伊集院光『のはなし』(宝島社、2007年)
伊集院光の初エッセイ集。番組本ではないので、このブログの話題としてはそぐわないのだが、そこは、われらが「平成のラジオ王」の手になる書籍ということで、ご愛嬌。
もとは、ツーカーセルラー東京の「夕刊ツーカー」というメール・マガジンで配信されていたコラム「編集長伊集院光の一言」を書籍化したものだそうだ。
正直言って、『のはなし』というタイトルはイマひとつパッとしないというか、埋没しそうな感じなので心配(?)したのだが、相当売れているそうで、第一刷が売り切れて増刷が決まったとラジオで言っていた。私がAmazon.co.jpで見たときはランキング27位、紀伊国屋書店週間ベストセラー(2007年10月1日-2007年10月7日)では57位。そして何よりも、金曜日の朝の駅のホームで読んでいる人を見た。ああいう時は、初対面の同志として話しかけたら喜ばれるんだろうか?
さて、内容に関しては、どっちが先の発表なのかは判らないが、月曜JUNK「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ、月25:00-27:00)でも聞いたことのある話が結構あった。しかし、内容は基本的に同じでも、伊集院の事象に対するポジションがラジオとは微妙に異なるところが興味深い。
例えば、奥さんや家族に対する敬意や感謝が割とストレートな言葉で記されている箇所が散見される。ラジオではあまりそのようなことはない。別の話題のコラムの中の記述ではあるが、「このコラムにはテレビ・ラジオで話さないことこそ書くべき」(p.210)という言葉が見られるが、そういうことなのだろう。
内容については、爆笑問題の太田光によると「久びさに、なんかこう、吹き出して笑ったね」「もうすっかり、なんか、エッセイの達人のような文章でねぇ」とのこと。続けて、遠藤周作・北杜夫・向田邦子・安岡章太郎・團伊玖磨などの名前を挙げながら、名文士による「チョッと笑えて面白い、でチョッと知的だったりするような、それで物凄いえげつなかったりとかっていう、そういう感じ」の最近ありそうでないエッセイに喩えて評していた(火曜JUNK「爆笑問題カーボーイ」TBSラジオ、2007年10月9日(火)25:00-27:00)。
私としては、いちばん好きな一本を選ぶなら「「無神論」の話」(pp.210-212)。「無神論」と「無宗教」がごっちゃになっているような気がしなくもないが、この一本はラジオの伊集院とコラムの伊集院との両方の味わいを堪能できる。ラジオではお馴染みの「嬉し座りションベンするバカ犬」の話題の外伝として、いつもと違うアプローチの語りが展開されている(加えて、いい話だが抑制が効いていてクサくないところも気に入っている)。そればかりでなく、最後の「オナラブーブー音頭」にラジオの伊集院(特に深夜のほう)の雰囲気も感じられてニヤリとする。しかし、単にニヤリとさせられるだけでない読後感の心地さがじんわりにじんでくる。
ほかには「「お葬式」の話」(pp.39-41)や「「ザリガニ」の話」(pp.84-87)、「「ペットショップ」の話」(pp.191-194)がよい。
投稿職人による伊集院ファン・サイトがいくつかあるようなので、その人たちの誰かがこの本のコラムの人気投票とかやってくれないかなぁ。
伊集院光のファン・サイト
○NEWラジパラザウルスの伊集院光閉架書庫
○イジューインホリック
伊集院光のCD
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