小林信彦「本音を申せば」第469回、『週刊文春』2007年8月16・23日夏の特大号
○小林信彦「本音を申せば」第469回、『週刊文春』2007年8月16・23日夏の特大号
※少しだけ加筆修正しました。(2007年8月13日)
今回の「本音を申せば」は、本当に良み応えがあった。「全文を引用したいぐらいなのだが、それではルール違反になる」。このブログを読んで下さった方には、必ずお読みになられることをお勧めする。念を押すと、『週刊文春』2007年8月16・23日夏の特大号に載っている。
今号の「本音を申せば」を概観すると、立花隆が『朝日新聞』夕刊2007年7月23日付に寄稿した文章を端緒に、「文化系トークラジオ Life」(TBSラジオ、毎月最終日曜25:30-26:00)を厳しく批判しつつ、「今の若い人」が戦後という時代をいかに知らないかと苦言を呈し、それに選挙の話題を絡めつつ、小林自身が生きた時代としての戦中・戦後を語るという構成。「敗者と怨念(ルサンチマン)」と題されている。
本当に「全文を引用したいぐらいなのだが」、本ブログの関心に沿ってラジオに関するところだけを引用:
ぼくに言わせれば、<今の若い人>は、戦後がどういう時代だったのかも知らない。
二十九日の参院選の夜中、もう三十日に入ってからだが、TBSラジオで若い人が徴兵制って簡単にはできないだろう、と話している。もちろん、甘い。朝鮮戦争のころの日米関係をペラペラしゃべる。大いにお勉強したのだろう。まったく間違っている訳ではないが、ニュアンスとか重みというものがない、これは莫迦だな、と思って、ラジオを切ってしまった。
その前(午前二時まで)、武田一顕記者を混えて、小西、麻木、二木、宮台といったTBSラジオ系の文化人の話していた選挙結果発表後の雑談の苦さと笑いにくらべたら、ウスッペラで、こんな連中が改憲に賛成したりするのか、とウンザリした。
○小林信彦「本音を申せば」第469回、『週刊文春』2007年8月16・23日号
ちなみに、ひとりだけフルネームで登場するTBSラジオの国会担当記者・武田一顕(「タケダ記者」は、漢字ではこう書くのか)は、今や「BATTLE TALK RADIO アクセス」(TBSラジオ、月~金22:00-23:40)の名物となっている。武田記者は小林のお気に入りのようで、私も「武田節」のファンだったりする。
コラムで、小林は「TBSラジオ系の文化人の話していた選挙結果発表後の雑談」を称揚し、「若い人」に厳しい。しかし、「文化系トークラジオ Life」の面々の多くは、多かれ少なかれ「宮台チルドレン」なのではないか……誤解か?
実は7月29日(日)深夜、「文化系トークラジオ Life」の放送中、私は「誠のサイキック青年団」(ABCラジオ、日25:00-26:45)を遠距離受信していた。こちらでは、ガッキー(新垣結衣)は映画で脱ぐか、スクール水着なら可能かとか、映画『トランスフォーマー』はスゴいとか、いい歳のおっちゃん3人が熱い議論を交わしていた(当ブログ「誠のサイキック青年団(ABCラジオ、2007年7月29日(日)25:40-27:25)」を参照)。
それはさておき、小林の批判も少々不当な気もする。「文化系トークラジオ Life」のサイトに行けばmp3で番組が聴けるようなので、さっそく……と思ったら、小林評に対するリアクションが既にアップされていた。批判に正面から応じていないのが残念(「残念って言えば残念だけど、ぼくたちを支持してくれている年寄りもいるんだから大丈夫だよ~ん」てな感じか):
親切にも、小林が酷評していると思われる箇所にもリンクが貼ってあった:
実際聴いてみると、「こんな連中」のなかで「9条改憲反対でない」のは、スタジオの6人(か7人)のうち2人だけ。従って、むしろ改憲派は少数で、2人のうち1人は「賛成でも反対でもない」(上のmp3の16分あたり)。
ただ、「莫迦」とは言わないが「ウスッペラ」という評は中っているかもしれない。「北朝鮮問題のキャスティング・ヴォウト」だとか「食料自給率と国防」だとか、議論は共時的な関心と観念で専ら占められていて、歴史的なパースペクティヴが感じられない。
しかしながら、心身に刻み込まれた歴史に依拠して紡ぎ出す小林の言葉の「ニュアンス」や「重み」に、「若い人」が太刀打ちできるはずはない。小林は実際の戦争を「地ベタ」で文字通り「体験」しているが、戦争を知らない若い知識人の戦争論はいきおい「空中戦」にならざるを得ない。仕方ないのだ。小林の期待は、はっきり言って過大だと言える。
むしろ、戦後知識人の反戦平和論が、現代知識人に引き継がれていない――これが一番の問題だと思う。戦後の反戦平和論は、専ら敗戦による被害者意識を機軸に構築されてきたと思う。一見すると加害者としての責任を引き受けているように見える「一億総懺悔」も、実は、甚大な被害によるショックの裏返しなのではないか。
これをそのまま引き継げと言うのではない(むしろそれは問題だと私は思っている)。重要なのは検証と批判だ。戦後反戦平和論に正面から腰を据えて向き合い、その問題点(例えば、加害の実態に対する周知と考察の永き欠如)を徹底的に精査して、同時に被害の経験を決して軽んずることないよう留意しつつ歴史とのリンクを切らないようにしなければならない。ひとことで言えば、歴史に依拠した、新しい反戦平和の概念の構築だ。
放送中に入った速報で小田実の死去が告げられたのは象徴的だ。戦後民主主義を代表する知識人が次つぎと鬼籍に入り、いわば「反戦平和運動の生物学的な終焉」が迫っている。戦後反戦平和論の批判的継承のチャンスが、日に日に狭まりつつある。
小林の酷評は、閉まりつつある現代の裏口から差し向けられたチャンスに他ならないのではないか?
僕はこの番組について「全員にわかってもらおう」とは思っていないんですが、と同時に「1人でも多くの人にわかってもらいたい」とは思っているので、途中で切られてしまったのはプロデューサーとして悔しいですねえ。[……]
あ、でも昨日、68歳の女性のリスナーさんから「Lifeをはじめて見つけたときは大喜びしましたよ。深夜放送でないとなかなか聴けないので、今度また深夜に移ってきてよろこんでいます。~ともかく応援してますから頑張っていい番組を作ってください。」なんてメッセージを頂戴したんですよ(号泣)※1。だから年齢や世代とは関係なく伝わるものあるのだと心強く思ったりもしているので、いつか小林さんにも「何かしら耳を傾けるべきところはあるな」ぐらいには思ってもらえるといいな、と思いつつこれからもLifeはLifeらしくやっていこうと思います。
○酷評された! (文化系トークラジオ Life)2007年08月08日 21:43
そんなこと言っていないで、小林の酷評に正面から向き合ってみてはどうだろうか。
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