ヒルズ水島『キミにもできるコミュニティFM』(CQ出版社、2007年)
○ヒルズ水島『キミにもできるコミュニティFM』(CQ出版社、2007年)
本書は、「電波の世界で遊んでみよう」というシリーズの中の1冊で、コミュニティーFMを題材に、「放送局で番組をつくり放送することを疑似体験できる」(p.3)本。
内容の概略は次の通り:前半は、開局への道のり(巻の一)と、放送局の運営(巻のニ)についてページが割かれている。中盤は、コミュニティーFM局の送り手・聴き手へのインタヴューを通じて、ラジオをとりまく人びとの人間的な側面に焦点をあてている。後半は、これからコミュニティーFM開局あるいはラジオの仕事に携わろうという人たちに向けたガイダンス的な内容。
面白かったところ
まず、冒頭には、放送機材・設備の写真がふんだんに掲載されている。これが、ラジオに興味をもつ者にとっては「こんな機械を使ってるんだ〜」という風に単純に愉しい。
次に、著者自身が開局に関わったレインボータウンFMを例にして、設立準備→申請→開局の流れが具体的に示されている。中でも電波混線を理由に一度申請が却下され、もう一度電波調査を行い適切な周波数を見つけて再申請に漕ぎ着けるまでの過程は、今後の開局を志す人たちにとっては非常に参考になりそうだ。この一連の過程は、プロジェクトなんとかみたいでストーリーとしても読んでいて面白い。
また、この本の良い点は、冒頭の写真以外にも図版が非常に豊富で、実際の開局申請書や添付書類の写真なども見ることができる。それらが、ある時は資料として、またあるときは適度な箸休めとして読み手を愉しませてくれる。
欲を言えば、巻末付録にコミュニティFMやミニFMなどに関係する法律を資料として掲載してほしかった。
機材よりもコンテンツ志向のラジオ・ファンである文系の私にも、充分愉しめる内容でした。 ラジオ好きの人であればとにかく愉しめる内容のはず。
そう言えば、足立区でコミュニティーFM開局の準備が進められているという話を以前に聞いたが、今はどうなっているのだろうか。足立区民ではないものの、開局されればウチも可聴地域に入るはずなので期待していたのだが。
長い蛇足
この本の本題ではないところに、気になる記述が。この本のなかで、ミニFM(放送免許なしでも開局できるラジオ局)についても話題に上がるのだが、ミニFM局を開設しようとする人を悩ませる「微弱電波」について、具体的な記述がある。これはためになった:
一般的なロッド・アンテナを伸ばしたFMラジオで受信する場合、微弱電波の規定で送信電波が届く範囲は、およそ70cm〜1m強までとなります。受信に使うFMラジオやアンテナの設置条件にもよりますが、それでも現在の規定では10mの距離に到達させるのが精一杯というところでしょう。(p.87)
今までに見た説明は、「無免許で送信できる「微弱電波」とは○×mの地点で○×μVの電波云々」というのがほとんどだった——文系のオレにそんなもん解るかぃ、ボケぇ! 私が求めていたのは、つまるところ、「○×mまでなら無免許で電波を飛ばしていい」という説明の仕方だったのだが、それを見たのは今回が初めて。もちろん受信機や受信地・送信所の周辺の環境によって差が出るのは知っているが、やっぱりこういう風に言ってくれないと。
この説明によれば、無免許ではカー・ステレオなどで使うFMトランスミッターが精ぜいというところだろう。私はコロナ電業というメーカーのTelster TR-10RDXというトランスミッター所有しているが、実質的には合法的に使えるのはこのテの普通の市販品ということになるだろうか。でも、私が今まで聴きに行ったミニFM局は、もっと遠くまで電波を飛ばしているような気がするが。
それと「電波の世界で遊んでみよう」シリーズでウェブラジオFMCの種田守倖氏(ParaTのほうが通りがいいかな)あたりを起用して『キミにもできるミニFM』とか『キミにもできるウェブラジオ』とかを出してくれないかなぁと希望。
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著者のヒルズ水島氏は古くからの友達です。
投稿: 居酒屋ガレージ店主 | 2007年9月27日 (木) 22時18分