Chris Vallance, "Podcasts send mixed signals to radio", BBC NEWS (13 November 2005, 01:51 GMT)
○Chris Vallance, "Podcasts send mixed signals to radio", BBC NEWS (13 November 2005, 01:51 GMT)
本の整理中に、『Quick Japan』vol.63 <特集 ラジオ>(太田出版、2005年)が出てきたので、しばらく読み直してしまった。モーリー・ロバートソンのインタヴューの中で、あるBBCのウェブページが紹介されていた。
モーリー・ロバートソンのウェブサイト:
○81.3 FM J-WAVE : EARLY MORLEY BIRD
○i-morley
○tibetronica.com
ポッドキャスティングと従来型のラジオとの相克についての記事ということで関心を持ち、さっそくBBCのサイトにアクセスして読んでみた。
自分だけ読むのもナンなので、訳してみた。ITがらみの2年前の記事など今更めいているかもしれないが、記事に登場する「ポッドセーフ・ミュージック」(Podsafe music)などという用語は恥ずかしながら初めて聞いたし、必ずしも日本では人口に膾炙した用語ではないと思われる。従って、読んでみても良いのでは?——と我田引水してみる。
元記事:Chris Vallance, "Podcasts send mixed signals to radio", BBC NEWS (13 November 2005, 01:51 GMT)
クリス・ヴァランス(Chris Vallance)
BBCニュース、カリフォルニア州オンタリオ22ヵ国から多数のポッドキャスターが最近、アメリカで開催されたポッドキャスティング界で最初の大コンヴェンション、The Portable Media Expo and Podcasting Conference(カリフォルニア州オンタリオ)に集結した。
イギリスからの会議参加者であるイワン・スペンス(Ewan Spence)が、エディンバラ・フェスティヴァルから行った一連のポッドキャスト配信で、スコットランド英国アカデミー賞にノミネートされたことは、ポッドキャスティングが世界中で主流になりつつあることのひとつの表れだ。
しかし、ポッドキャスティングはラジオにとって死の呪文となるのだろうか?
それは問題となるラジオの種類による、というのがこの会議で見えてきつつある答だ。
定義
ポッドキャスト(PODCAST) :インターネットからダウンロードしてMP3プレイヤーに転送できるラジオ番組形式のショー。ポッドキャスティングの発展において果たした役割によって「ポッドファーザー」として知られるアダム・カリー(Adam Curry)は、彼のポッドショー(PodShow)および ポッドセーフ・ミュージック・ネットワーク(PodSafe Music Network)の事業にヴェンチャー・キャピタルから数百万ドルもの出資金を集めた。
しかし彼は、伝統的なラジオにも、とりわけニュースの領域において、生き残りの余地があると確信している。
「もしオサマ・ビン・ラーディンが見つかったら、iPod の前に走ってはいけない。ひどくガッカリさせられることになるだろうから」とカリー氏はBBCに語った。
ニュース・ラジオは、主要ニュースを生で報道するというニーズによって、幾分かポッドキャスティングの影響から遮断されている。しかし、ポッドキャスティングは、質の低下と聴取者の減少を放置しているお山の大将状態のブロードキャスターたちに挑戦していると多くの人びとは感じている。
ロサンジェルスのトーク・ラジオ司会者で、ポッドキャスト番組 This Week in Tech の制作者、レオ・ラポルテ(Leo Laporte)は、ポッドキャスターたちはラジオを良い方向に変えつつあると考えている。
「ラジオは数十年のあいだ瀕死の状態が続いてきたが、ポッドキャスティングがこのラジオという技術を復活させつつある——それは完全なるルネッサンスだ」
このルネッサンスのひとつの側面に「ナロウキャスティング」(narrowcasting)あるいは「マイクロキャスティング」(microcasting)がある。ニッチな聴取者にターゲットを絞った放送のことである。
ある特定の関心をもったグループに焦点をあてているのは、他でもないラジオである。例えば、「すべてのお母さんのためのポッドキャスト、マミーキャスト」("The MommyCast: a podcast for mommies everywhere")や、 インディアナ州の酒場から零細醸造所のビール評を放送する "The Good Beer Show" などがこれに該る。
「私たちは、数多くの様ざまなニッチについて語っているのです」と、市民制作メディアの分野の先駆けである、JDラシーカ(JD Lasica)は語る。
ポッドセーフ・ミュージック(Podsafe music)
会議参加者の多くが、ポッドキャスティングによる伝統的なラジオへの最大の影響は、音楽配信の分野に現れるだろうと予言した。
著作権上の制限があるため、ポッドキャストの音楽番組は、いわゆる「ポッドセーフ・ミュージック」(Podsafe music)しか使えない。「ポッドセーフ・ミュージック」の名で、ミュージシャンたちは、インターネット配信を許可するライセンス付きの音楽を公表している。
「ポッドセーフ・ミュージック」を制作するバンドのほとんどは、メジャー・レコード・レーベルから独立した、契約関係のないバンドだ。
メジャー・レコード・レーベルにとってこれは悪い知らせだと、元MTV司会者のカリー氏はと信じている。
「結局、ポッドキャスト・ミュージックは、[音楽]産業をそっくり迂回することになるのがオチだろう」とカリー氏は言う。
「どのミュージシャンにも、消費者に直接音楽を売ることのできるツールが全て手に入るので、音楽業界は臨界点に向かいつつある」
しかし、伝統的な放送業界もポッドセーフ・ミュージックに目覚めつつあるという兆しはある。
ロンドンで開催された Pod Con UK の会議で、ヴァージン・ラジオ(Virgin Radio)は、自局のポッドキャスト番組でポッドセーフ・ミュージックを放送することになるだろうと発表した。
「巨大市場」
ポッドキャスティングがラジオの中身を変化させるにつれ、ラジオの聴き方も変わりつつある。技術者肌の人間は、ブロードバンドとワイヤレス技術の流行が広まるにつれて、「コンヴァージェンス」(convergence)、すなわち、様ざまなラジオ聴取法の融合について語りたがるものだ。
既にポッドキャスト番組をダウンロードできる携帯電話もあり——それはまさに、携帯電話をラジオ・チューナーに変えることだけれども——そういう携帯電話は投資家の関心を引いている。
「私たちは、巨大なマーケットが存在していると考えています。これは今日、ポッドキャスティングを世界中の2億台の携帯電話に広めることになるでしょう」と、ヴェンチャー・キャピタル会社イグニッション・パートナーズのエイドリアン・スミス(Adrian Smith)は語った。
「極めて短い年数で、着メロは数億ドル市場になりました。そしてそのことは、ポッドキャスティングも実際に非常に巨大な市場になりうることを示唆しています。」
数かずの新技術とポッドキャスティングを金に変える方法が強調されているにも関わらず、ポッドキャスティングと伝統的なラジオにおける成功の鍵は同じであると、広く合意されている。
カリー氏が言うように、テクノロジーがどれだけ有能になっても、「真ん中には例のすばらしいものが必要だ。それは自分がハマっているものについて話をする男だよ」。
※原文に登場する一部の固有名詞の綴りの間違いを修正(訳者)。
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コメント
はじめまして。時間がかなり経ったQuick Japanのレビューをいただいて、すみませんでした!すでに編集長も替わり、一時代昔の話として思い出しています。
それから英文記事の翻訳も、お疲れさまでした。こんなものを毎日ファスト・フードのように読み飛ばしている自分の職業が、あらためて特殊だなと実感。一方で、このアドバンテージを使って長い間就職をし続けられるという見積もりも。
30万リスナーを達成してビジネスモデルがどうした、とか見積もりを出してみました。でも、たいしたことがない数字であると結論。お金儲けにつなげなければ大きい数字なので、このままの状態で行く方向になっています。
Quick Japanに取り上げられた頃は音楽をどう使うかが大きな課題でしたが、その後、実は音楽がまったくなくてもやれる回があることを徐々に発見しました。ものはやりようです。
ではお暇なときに、また聴いてください。
i-morley
投稿: 本人登場! | 2007年11月19日 (月) 11時03分