大竹まこと ゴールデンラジオ!(文化放送、2007年7月23日(月)13:00-15:30)
○「大竹まこと ゴールデンラジオ!」(文化放送、2007年7月23日(月)13:00-15:30)
8月21日(月)の深夜、NHK総合テレビで萩本欽一のインタヴューをやっていた。民放某局の24時間テレビのマラソンは、40%以上の視聴率を獲得したという。NHK総合テレビのインタヴュー自体はかなり以前に録られたものだと思うが、ここで放送するとは、絶妙のタイミング。世間が「ミキティー、ミキティー」と騒いでいるときに荒川静香のドキュメンタリーを制作していたラッキーさと同様に、今回もNHK総合テレビは幸運にありついた。
この他にも、マラソン前の萩本欽一にインタヴューしていたラジオ番組がある。「大竹まこと ゴールデンラジオ!」(文化放送、月~金13:00-15:30)だ。「「ゴールデンラジオ!」のメインコーナー」の「大竹メインディッシュ」のゲストとして萩本が出演したのだ。普段は番組を聴けない私は、このコーナーだけはポットキャスティングでチェックしている。萩本の回は、携帯プレイヤーに保存していたのだが、聴くのを忘れていたので、つい先日聴いたばかりだった。
萩本に対して大竹は「近ごろ、あのぅ、「村上ファンド」とか呼ばれてないですか?」と軽いジャブ。「お笑いは基本的にセコくてナンボ、セコいのが面白い」という話題を経て、お笑い界について、大竹と萩本は次のように話を進める:
大竹 欽ちゃん、ちょっと説教しようと思って。
萩本 おぉ、面白いね。
大竹 「面白いね」じゃなくて、ちょっと真面目に聞いて下さいよ。あのね、近ごろテレビ出てるね、芸人さん、全部、なんか修行が足りない。思いますでしょ?
萩本 そうそうそう。
大竹 修行、足りないでしょ?
萩本 最近ね。
[……]
大竹 若い奴、素人みたいで、修行が足りない。そこら辺の人が出てきて面白い話ししてるみたい。この元をつくったのは、だれ・なん・だ、と。
萩本 なるほどなぁ。
大竹 コラコラコラ、と。
萩本 俺か?(笑)
大竹 「良い子・悪い子・普通の子」。「良い子・悪い子」はイイよ。「普通の子」ってどういうことよ? 「普通の子」が面白いんだよ。
萩本 ねぇ。アレびっくりした。
大竹 「良い子・悪い子」なら俺も、「あ、これはテレビだな」と思って納得して見るよ。これ、「普通の子」が出るんだよ。コレがウケる。
萩本 あれね、普通なら「良い子・悪い子・とぼけた子」って落とすんですよ、「三段落とし」って。あの本を書いたのが、素人だったんです。だから落とせなかったのよ。「良い子・悪い子・普通の子」って「普通の子」採っちゃった。そこが新しい。気がつかない。
[……]
萩本 あれはねぇ、だから言ってんの、「芸能界」と「テレビ界」ってのがあって、あれはテレビ芸という。分けてくれないと。一緒にすると、芸が違うんだから。
阿川佐和子 ホントのお笑いの芸の舞台と、テレビとは違う媒体だと。
萩本 違う違う、もう、全く違うところですね。
大竹 芸っていうのは、何か二郎さんが何かやったとき、ちょっと向こう側向いてると、後ろからパンパンパ~ンって出て二郎さんの背中に跳び蹴り食らわすんだけど、二郎さんは痛くないのよ。これが芸なのよ。
萩本 あぁ~、ウマい。ウマい、ひと言で言ってくれて。
大竹 ここが芸。叩かれたヤツが痛くないていうのが。
阿川 ほぉ~。
萩本 蹴ってもね、実はね、痛くないように蹴るんですよね。
大竹 痛くないように蹴るのが芸なんだよ。一回背中に乗せてから押すんだよ。
萩本 どうしてそれを!
大竹 ず~っと見てました、私は。
萩本 蹴ったらホントにね、危ないんですよね。
大竹 蹴ったら、二郎さんの背中、逆に伸びるはずですから。こっちに反るはずですから、蹴ったら。二郎さんまわったまま向こう行ってるでしょ? 突っ伏してるでしょ? あれ、蹴ってない。
阿川 それ相当訓練しないと。
萩本 スゴいトコ言ってくれましたね。
[……]
大竹 それで、俺は「芸だなぁ」って思ってずっと見てたら、あるとき、アゴ&金造っていうのが出てきて、槍を投げるっていうギャグだったの、芸だったの。で、アゴさんが金造の背中に槍――ったって先っちょは尖ってないんだけどね、棒なんだけど――ボンって投げたの。金造の背中にモロにあたって、二郎さんだったら丸まるところ、金造の背中は逆に反ったの。アレは、俺、テレビで見てて、ホントに痛かったんだと思って、コレみて大笑いしたんだから。こういう芸もあるのかと。投げたら刺さるぐらいに。金造、逆反りしてる時あった。
萩本 はぁ~。
大竹 それでなんか、お笑いは、あの辺でもう一回、なんか、生の痛さ、「芸」から「生の痛さ」、それが欽ちゃんの言うところの、テレビの中の生っぽさ、リアリティーにもう一回ここで反転するんだよね。
萩本 「テレビ」芸。
大竹 舞台の芸からテレビ芸に、こう反転して。
阿川 リアルだから。
大竹 そうそう。その後に、やっぱり、たけしさんが出てきて、あのぅ、たけしさんの、何だっけ? あのぅ、「[お笑い]ウルトラクイズ」で、塀乗り越えると一面に糊と鳥もちが敷いてあって、顔がもう、お笑い芸人の顔が鳥もちで。後で聞いたらアレ、もう全然、「カット~」ってOK出てたって、もう全然はなれないんだって。
テレビの世界に入った舞台の芸が変容し、そこで新たなテレビ芸が生成、そしてテレビのリアリズムが芸にもう一度フィードバックする――昭和のお笑いの歴史を、たかだか6分程度のやりとり中にこれだけ凝縮されたかたちで聴くことができて、驚嘆した。
他にも、「中途半端に稽古したお笑いはワザとらしさが出るが、自然さで言えば10年の芸と素人は同じ」など興味深い話がつづいた。
25分ぐらいのコーナーのうち、お笑いや芸の話は10分強であった。NHK総合テレビの件の番組はどのくらいの長さだったか分からないが、少なくとも1時間以上はやっただろう。この回の「大竹メインディッシュ」は、それに勝るとも劣らない充実した内容だったと思う。
以前私は、大竹のインタヴュアーとしての才能を「凡庸な聞き手」という言い方で表現したような気がする。これは、小手先のトークのテクニックに走らない大竹の聞き手としての誠実な態度を評した表現のつもりだった。しかし今回のインタヴューで、個々の芸に対する大竹のミクロな分析眼と、それをお笑いの歴史の中に適切に位置付けてみせるマクロな視角も垣間見ることができた。凡庸の外皮をまとった慧眼と誠実さ――そんじょそこらのしゃべり手とは、ひとつもふたつも格が違うと、改めて感心すること頻りであった。
残念なのは、このコーナーは文化放送のウェブサイトでは一週間程度の期間しか聴くことができない。「ストリーム」(TBSラジオ、月~金12:30-15:30)の「コラムの花道」のように、長期間聴けるようにアーカイヴ化してもらいたい。
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