『ル・フィガロ』紙の『この世界の片隅に』片渕須直監督のインタビューを訳してみました。

◯『ル・フィガロ』紙の『この世界の片隅に』片渕須直監督のインタビューを訳してみました。

 

『ル・フィガロ』紙の『この世界の片隅に』片渕須直監督のインタビューを訳してみました。

元記事:Thomas Romanacce, «Dans un coin de ce monde, superbe chronique du Japon avant la bombe», LE FIGARO.fr, 06/09/2017.

誤訳がありましたら、忌憚なくご教示下さい。

記者の方の苗字 Romanacce はイタリア系の苗字のようなので、イタリア語風に「ロマナッチェ」しましたが、ひょっとしたらフランス語風に「ロマナッス」かもしれません。

* * *

『この世界の片隅に』、原爆投下前の日本のすぐれた年代記

トマ・ロマナッチェ


 

インタヴュー - 日本の第二次世界大戦。爆弾の下で、すずとその家族と大勢の日本市民の生活は続く。映画人・片渕須直は、大東亜の天皇が降伏する前の日本の日常についての彼の見方を私たちに語る。

片渕須直の映画『この世界の片隅に』は、2017年9月6日にフランスで公開されるが、日本の第二次世界大戦時の日本の市民の日常に観客をテレポートさせる。アヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞を受賞したこの長編映画では、若いすずの成長が描かれる。突然、軍関係者と結婚したこの女性は、呉の義理の家族の家で暮らすために生まれ故郷の広島を離れる。日米関係がますます険悪な道をたどるのに対して、この若い女性は、普通の存在として生きようとする。戦争の恐怖にかかわらず楽天主義と生活を声も高らかに歌うこの長編映画では、とても控え目で愛らしいすずの行く手にいくつもの障害が立ちはだかる。忍耐と、絵と家族に対する愛とのおかげで、彼女はいつも最後には打ち勝ってゆく。すべての登場人物に影響を与え、感情的な結末へと導く、決定的だが避けることのできない原爆投下と降伏の瞬間まで、観る者は、ヒロインの物語を通じて、大きな歴史を生きる。映画人・片渕須直が『ル・フィガロ』に明かす。『この世界の片隅に』を日本だけでなく国際的な成功に導いた、作品の誕生秘話、制作の過程について語る。

ル・フィガロ ——『この世界の片隅に』は、こうの史代の同名マンガの映画化です。映画化に当たって、この作品の中で監督が最も興味を引かれた点は何ですか?

片渕須直——こうの史代さんの仕事のなかで私が評価しているのは、歴史的な細部の繊細さです。彼女は、第二次世界大戦の時代の日本人の日常生活を際立ったリアリズムで描いています。私を『この世界の片隅に』の映画化に後押ししたのは、ほかでもなく、この物語のヒロインのすずさんです。彼女は等身大の女性で、あの時代の日本人の生活様式を象徴していて、そして彼女は、人間性が複雑でたくさんの顔をもっているという意味で、他のアニメの登場人物とは違います。戦時中の困難を乗り越え、絵の特別な才能を発揮できないこの主婦を支えてあげたいと思います。彼女が戦争の様ざまな出来事を乗り越えるときに、私も実際、彼女のために泣きました。私たちも普通の人生を送っているのですから、私たちとあの時代の日本人のあいだにはつながりがあるということを私は見せたかったのです。戦時中の人たちも、楽しんだり、恋をしたり、お腹いっぱい食べたりすることを考えていました。さらに、この長編映画が日本の劇場で公開された後に、観客のかたたちは、ヒロインのことを単に「すず」と呼ぶ代わりに「すずさん」(「さん」は、ちゃんとした場で使われる敬称)と呼び続けていました。彼らにとっては、この登場人物が彼らの現実の中でまだ生きていたからです。

ということは、日本のこの決定的な時代を新しい世代に向けて蘇らせることが目的ですか?

私は、特に若い観客をターゲットにするつもりはありませんでした。それ以外に70〜80歳のあいだの高齢の人たちも大勢映画を観に来てくださいました。戦争を実際にご存知のそういう観客の方がたもこの長編映画に心を動かされて、劇場を出たあとで集まって、自分自身の逸話や、苦しかった時代の日常生活を語ったりなさっていました。『この世界の片隅に』を観て、より若い人たちには、自分の国の過去について知りたいと思うようになりました。今の便利さからはかけ離れたように見える過去をです。作品を可能な限りリアルにするために、膨大な歴史的調査を実施しました。私たちがあの時代の収集可能なあらゆる写真を集めて仕分けしつつ、日本人の服装の様式や街灯の再現に使ったり、おぞましくも美しいアメリカの飛行機の着色発煙弾について発見したりしました。
※記事では、«des fumigènes colorés des avions américains»(アメリカの飛行機の着色発煙弾)となっていますが、実際には「日本の高角砲の着色弾」が正しいようです。

スタジオMAPPAに参加したのはなぜですか、また、クラウドファンディングを利用したのはなぜですか?

このプロジェクトを立ち上げようと考えたとき、私の希望や創作を全く自由に表現させてくれる環境が欲しかったのです。それが、高いクオリティーと他社とは全く違ったアニメーションのビジョンを最優先するスタジオMAPPAに私が参加した理由です。スポンサーたちは及び腰で、過去の実在する日本アニメの名作とは違った映画に出資するように説得しなければなりませんでしたので、スタートは困難でした。クラウドファンディングでは、長編作品の資金を集めるには十分ではありませんでしたが、観客は歓迎していること、アニメ化されたこの物語を観たいと思っていることをプロデューサーたちに証明するには十分でした。結果はむしろ並外れたもので、ネットユーザーが大勢このプロジェクトに参加してくれて、私たちはパイロット・フィルムを作ることができました。プレス試写は満席でした。記者の大半は、会場を離れることもできませんでした。劇場経営者の方たちは『この世界の片隅に』に対して好意的に取り組んで下さり、この映画の公開館数は63館から370館になりました。すずさんという登場人物は日本中を魅了し、『キネマ旬報』(日本で最も権威のある映画誌)は、もしこの映画が配給できないのなら「日本に取って大きな損失だ」と言ってくれました。

※当ブログ内の関連エントリー:

ロサンゼルス・タイムズ紙のケネス・トゥーランによる『この世界の片隅に』評を訳してみた。

『ELLE』誌フランス版の『この世界の片隅に』のレヴューを訳してみました。

『ル・モンド』紙の『この世界の片隅に』評を訳してみました。

『リベラシオン』紙の『この世界の片隅に』評を訳してみました。

『リベラシオン』紙の『この世界の片隅に』片渕須直監督のインタビューを訳してみました。


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