東京における、都会の愉しさと同時に感じる軽いストレスについての話。このストレスは、最初に感じたレヴェルでずっと続くと思っていたが、いつしか次第に大きくなり心を押しつぶしていく、という趣旨の話だったと思う。そのときバンドのメンバーの近藤洋一に紹介された岡林信康「私達の望むものは」(1970年)に打ちのめされたのだそうだ:

私達の望むものは生きる苦しみではなく
私達の望むものは生きる喜びなのだ

私達の望むものは社会のための私ではなく
私達の望むものは私達のための社会なのだ

私達の望むものは与えられるではなく
私達の望むものは奪い取ることなのだ

私達の望むものはあなたを殺すことではなく
私達の望むものはあなたと生きることなのだ

今ある不幸にとどまってはならない
まだ見ぬ幸せに今飛び立つのだ

私達の望むものはくりかえすことではなく
私達の望むものはたえず変わってゆくことなのだ

私達の望むものは決して私達ではなく
私達の望むものは私でありつづけることなのだ

今ある不幸にとどまってはならない
まだ見ぬ幸せに今飛び立つのだ

私達の望むものは生きる喜びではなく
私達の望むものは生きる苦しみなのだ

私達の望むものはあなたと生きることではなく
私達の望むものはあなたを殺すことなのだ

今ある不幸にとどまってはならない
まだ見ぬ幸せに今飛び立つのだ

私達の望むものは
私達の望むものは.....

正直言って、岡林のこの曲は、福音主義的で観念的すぎると思う。一瞬心を鷲掴みにするものの、曲がもたらす陶酔や恍惚は、自分の経験と結びついて定着せず、すぐに消えてしまう感じがした。曲そのものにはリアリティーを感じないが、自分の内面を掘りすすむつるはしにはなりそうだが。したがってこの曲については山口と想いを共有できなかったが、現代の生きにくさや焦燥や絶望を表現する手立てを、かつての日本のフォークの中から汲み取ろうとする山口の姿勢には強い共感を覚える。

今週の山口はどんな話をするのだろうか。

※加筆
2007年12月17日(月)早朝、テレビを見ていたら、サンボマスターが出ていた。山口が岡林から学んだのは「行動しろ!」ということだったと語っていた。岡林の曲は福音主義的だと私が指摘したのは、あながち間違いではなかったようだ。

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